7/21(日) ハレ
ノックの音が静かな部屋に響き渡る。
そしてあの人の低い声。
「早紀、話があるんだ。」
私は答えない。あの人は話を続ける。
「なぁ早紀。わかったんだよ。俺は何をすべきなのか。」
ドアのノブを回そうとする音。カギが掛かってて回らない。
「全ての罪を裁かなくてはならなかったんだ。」
ガチャガチャとしつこくドアノブを回そうとする音。開かない。
「お前を例外扱いしてはいけなかったんだ。お前は被害者だが、同時に加害者でもある。身に覚えがあるだろ?であれば、お前もまた裁かれなければならない。」
親は出かけてる。今この家には、お兄ちゃんと私の二人だけ。
「本当はずっと前からわかってたんだけどな。今、やっと決心した。」
ドアノブが激しい音を立てて揺れる。ネジが飛んだ。グラついてる。
「早紀。お前への断罪が必要だ。ここを開けろ。」
メキメキと音がしたかと思ったら、バキンと大きな音が鳴った。
ドアが開いた。ゆっくりと、ゆっくりと開く。
半分開いたところで、その奥に立ってる人の顔が見えた。
そこにいたのは、私の知ってるお兄ちゃんではありませんでした。
暗闇に無表情でたたずむその人は・・・
「お前を裁き、全てをゼロに戻す。」
自分は殺されるんだと理解した時には、既に私の首に触手のような手が絡みついてました。
私は叫んでたはずですが、恐怖で声がかすれて自分でも何も聞こえませんでした。
助けて。こんな終わり方なんて嫌。
どれだけ叫んでも私の声などどこにも届きませんでした。
永遠に届きませんでした。

こうして私は実の兄に殺されました。

断罪回帰編 −完−


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