世界 サキの日記

サキの日記 第二節「約束」


7/17 晴れ
アザミと遊んでると、アザミの親がやって来てアザミを殴りました。殴り終わるとすぐに帰ってしまいました。
私はただ見てる事しかできませんでした。大丈夫?と聞くとアザミは無理に笑顔を作って大丈夫、と答えました。
アザミはいつも親に殴られてるそうです。笑顔を絶やさないアザミが無性にかわいそうになってきました。
私が守ってあげるね。アザミは黙って私の申し出を拒否しました。自分は殴られるために存在してるからって。
私は何も言えませんでした。


7/18 曇り
一週間くらい何処かに行っていたオクダが戻ってきました。私とアザミの事をじろじろ見ています。
気持ち悪いので私達は中庭へ遊びに行きました。おじさんの掘る穴を眺めてました。
突然誰かに背中を押され、私達は穴に落ちてしまいました。オクダの仕業です。
そんな大きくないので私はすぐに穴から出ましたが、アザミは少し遅れ気味です。オクダが土をかけてます。
私はアザミの手を取り、おろおろするおじさんの横を通って逃げました。振り返るとオクダは笑ってました。
土で汚れても笑顔を崩さないアザミはとてもいじらしく、そして愛おしく見えました。なんて強い子なんだろう。
私も強くなりたいです。


7/20 曇り
アザミの親がきてまたアザミを殴って帰っていきました。その時のアザミの親の顔はとても晴れやかでした。
アザミを殴っておいてなんでそんな顔をできるのか不思議に思いました。アザミはその理由を知ってました。
あの人は私を殴ると気分が良くなるみたいなの。アザミはそれでいいの?私はその為に生まれたから。
殴られるための存在。以前聞いたアザミの言葉を思い出しました。私だったら耐えられません。
アザミは強いから平気なんだね。アザミは否定しました。強くなんかないって。じゃあ、なんで平気なの?
アザミは答えませんでした。


7/21 雨
殴られた反動で頭を垂れるアザミは謝ってるように見えます。本人はそんなつもりはないらしいのですが。
今日はアザミの親が行った後オクダにも殴られました。私がアザミをかばうとオクダは怒りました。
アザミを奪おうとします。僕にも貸してよって。アザミはおもちゃなんかじゃない!
私達はまた逃げました。いつまでオクダの嫌がらせは続くんでしょうか。逃げ続けるしかないのでしょうか。
先生に言うべきなのかもしれません。でもアザミは拒否します。サキに迷惑かけたくない。私は平気だよ。
強くないけど頑張るよ。ありがとう。アザミは笑顔で答えてくれました。それでも、言っちゃ駄目。
返す言葉が有りません。


7/22 雨
外で遊んでいたら突然夕立が降ってきました。梅雨はまだ明けないのでしょうか。
雷が鳴りました。空に光の筋が見えてものすごい音がしました。激しい雨が地面を打ちます。
アザミの親が狂ったようにアザミを殴ります。雷が鳴るたびに叫び声をあげてアザミに襲いかかってきます。
私はアザミから引き離され、助けようとしても突き飛ばされました。アザミの髪が数本地面に抜け落ちてました。
アザミは解放された頃にはボロボロになっていました。オクダが見てました。不気味な顔して笑ってます。
不愉快です。


7/23 晴れ
今日はお母さんが面会に来てくれる予定だったのですが延期してもらいました。
本当はアザミを紹介しようと思ったんだですが、この腫れた顔を見たらお母さんは心配してしまいます。
今日こそアザミを守ろうと思い、アザミをかばったら代わりに私が殴られました。アザミも殴られました。
どうやら梅雨は明けたらしく、とても暑かったです。暑いのも私のせいにされました。セミが鳴くのも私のせいに。
もう嫌。腫れた頬がズキズキして涙が出てきました。痛い。アサミはこんなのに毎日耐えているの?
オクダは今日も笑ってます。アザミの親に殴られて傷だらけになった私達を見て、笑ってる。
悔しいです。


7/24 晴れ
アザミの親から解放されて休んでいると、オクダがやって来ました。相変わらず変な顔して笑ってます。
両手を水をすくったような形にして寄ってきました。その手には何かの液体が乗ってました。
私達の前に来ると、それを投げるようにしてかけてきました。白く、ネバネバした液体が髪に絡みます。
とても嫌な臭いがして思わず吐きそうになりました。ふと横を見ると、オクダがアザミの口に、その液体を、
汚れた手を突っ込み、塗り込むようにして、嫌がってるのに、アザミは無理矢理・・・・・・・・口に含まされました。
私はオクダを突き飛ばし、アザミを抱えて逃げました。お腹の傷が痛むのをこらえて、全力で走りました。
洗面所で洗っても、ネバネバが取れません。アザミの口を何度も洗っても、臭いがとれません。
私はアザミを抱き締め、泣きました。涙は枯れることなく流れ続けました。アザミ、私達はずっと一緒だよね。
どんなに辛い事でも、二人で分ければきっと耐えられるから。だから、ずっと一緒に居ようね。約束だよ。
ずっと一緒に。この約束を私は何度もしてきたように思えます。そして、何度も破られ、私も破った。
今度こそ破らない。失った記憶の中で幾度も破ってきた約束。アザミとなら守り通せる気がします。
私はもう、昔の私じゃないんだから。


サキの日記3−「消失」