世界 サキの日記

サキの日記 第八節「無音」


9/16 曇り
オフ会から一日たちました。ワタベさんからの連絡は未だにありません。
ワタベさんはオフ会で誰かに会った。これは間違いないと思います。でも、会ったのは一人だけじゃない。
誰かを追ってた。「あと・・・にも会った・・・。」とも言ってた。確かに「にも」って言った。と言うことは・・・二人?
誰がなんなのか分かったって・・・・・ワタベさんはsakkyさんともう一人の三木を知りたがってたんだから・・・・
その二人に会えたって事かな?じゃぁその二人は今どこに?ワタベさんから連絡無いのと何か関係が?
どうなってるの・・・・・。


9/17 小雨
二日目。今日もワタベさんからの連絡はなし。何の音沙汰もありません。
今日はかなり涼しかったです。半袖では寒いくらい。ワタベさん、おとといはちょっと暑かったから半袖のまま?
ちゃんと長袖着てるかな?風邪ひいてない?大丈夫?気になって仕方ないよ。早く連絡下さい。
お願いです。


9/18 晴れ
今日で三日目。まだ連絡がありません。
お母さんから電話が有りました。「そっちにワタベさん来てない?」って。
ワタベさんはお母さんにも後日連絡すると言ってたらしいのですが、やっぱり未だ連絡が無いそうです。
何処に行ってしまったの?ワタベさん。もう三日目だよ。おかしいよ。連絡するって言ったじゃない!
「希望の世界」には誰も来てない。みんな、消えた。消えてしまった・・・・・・
ワタベさん・・・・。


9/19 ・・・・
ワタベさんが死にました。


9/20 雨が少し
昨日ワタベさんから来たメール

こんにちわ。サキさん。
このメールをあなたが読む頃には私はこの世に居ません。
私にはもう耐えられないの。関わっちゃいけないことに関わっちゃったみたい。
サキさん。あなたもこれ以上「希望の世界」に関わっちゃダメ。
相手は、私が思っていた以上に・・・・はるかに・・・・手強かった。
狂ってる。そう。あいつは狂ってる。そして私も、狂わされたわ。
あいつのせいで私は狂ってしまった。その結果がこれ。
でもね、私はあいつに狂わされたから死ぬわけじゃないの。
あいつを狂わしてやるの。
怨恨、憎悪、あらゆる負の感情を抱えて死んでやるわ。
そこまでしないとあいつを呪えないでしょ?
私はね、サキさん。あのオフ会に行かなければ良かった、なんて思ってないのよ。
後の事を彼に託す事ができたから。彼はきっと、あなたを救ってくれるから。
カイザー・ソゼ。この名前を覚えておいて。あいつに対抗できるのは彼しかいないわ。
最期にもう一度言うけど、「希望の世界」にこれ以上関わっちゃダメ。
あいつにつけ回される事になる。・・・・そう言えばサキさんは以前にもあいつに・・・・昔の話は止めるね。
どうしてあいつが今自由にしてるのかはわからないけど、とにかく危険だから。関わってはダメよ。
家まで来るから・・・・ストーキングって・・・・されて初めて分かったけど・・・想像以上に怖いのね・・・・・。
ちょっと長くなっちゃったけど、私そろそろ逝くね。
人って簡単にノイローゼになっちゃうんだね。
そして、簡単に死を選んでしまうんだね・・・・。
サキさん。私は死ぬけど悲しむ必要は無いよ。
あと渚さんには秘密にしておいてね。これ以上ショックを与えたくないから。
私は今からお風呂場に行って手首を切ります。
じゃあね。風邪引かないように気を付けてね。
さようなら。


9/23 寒い
ワタベさんからのメールを読んだ後、私はしばらく泣いてました。
もう日記を書くのを止めようと思いました。何をする気にもなれなかったから。三日前の日記が最後のつもりだった。
今日「希望の世界」を覗いたらワタベさんの忠告通り二度と行かないようにしようと思ってました。
この書き込みさえなければ。

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「kekeke自殺してやんの」
投稿者:真・処刑人
投稿日:09月23日(木)

ワタベミキ。死に追いやってやったゼ。
案外脆かったな。ウフフ。
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許せない。ワタベさんの死を侮辱するなんて・・・・・!
ワタベさん、こいつのせいで自殺を選んでしまったの?こいつが全部いけないのね?
悔しい。悔しいよ。病院から出れない事をこんなに悔しく思ったのは初めて。ワタベさんを助けてあげたかった。
私も・・・・こいつ狙われてるのかな?「希望の世界」に関わるなって言ったのはこいつに狙われるから?
ごめんねワタベさん。あなたの忠告を無駄にしちゃって。私、まだ「希望の世界」に残るよ。
あなたの敵を討ちたいの。それに・・・カイザー・ソゼ。この名前覚えたから。私、一人じゃないんでしょ?
まだ終われないよ。


9/24 雨
台風はここまで来ることなくそれていきました。明日はきっと晴れると思います。
お母さんから改めてワタベさんの死を聞かされたとき、私は泣きませんでした。
その後ベット下からアザミを取り出してずっと抱きしめてました。
ワタベさんは結局アザミとは会わなかった。会えなかった。
色々動いてくれたワタベさん。今度は私が動く番だね。
外の雨はもう止んだみたい。雨の音が聞こえなくなった。やっぱり明日は晴れるよね?
しんとした静けさが辺りを包んでます。


第3章「鎮魂歌」
 カイザー日記9.「僕の日記」