絶望世界 もうひとつの私日記

第1部<洗脳始動編>


第1週

10/9(月) 雨
月曜日はイジメの始まりです。祝日なのがとてもありがたく感じられます。
学校。普通の日はちゃんと行かないと家に火をつけられます。
逃げることができません。


10/10(火) 晴
牧原さんは私に恨みでもあるのでしょうか。
わざわざ私の目の前で上履きに画鋲を入れてます。
履かされました。


10/11(水) 晴
パソコン教室では私のパソコンだけありません。
牧原さんのグループが人数以上に確保してるせいです。
誰も気づいてくれないけれど。


10/12(木) 晴
岡部先生に私の姿は見えません。
牧原さんがいくら私をつねっても、痛みで顔を歪めても、先生の目には映りません。
他の人は見えるのに。見えないのは私だけ。
私だけ。


10/13(金) 曇
さすがにこれ以上耐えられないので死ぬことにしました。
思い残す事と言えば学校のパソコンを触れなかったことでしょうか。
他に未練はありません。


10/14(土) 晴
こっそりパソコンを触りに行きました。
一度学校でインターネットをやってみたかったんです。
死ぬつもりでしたが、そこで気になるものを発見したので登録してみました。
「地域限定メーリングリスト」
なんだか面白そうです。


10/15(日) 雨
やってみるとわかります。
MLはとても素敵なものでした。違う自分になれるんです。
この私は早紀ですが、MLではsakkyです。
sakkyはもう一人の私。明るい私。
もう少しだけ生きてみようと思います。



第2週
10/16(月) 曇
私の携帯電話には毎日MLが届きます。メール機能があって良かった。
親に買ってもらって以来一度も着信はありませんでしたが
初めて役に立ってます。


10/17(火) 曇
イジメの辛さもMLの楽しさで少し忘れることができます。
ここでは孤独になりません。会話ができるんです。
こんなに嬉い事はありません。


10/18(水) 晴
携帯でメールを書くのは時間がかかりますが全然苦になりません。
思いっきり話せるから。それに、これしかする事ないんです。
私はこんなにおしゃべりなのに。学校で私の声は誰にも届きません。
でももういいんです。私にはMLがあるから。


10/19(木) 曇
MLでイジメの事は話しません。
便器に鞄を投げ込まれた話など誰も聞きたくないはずです。
sakkyはイジメなんかに縁はないのです。


10/20(金) 雨
携帯電話を隠された時には泣きました。
そのまま戻らなかったら死ぬつもりでしたが、ゴミ箱の中で見つけました。
もちろんMLではその話には一切触れません。
明るいsakkyは楽しい学校生活を送っています。


10/21(土) 晴
MLだけが私を受け入れてくれます。みんないい人ばかりだから。
ダグラスさん。シャロンさん。メリルさん。レオンさん。
私はみんなが大好きです。


10/22(日) 晴
もうMLなしでは生きていけません。
死を救ってくれたMLには本当に感謝してます。
私の生きる希望です。



第3週
10/23(月) 雨
恋をしました。
登録以来いつも優しくしてくれるダグラスさん。
好きになってしまいました。


10/24(火) 晴
ダグラスさんのことが頭から離れません。
学校でもボーっとしてしまい牧原さんに笑いのネタにされました。
岡部先生にも嫌なことを言われました。
それでも離れないんです。


10/25(水) 曇 
学園祭の季節です。MLでも話題になりました。
sakkyのクラスはダグラスさんの好きな演劇をすることになってます。
本当は餅つきなのに。


10/26(木) 晴
ダグラスさんに聞かれました。sakkyは何の役をやるのって。
答えられるわけありません。今も返事ができないでいます。
嘘なんてつくんじゃなかった。


10/27(金) 曇
ダグラスさんに注目されたかっただけなんです。
気づかないうちに話が大きくなってしまったんです。
私は主役のジュリエット。


10/28(土) 曇
みんなに尊敬されました。
私もそれに答えて嘘のエピソードなどを話してました。
今更後にも引けません。


10/29(日) 雨
シャロンさん。なんでそんな事を言うんですか。
sakkyの晴れ姿を見に行こうだなんて。
みんなも賛同しないで下さい!



第4週
10/30(月) 曇
話が進んでいきます。学園祭オフだなんて言われても。
演劇なんてやらないのに。餅つきなのに。まずいお餅が食べられるだけなのに。
来ないで下さい。


10/31(火) 曇
どうしたらいいのでしょうか。
嘘だと言ったらもう仲間に入れてもらえないかもしれません。
MLから閉め出されるなんて死ぬのと同じです。
それだけは嫌です。


11/1(水) 雨 
ダグラスさんだけじゃありません。みんなに嫌われたくないんです。
だから仕方ありません。言わなければ助からない。
勇気を出して断りました。
見られると演技に集中できないからって。


11/2(木) 雨 
良かった。みんな納得してくれました。
演技の邪魔しちゃわるいよねって。その通りです。
勇気を出した甲斐がありました。
やっぱりみんないい人です。


11/3(金) 曇 
MLでは再びオフ会計画が。
シャロンさんが「私達どうしてもsakkyのジュリエットを見たいの!」って言い始めて。
どうして。みんな納得してくれたはずなのに。
なぜなの。


11/4(土) 晴
牧原さんに変な事を言われました。
「ロミオは誰なのかしらね。」
まさか。


11/5(日) 曇
わざわざ電話がありました。
「オフ会は絶対やるからね。sakkyの晴れ姿、みんなに見せてあげなくちゃ!」
牧原さん。いや、シャロンさん。
やめて。



第5週
11/6(月) 曇
もうオフ会は止められない。シャロンさんが乗り気だから。
やっぱり死ぬしか無いのでしょうか。優しくしてくれたダグラスさん。
他のみんなだって私を受け入れてくれた。
嫌。失いたくない。でもこのままじゃ全部離れていってしまう!
せっかく見つけた、生きる希望だったのに。


11/7(火) 晴
来週には学園祭。放課後一人パソコンに向かって途方にくれました。
ネットの向こうには何百人もの人がいます。こんなにたくさんいるのに。
なぜ私だけこんな目にあうんでしょうか。ここにも味方はいないのでしょうか。
画面にしがみつき、その先にいる人達に向かってただやみくもに叫びました。
誰か、助けて下さい。


11/8(水) 曇
ああ。いっそのこと。
いっそのこと
あの人、死んでくれたなら。


11/9(木)
・・・。


11/10(金) 小雨
牧原さんが消えました。


11/11(土) 晴
仕切る人が突然連絡取れなくなったのでオフ会は中止になりそうです。
望み通りになったたものの、私はずっと複雑な気持ちでいました。
学校では牧原さんの失踪がしきりに話題になってます。
これで良かったのでしょうか。


11/12(日) 雨雲
変なメールが届きました。差出人は「処刑人」
「シャロンの処刑完了。次は誰にする?」
なんてこと。



第6週
11/13(月) 曇
オフ会は完全に中止になりました。代わりにシャロンさんどうしたって話になってます。
学校も主犯格がいなくなったことでイジメはプッツリなくなりました。
罪悪感と引き替えに手に入れた平穏ですが、あまり楽しくありません。
学校には、元々友達なんていなかったんでした。


11/14(火) 曇
処刑人のメールは削除しました。
彼には感謝すべきなんでしょうが、もう二度と来ないでしょう。
「次」は有りません。


11/15(水) 雨 
どうも学校に行く気がしません。なぜでしょう。自分でもわかりません。
イジメが無くなり、気兼ねする必要無いはずなのに。行けば安らぎが待ってるのに。
足が向きませんでした。


11/16(木) 曇
家にいるとお父さんがいるので多少気まずいかな、とは思いました。
でもお父さんは今無職だから私を責められる立場にいません。
お兄ちゃんも大学に通うとかで家を出たきり連絡をよこさないし
お母さんもほとんど一日中働きに出ています。
誰にも文句言われません。


11/17(金) 雨 
ふと気づいてしまいました。
学校にあるのは安らぎではなく孤独。
牧原さんはいないから、学校に行かなくても家を燃やされる事は無い。
そして、MLは家でもできる。
学校。行かなくていい。


11/18(土) 晴 
そう言えば昨日か一昨日あたりから学園祭をやってるはずです。
こんなズレた時期にするから思い出せませんでした。
学園祭には何か大切な事があった気がしますが、思い出す事は無いでしょう。
もう学校とは縁を切ったから。


11/19(日) 曇 
真っ昼間からベッドに寝転がってると色んな事を思います。
天井を眺めながら、なんとなく今の生活の事を考えてました。
外に出ない。家で携帯いじってML三昧。ああ、これってアレなんだ。
私、引きこもってる。



第7週
11/20(月) 雨
岡部先生が来ました。何の用事かはわかりません。
お父さんに呼ばれたけど私は部屋から出ませんでした。
寝てる事になったらしく、先生は帰ってしまいました。
大した用事では無いのでしょう。


11/23(火) 晴
MLではようやくシャロンさんの話題が下火になってきました。
学園祭の結果報告もまだだったので、そろそろ書き込みをしないといけません。
もちろん何を書くかは決まってます。
ジュリエットは大成功。


11/22(水) 曇
みんなに誉めてもらいました。とても嬉しかったです。
メリルさんには「学校じゃ憧れの的なんじゃないの?」なんて言われるし。
学校でもMLでも、sakkyはみんなのアイドルです


11/23(木) 曇
学校の話題が盛り上がってきました。でも少し盛り上がり過ぎの気もします。
ダグラスさんに「sakkyは人気だから色々ありそうだね。」なんて振られると
なんだか心苦しくなってしまいます。


11/24(金) 曇
「言い寄ってくる人多そう。」と言われると、やっぱり嬉しいです。
「確かに結構来るけど、なかなかいい人いなくて・・。」と答えておきました。
いい人。来月にはクリスマスです。
ダグラスさんと過ごせたらどんなに素敵だろうって思いました。
みんなにも一度会ってみたいな。


11/25(土) 晴
みんなに会いたい。言おうと思ったけどやめました。
シャロンさんのせいです。あれ以来どうもオフ会が怖くなってしまいました。
でもしばらくはこのままでいいかもしれません。
MLだけで十分人生の楽しさは味わえます。


11/28(日) 晴
レオンさんに嫌なこと言われました。
「sakky、ホントに人気なの?意外と嘘だったりして。」
冗談にしても許せません。何を根拠にそんな事を!
思わず「本当ですよぉ!」と言い返してしまいました。
久々に不愉快な思いをしました。



第8週
11/27(月) 曇
何て事でしょう。レオンさんの発言のせいでみんながsakkyの生活を疑い始めました。
学園祭オフを拒否したことも疑惑の原因にもなってるようです。
あれは牧原さんが悪いのに。


11/28(火) 晴
女子高生であることすらも疑われてます。
レオンさんが「学校で今何をやってるのか言ってみてよ。」とイジメてきました。
女子高生なのは本当なのに。ただ学校に行ってないだけで・・
答えられませんでした。


11/29(水) 曇
岡部先生から電話がありました。
お父さんが哀れだったので仕方なく受話器を受け取りました。「学校に来い。」
他にも延々と話してましたが携帯いじりながら聞いてたのであまり頭に残ってません。
先生も学校の話。MLでも学校の話。なぜ家にいても学校がつきまとうんでしょうか。
うんざりです。


11/30(木) 曇
これ以上ダグラスさんの前で侮辱されるのは耐えられないので、sakkyも反撃に出ます。
ちょっと前まではちゃんと学校に行ってたし、その知識でなんとか答えました。
パソコン教室で遊んでみたり、友達としゃべりあったり。
sakkyは健全な女子高生です。


12/1(金) 晴
レオンさんは信じてくれませんでした。「その友達ってのも疑わしい。」なんて言います。ダグラスさんとメリルさんは静観してくれてますが、このままだとどうなるか。
友達の名前を具体的に出しました。これならみんな信じてくれるでしょう。
名前は牧原さんだけど。


12/2(土) 曇
みんな大人しくなりました。代わりにレオンさんからメールが届いてます。
MLでなく、私個人宛にです。
「嘘付くなよ岩本早紀。俺はお前を知ってるぞ!」
なぜ。


12/3(日) 曇
牧原さんの名に反応したのなら、レオンさんは学校の人でしょうか。
私の本名も知ってる。もしかしたら牧原さんグループの誰かかもしれない。
牧原さんはシャロンさん。その仲間がMLにいてもおかしくない!
もう一人いたのね。



第9週
12/4(月) 曇
久々に学校に行きました。岡部先生は喜んでましたがこの人の功績ではありません。
レオンさんを探すためだけに、孤独に耐えて来たんです。
絶対ここにいるはずです。


12/5(火) 晴
牧原さんグループの残党は全て怪しく見えます。
板倉さん?細江さん?それとも田村さん?
彼女達なら男のフリなんてのもやりかねない。
それに、みんな私と目を合わせようとしませんでした。
この中にレオンさんが?


12/6(水) 晴
MLはもう平和になってます。でもレオンさんだけ書き込んでません。
告発するわけでもなし。何もしないなら、なぜメールなんて送ってきたの?
例の残党はいつも一緒ですが、たまに私の方を見たりします。
何か言いなさいよ。


12/7(木) 曇
私の方から言ってやりました。レオンさんに直接メールです。
「私を知ってるのなら、堂々と話しかけたらどうですか?」
直接会うのは怖いですが、このまま不気味に黙ってられるのはもっと嫌です。
ハッキリさせないと。


12/8(金) 晴
来ました。例の三人が。
おどおどしながら私の元に。そして口を開きました。
「あの、イジメちゃって・・ごめんなさい。」
消え入るような声でそれだけ言うと、みんな顔を伏せてすぐに行ってしまいました。
レオンさんとは関係ない?私は呆気にとられました。
でもそれは違ったようです。夜。レオンさんからメールが届きました。
「明日、放課後二人で会おう。」
なんだ。他の二人に知られたくなかったのね。


12/9(土) 晴
放課後。私はずっと教室に残ってました。
例の三人はすぐに帰ったんですが、誰かが戻ってくると思ってました。
でも誰も来ません。いつまで待っても来ないんです。
岡部先生に「どうした?用が無いなら早く帰れ。」とまで言われたんですが
私だけ約束を破って帰るわけにもいきません。
仕方なく「人を待ってるんです。」と答えておきました。
そして、言われました。「それならもう来てるじゃないか。」
思わず先生の顔を見ました。苦虫を噛み潰した様な渋い顔をしてました。
「俺がレオンだ。」
私は逃げました。


12/10(日) 晴 
どうしてこうなるんでしょう。
私はただ、MLでひっそりと生きていたいだけなのに。
ちょっとくらい嘘付いたっていいじゃない。誰にも迷惑かけてないんだから。
なぜみんな私の小さな幸せを奪うの?
そっとしといてよ!



第10週
12/11(月) 晴
岡部先生からやたら電話がかかってきます。
お父さんがオロオロしてましたが、私は絶対に出ませんでした。
「話があるって言ってるぞ。」
私に話す事は有りません。


12/12(火) 曇
メールもたくさん来てます。どれもレオンさんからでした。
見ることなく全部削除しました。
もう嫌。


12/13(水) 晴
夕方頃、気が付くと学校のパソコン教室にいました。
岡部先生に会う可能性は十分有ったんですが、そんなこと頭にありませんでした。
何も考えずインターネットをやってました。いや、何かを探してたのかもしれません。
救いが欲しかったのでしょう。画面を見る目が涙で潤んでました。
助けて・・


12/14(木) 晴
私を知る人など誰もいない。そんな場所に行きたいです。
MLではそれを手に入れたと思いました。だけど次々に汚されていきます。
もう一度、新しく生きる場所が欲しいです。
無ければ死ぬしかないのかな。それとももう死んでしまいましょうか。
そうですね。そうしましょう。死にましょう。
目をつぶって死を願いました。


12/15(金) 晴
死んだのは岡部先生の方でした。
何者かに背中から刺されたらしいです。
恐ろしい世の中です。


12/16(土) 晴
私が新しく生きれる場所はやっぱりMLだけのようです。
少し寂しくなってしまった気がしますが、淘汰されたと思えばいいでしょう。
これ以上、誰にも邪魔はされません。


12/17(火) 雨
「処刑人」からメールが届いてます。
「レオンの処刑完了!残り二人だな。さぁどっちから殺る?」
私宛のメールじゃない。MLで流れていました。
私の中で、何かがガラガラと音を立てて崩れ去りました。
戻れそうにありません。



第11週
12/18(月) 曇
一足先に私だけ冬休みに入りました。
外に出たくありません。動くのすら苦痛です。
ずっと携帯電話の画面を眺めてました。
悲しいです。


12/19(火) 曇
処刑人はあれから何も送ってきてません。
メリルさんとダグラスさんはただ混乱するばかりでした。
「処刑人って誰!?」「レオンさんは?あの人見なくなったけど。」
私は何も言えませんでした。


12/20(水) 曇
やっと学校に行ったと思ったらまた引きこもり。
お父さんは腫れ物を触るように接してきます。
「早紀。悩みでもあるのか?学校で何かあたのか?」何をいまさら。
問題だらけです。学校も、MLも。
MLはほっとくわけにはいきません。意を決して書き込みました。
「処刑人はレオンさんのイタズラじゃない?」
またウソをつきました。


12/21(木) 曇
メリルさんが言いました。
「レオンさん、あなたのイタズラなんですか?それとも本当に処刑されたんじゃ・・。」
ダグラスさんも言いました。
「レオンさんが発言してくれればハッキリするね。おーいトニーレオンさーん。」
私も一緒に呼びかけました。「レオンさん。いるなら返事して!」
私、馬鹿みたいです。


12/22(金) 晴
返事がくるわけありませんでした。当然です。レオンさんは死んでるんだから。
私はなおもレオンさんのイタズラ説を叫び続けました。
処刑人が何も言わないことを祈りながら。


12/23(土) 晴
一心不乱に携帯をいじってるとお父さんが話しかけてきました。
「どうした?何かあったか?」と。いつものように「何でもない。」答えました。
いつもならそれで済むのに。今日は続きがありました。
「そうか。ならいい。いや、その、お前の学校で先生が殺されたって言うじゃないか。
それでな。あの、お前が殺したって噂がな。いや、なんでもないんだ。うん。」
ひどい。


12/24(日) 曇
クリスマスイブ。ダグラスさんと過ごしたいという願いは叶えられませんでした。
追い打ちをかけるようにメリルさんが言いました。
「ねぇ。sakkyが来てから変なことばっか起きてない?シャロンさんもレオンさんも消えちゃった。
sakky、あなたひょっとして処刑人と関係あるんじゃないの?」
全てがダメになっていきます。



第12週
12/25(月) 晴
今日はダグラスさんと一緒にいたかったのに。間に合いませんでした。
代わりにお父さんが買ってきた安いケーキを食べました。
これが私のクリスマスです。


12/26(火) 晴
メリルさんが騒ぎます。
「どう考えてもおかしいのよ。sakkyが来る前は何も無かったのに。」
私はひたすら反論してました。
「言いがかりは止めて下さい!私、処刑人なんか知りません。」
嘘を付くのはこれで何回目でしょう。


12/27(水) 晴
言い争いが続いています。でもどう見ても私は不利でした。
「シャロンさんはsakkyの嫌がるオフ会やろうとしたらいなくなったし、
レオンさんだってsakkyを疑った途端に消えたのよ。」
オフ会は本当に演技に集中できなくなるから。
レオンさんは私のことが嫌いなのよ。だから処刑人もあの人のイタズラで・・・
胡散臭い言い訳を重ねるたびに、私は追い詰められていきます。
それでも続けるしかありませんでした。
泥沼です。


12/28(木) 晴
とても残酷なことを言われました。
「ハッキリ言ってやるわよ。sakky、あなたが処刑人なんでしょ。
残り二人って。自分以外みんな殺すつもりなのよ!」
私には言い返す気力すら有りませんでした。
ひどすぎる。


12/29(金) 曇
これまで沈黙を守ってたダグラスさんが助けてくれました。
「やめろよ。sakkyだって困ってるじゃないか。決めつけるのは良くないって。」
ダグラスさん。やぱりあなたは素敵です。
最悪の状態の中でこそ、この優しさが生きてきます。
救われました。


12/30(土) 曇
メリルさんが不思議な発言を。
「ダグラスさん。あなたはこの女の正体を知らないからそんなこと言えるのよ。」
まさかあなたまで。


12/31(日) 雨
除夜の鐘と共に、家に石が投げ込まれました。
石にはこんな紙が貼り付けられていました。
「sakky死ね。この殺人鬼が。」
早紀じゃなくて、sakky。



第13週
1/1(月) 晴
みんなには年賀状が届きますが、私には脅迫状しか届きません。
文面は様々です。「早紀はメールおたく。」「人殺しsakky」
テレビからは「明けましておめでとう。」と聞こえてきますが
家では誰も言いません。


1/2(火) 晴
MLはダグラスさんが「メリルさん、sakkyの正体って何だよ。」と言ったっきり
誰も発言してません。しんと静まり返ってます。こっちは大変なことになってるのに。
手紙が来ました。私が牧原さんと岡部先生を殺したという告発文です。
お父さんが「本当なのか?本当なのか?」と疑ってきます。
嘘だと答えておきました。


1/3(水) 晴
今日も石が投げ込まれました。ガラスが割れてお父さんが手を切りました。
責めるような目で私を見てきます。私は何も言わず部屋にこもりました。
ふとお兄ちゃんのことを思い出しました。
家がこんな状態なのに。あなたは何をやってるの。
帰ってきそうにありません。


1/4(木) 曇
お母さんが警察に届けると言ったらお父さんが止めました。
「警察はマズイよ。世間体もあるし。な。な。」
私の方をチラチラ見ながら言ってます。
なんのつもり。


1/5(金) 曇
お父さんに言われました。
「なぁ。自首しろよ。罪も軽くなるから。人様殺したんだから罪は償わなきゃ。
このまま家にいても居心地悪いだろ?未成年だし早く出れるだろ。だから、な。な。」
娘を信じられないなんて。


1/6(土) 晴
ダグラスさんが久々に発言をしてました。
「みんな何も言わないけどどうしたんだよ。まさか二人とも処刑人に・・?」
私は「大丈夫です。ちゃんといますよ。」と答えました。
メリルさんは返事しないようにと祈ったけどそうはいきませんでした。
「私もいますよ。」
あなたは消えて。


1/7(日) みぞれ
お父さんは私を厄介者扱いし始めました。お前のせいで家が滅茶苦茶だ、と。
MLではダグラスさんの「良かったみんな無事なんだね。」という発言と
メリルさんの「sakkyが何もしてないからね。」というレスが虚しく漂ってます。
私はどうすればいいのでしょう。



第14週
1/8(月) 晴れ
家に居たくありません。MLまで私を苦しめます。
その元凶はわかってます。牧原さん、岡部先生と来たらから間違い有りません。
メリルさん。この人も学校の人。そして家まで攻めて来た。
こいつを取り除かないと、私に居場所はありません。
闘うしかない。明日、学校に行きます。
行けばきっとなんとななる。話し合えば、わかってくれる。
頑張ります。


1/19(火) 曇
甘かった。学校で待ってたのは、想像以上のイジメ。
板倉さん。田村さん。細江さん。三人相手に勝てるわけがありませんでした。
よくもノコノコ来れたわね。牧原ちゃんのカタキ。岡部先生のカタキ。
彼女たちはそう言って私を袋叩きにしました。
私の体はアザだらけ。


1/10(水) 曇
今までの陰気なイジメじゃない。これは暴力。暴力です。
一度顔を出したのが失敗でした。また学校をさぼると家を燃やされます。
靴は既に燃やされました。髪も少し焦がされました。
腕に「ヒトゴロシ」と刻まれそうになり、血がダラダラと流れていきました。
叫んでも叫んでもやめてくれません。
死んでしまいます。


1/11(木) 曇
腕の痛みをこらえながら、私はMLに救いを求めました。
ダグラスさん、助けて下さい。
言おうと思った矢先に、メリルさんの発言がありました。
「ダグラスさん、sakkyの正体知りたがってたわよね。教えてあげるわ。
sakkyこと岩本早紀はイジメられっ子。学校で人気だなんて嘘なのよ!」
携帯を握りしめたまま私は泣きました。
泣くしかありませんでした。


1/12(金) 晴
ダグラスさんの言葉が身にしみました。
「それ本当?どうなんだよsakky。正直に言ってくれ。例えイジメられっ子でも俺は全然平気だから。本当のことを言ってくれ。」
私の中で全てが許された気がしました。言おう。正直に。これ以上嘘はつかなくていい。「ごめんなさい。嘘を付いてました。本当にごめんなさい。」
ダグラスさんはすぐに返事をくれました。「いいよ別に。俺はそういう正直な人が・・」読んでる最中、もう一通メールが届きました。メリルさんからです。
「あんたらバカじゃないの?」
黙りなさい。


1/13(土) 曇
板倉さんに携帯を奪われました。田村さんと細江さんに画面を見せて叫んでます。
「メールで恋するおバカさんたち。私を差し置いて何やってるの?」
メリルさん。この人がそうなんだ。私は察しました。
だけどその次の言葉で、私は凍り付きました。
「このMLはね。私と岡部先生と牧原ちゃん。映画好きの三人で始めたものなの。
でもネットって色んな人が勝手に入ってくるのよね。ダグラスってのが加わって、
その後はお察しの通り。sakky、あんたが入ってきたのよ。」
え?
私が何か言おうとすると、田村さんにぶたれました。細江さんに蹴られました。
そしてメリルさん・・・板倉さんに、携帯を投げつけられました。
何の言葉も出ませんでした。


1/14(日) 晴
ダグラスさん個人にメールを送りました。
ダグラスさん。逃げましょう。私と一緒に逃げて下さい。
彼は優しく返してくれました。
「どうしたんだよsakky。様子がおかしいけど。何か大変なことになってるの?」
そうです。その通りです。だからお願い。私を新しい世界へ連れてって下さい。
「sakky落ち着いて。そんなこと言っても処刑人とか色々問題残ってるじゃないか。」
ああ、処刑人。それなら大丈夫。大丈夫なんです。
私が何とかしますから。



第15週
1/15(月) 曇
他の二人は少し引き気味でしたが、板倉さんは楽しげに私の手の平をシャーペンで何度も何度も刺しました。
「ほら処刑人さん。私を殺してみなさいよ。やれるもんならやってみなさいよ!」
激痛に涙をこぼしながら、私は祈りました。
死ね。


1/16(火) 晴
お父さんは私が手の傷の手当をしてても何も言いませんでした。
私が部屋に戻ろうとした時、初めて口を開きました。目も合わさずに。
「自首しねぇからやられるんだろ。」
父親の発言じゃありません。私はこれでハッキリと自覚しました。
こんな家、居たくない。


1/17(水) 晴
板倉さんが私の爪をはがそうとするのには、さすがに二人も止めました。
細江さんは「そこまでする必要は無いんじゃないの?」となだめてましたが
板倉さんは「こいつは危険なのよ。徹底的にやらなきゃダメなのよ!」と叫んでました。それで私は思いました。
この人、私を恐れてる。


1/18(木) 晴
板倉さんが「顔に硫酸かけましょう。」と騒いでも、田村さんと細江さんは顔を見合わせるばかりでした。
怖いのね。板倉さん。牧原さん、岡部先生に続いて自分もやられるのが怖いんでしょ。
でも無駄。もう遅い。それに私を攻めても意味無いのよ。何を勘違いしてるんだか。
処刑人は、私じゃないのよ。


1/19(金) 曇
私は処刑人を呼びました。放課後パソコンルームに行って、例のページにアクセス。
「あたなに合ったメル友探し!」
このMLコーナーで「地域限定メーリングリスト」を見つけた。
今覚えば彼女たちは私のパソコンを愛用してたんだから、私がここにアクセスしてしまったことは不思議じゃない。ああ、そういえば牧原さんに一度携帯も奪われた。それで気づいたんでしょうか。もうそんなことどうでもいいけど。
パソコンの画面に向かって祈りました。
処刑人。板倉さんを殺して。


1/20(土) 雪
板倉さんの死を聞いた時、私は細江さんと田村さんを見ました。
二人は私を怯えた目で見てきます。以前謝ってきた時よりも、はるかに青い顔をして。
学校からの帰り道、私は思いっきり声を出して笑いました。
いつまでも笑ってました。


1/21(日) 晴
処刑人からMLあてにメールです。
「メリルの処刑完了。とうとう残り一人だ。いつでもどうぞ!」
それを見てクスクスと笑いました。勝手に言ってなさい。あなたはもう用済みです。
私はこれからダグラスさんと一緒に誰も知らない所へ逃げます。
邪魔者は全て消えたから。家にも未練はありません。
新しい世界で生きていこうと思います。
後のことなど、知りません。



第16週
1/22(月) 晴 
ダグラスさんにメールを送りました。
「私と一緒に逃げましょう。」
それ以上言うことはありません。学校にはもう二度と行かないし家にもいたくない。
ここから逃げたい。


1/23(火) 晴
なぜかあまり良い反応を示してくれません。
「逃げようってそんな簡単に言われても。具体的にどこに行くとか全然わかんないよ。」
どうも私の言い方が悪かったようです。言い直しました。
「それはこれから決めるつもりです。私はもう今の家には居たくないだけなんです。」
それだけなんです。


1/24(水) 晴
あっちはEメールだから一日一通しか送ってくれません。もどかしいです。
「sakkyが辛い思いをしてるのはわかるけど・・・」
わかるけど何ですか。続きを言って下さい。
「もう私の味方はネットで会ったダグラスさんだけです。家にも、学校にも、味方なんていないんです。」
改めで自分の状況を確認して泣きそうになりました。


1/25(木) 雨
ダグラスさんしか味方はいない。それを分かって欲しいのに。
「メリルさん見なくなったけど、まさか本当に処刑人にやられたのかな。残り一人って俺とsakkyしかいないじゃん。このままで大丈夫なのかな。」
処刑人なんてどうでもいいじゃないですか!
「ダグラスさん。このままじゃ処刑人のせいでネットにも救いがなくなってしまうんです。一緒に逃げましょう。私を貴方の元に置いて下さい!」
正直に思いを告げました。


1/26(金) 曇
うまくいきません。ダグラスさんが乗り気になってくれない。
「だってまだお互いのこと何も知らないじゃないか。それに処刑人だって何者なのかわかんないのに。逃げるだけで解決するとは思わないけど。」
だから処刑人のことは心配ないのに。私が呼ばなきゃ奴は来ないんだから。
「一度お会いできませんか?お互い顔を見せ合えば、色々考えられると思うんです。」
私がいじめられっ子であることはもうバレてしまったから。
もう何も隠すことはありません。


1/27(土) 雪
承諾を得ました。さすがダグラスさん。私の味方。
「それがいいね。俺もsakkyに自分のこと知って欲しいし。」
私も知りたい。私のことももっと知って欲しい。
そして私を受け入れて。


1/28(日) 晴 
来週の日曜には会えることになりました。
それまでにお互いの情報をもっと交換するつもりです。
きっとうまくいくでしょう。



第17週
1/29(月) 晴
お父さんの厳しい視線に耐える必要は無くなりました。
ダグラスさんのメールを待ってるだけで私は幸せです。
新しい世界はもう目の前だから。


1/30(火) 晴
私の本名は岩本早紀。その他イジメれっこ女子高生であることとか全て告白しました。
ほとんどバラされてたけど改めで自分で言うと重みが違います。
牧原さん、岡部先生、板倉さんのことには触れなかったけどこれは関係ありません。
なんだか隠すことが無くなるとスッキリしました。
最初から彼を信じておけば良かったです。


1/31(水) 晴
私の告白に答えて、ダグラスさんも素性を明かしてくれました。
本名は風見祐一。東京在住。高校を卒業してからは働いて一人暮らしをしてるそうです。一人暮らしなんて理想的です。私も一緒に住めたらどんなに素敵でしょうか。
風見さんに会いたい。


2/1(木) 雨
電話したい。電話で直接風見さんの声を聞きたい。
メールでしかやり取りできないなんてもどかしいです。
それに日曜日の場所とかも決めなきゃいけないし。メールでその旨を伝えました。
電話番号を教えて下さい、と。


2/2(金) 曇
風見さんの電話番号は教えてもらえませんでした。
「電話はこっちからかけるから。早紀の番号教えてよ。」
教えます。だから電話を下さい。すぐに番号をメールで送りました。
会う予定は明後日だから。はやく決めないといけないから。
時間がありません。


2/3(土) 曇
風見さんは明日会う予定なのを忘れてるんでしょうか?
「電話、ちょっと待ってくれないかな。」
もう当日になってしまいます。場所も時間も決まってないのに。
何度もメールを送ってせかしても効果はありません。
なぜ電話をくれないんですか。


2/4(日) 曇
ダメです。風見さんまでも私を疑ってしまいました。
「今日は駄目だ。早紀、君は俺を殺すつもりなんじゃないだろうな。」
勘違いです。貴方にそんなことしません。
私は処刑人じゃありません!



第18週
2/5(月) 曇 
お父さんはもう私に「学校はどうした?」とは聞かなくなりました。
携帯電話をいじりながら泣いてる姿を見られたからだと思います。
ただただ無言で睨まれるだけです。
こんな家、早く出たい。


2/6(火) 曇
私が「処刑人じゃない。」と何度否定しても、風見さんは信用してくれませんでした。
「早紀、俺だって怖いんだよ。だってもう三人も消えちゃったじゃないか。」
それは処刑人がやったわけで私とは関係ありません。
なぜそれをわかってくれないの。


2/7(水) 雨
あの優しかった風見さんまでもが敵になってしまいました。
「メリルさんも言ってたけどさ。やっぱり早紀が来てから何かがおかしくなったんだよ。」酷いこと言わないで下さい。私のダグラスさんはそんなこと言わなかったはずです。
どうして。


2/8(木) 晴
「処刑人、残りあと一人って言ってたじゃないか。残ってるのは俺と早紀しかいないんだ。君を疑いたくなるのも当然だろ?わかってくれよ!」
わからない。私にはわかりません。どうすれば納得してくれるんですか。
私は何をすればいんですか。


2/9(金) 晴
何をすべきなのかわかりました。
「早紀、本当に処刑人について何も知らないのか?知ってたら説明してくれ。そうしたら納得できるから。君にもちゃんと会えるから。」
私が処刑人を呼んだことを言えば、彼は納得してくれます。
言うべきなのでしょう。言うべき。言うのよ早紀。
正直に。


2/10(土) 曇
言えませんでした。だって、言ったら絶対嫌われるから。
「私が処刑人を呼んだ。」と言って信じてくれるはずがありません。
あの優しかったダグラスさんだったら言えたのに。今の風見さんは私を疑ってる。
私が処刑人を呼んだことを知ったら、嘘だと言うに決まってます。
会ってもくれない。メールも送れず、一人でずっと泣いてました。
誰も信用できない。


2/11(日) 晴
処刑人が現れました。
「決まったな。最後の標的はダグラスだ。信用できねぇ奴なんざ処刑しちまえ!」
風見さんは「おい、待て。処刑って何だよ。殺そうってのか?何なんだよ!」と焦ってます。
私は何も言いませんでした。



第19週
2/12(月) 晴
風見さんが焦ってます。「何で俺が標的にされるんだよ。早紀、何か知ってるんだろ?教えてくれよ!」
私は一言「電話下さい。」とだけメールしました。
直接お話したいです。


2/13(火) 晴
風見さんは電話をくれません。まだメールだけです。
「なんで電話にこだわるんだよ。やっぱり早紀が処刑人なのか?俺を呼び出そうとしてるのか?」
私は処刑人じゃありません。だから電話下さい。そう返事を書きました。
電話は来ません。


2/14(水) 晴
私を受け入れてくれるどころでは無くなってます。何かがおかしくなっていきます。
「早紀。俺はこのままメールをやめれば君との関係も終われるんだ。処刑人との縁も切れるかもしれない。電話にこだわらないでさ。処刑人のこと、教えて欲しいな。メールで。」このまま全て終わってしまうんでしょうか。
お願いです。電話さえくれればきっとうまくいくはずだから。
またメールを送りました。


2/15(木) 曇
風見さんが醜く見えてきました。
「電話はできない。わかるだろ?君が処刑人かもしれないって疑うのも仕方ないだろ?
お願いだよ早紀。助けてくれよ。処刑人って何なんだよ。標的にされたらどうなっちゃうんだよ。教えてくれよ!」
私は自分が何を望んでるのかわからなくなってきました。風見さんに何を求めてた?
わからない。それでも私は「電話して下さい。」としか言えませんでした。
わからない・・


2/16(金) 晴
家では誰も話しかけてくれません。ご飯は時間になれば自動的に出てきます。
私が食べるときにはお父さんは引っ込んでしまいます。「この引きこもりが!」と捨てゼリフを残して。
私は居間にも行かなくなりました。部屋にこもりっぱなしです。
やることと言えば風見さんに「電話下さい。」とメールを送るくらいです。何をやってるんでしょう。
本当に、引きこもりです。


2/17(土) 晴
風見さんのメールを見た時、私の中で何かが弾けました。
「お願いです。処刑人が怖いです。逃げるにはどうすればいいんでしょうか?」
私と一緒に逃げて下さい。そう書こうとしましたが、途中で涙が出てきて書けませんでした。
もういい。ネットで出会った赤の他人なんかに頼ろうとした私が間違ってました。
MLなんかに自分の場所を求めたのが間違いでした。
ここに希望なんてありません。


2/18(日) 曇
また風見さんからメールが来ましたが、無視しました。
恐らく二度と返事を書くことはないでしょう。
でも最後にやらなければならないことがあります。処刑人にメールを送りました。
「最後の標的は私にして下さい。私を、殺して下さい。」
これで全てが終わります。



第20週
2/19(月) 晴
おかしなことが起きました。
処刑人に送ったメールが戻ってきます。何度送っても戻ってきます。
どうして?


2/20(火) 曇
処刑人からメールが届きました。
「まさかそう来るとは思わなかったよ。まぁ、理想的ではあるけどね。」
意味がわかりません。何なんですかってメールを送ったけどまた戻ってきました。
メールが送れません。


2/21(水) 晴
処刑人の方からは一方的にやってきます。
「ご要望通り、sakkyが最後の標的だ。覚悟はできてるな?」
ええ、それは私が望んだことだから。でもちょっと、え?
処刑人は私を知ってるの?意味が、え?わからない。何?何?
何が起きてるの?


2/22(木) 晴
返事を書いても戻ってくるだけなのに。奴からはちゃんと届きます。
「結局風見君には何も話してあげなかったな。かわいそうに。今頃見えない刺客に怯えて一人プルプル震えてるだろうよ。」
だから貴方は何を言ってるの。お喋りなんかしてないで来るなら来なさいよ。
私を処刑するんでしょ。ねぇ。何なのよ。なんでメールが送れないのよ。
ちょっと、え?処刑する前に説明してよ。
えええ?


2/23(金) 晴
意味が意味がわかりません意味分からないメールが届きます。
「ほら。さっさとやれよ。覚悟決めてから何日経ったよ。簡単だろ?さっさと自殺しろと言ってるんだよ!」
自殺?え?処刑って自分で?殺されると思って、覚悟を。でも自殺しろって。え?
なぜ?


2/24(土) 雨
わからないもう何もわからない
「なぜだと?バカかお前。まだ気づかないのか。」
このメールの意味もわからないし何を気づけばいいのかもわからない
教えて下さい私は何に気づいていないんですか教えて下さい
お願いします。


2/25(日) kumori
処刑人から最後のメールです。
「俺のメールアドレスをよく見ろ。」
処刑人のアドレスをよく見ました。
これ、私のアドレス。私の。携帯の。メール。アドレス。だから処刑人は。私?
自分で祈って、自分で・・・・・・・・・あ・・・・・・
ああああああああああああああああああああああああああああ
aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa


第2部<逆襲幻想編>