絶望の世界∀ −もうひとつの私日記−
第2部<逆襲幻想編>
第21週
2/26(月) aaaa
aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
2/27(火) aa
aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
2/28(水) a
aaaaaaaaあああ私は何をやってるのでしょう。
家に居てはいけません学校に行かなきゃ火をつけられるから
牧原さんならきっとやるから。
3/1(木) 雨雨
怖くて学校に行けません行ったらイジメられてしまいます
上履きには画鋲も入れられるし鞄を水浸しにされるし靴もビリビリにされてしまいます
そんなの嫌です。
3/2(金) 日青
家に火がつけられてないか一日中監視しました牧原さんが来るかもしれない。
手下の板倉さんと田村さんと細江さんも来るかもしれない警戒しないといけません。
眠いですでも寝れません起きてないと家が燃えるぅぅぅ。
3/3(土) 曇
昨日は不覚にも眠ってしまったけど幸い家は燃えてませんでした。
これからまた警戒をしなきゃいけません。
全てはイジメのせい。イジメさえなければこんなに眠いのを我慢する必要も無いのに。
先生も頼りにならない。岡部先生は牧原さんたちと親しいから。
家族には言えません。お兄ちゃんは家出したしお父さんは無職だから。
これ以上家に迷惑かけるわけにはいかないから。
一人で頑張るしかないんです。
3/4(日) 雨
私に味方はいません。
一人イジメを受ける私は耐えるしかないのでしょうか。
いや、一つだけ方法がありました。
彼女たちをやっつければいいんです。
やられる前にやる。簡単なことです。
でも、私にできるかな?
大丈夫。きっとうまくできるはずです。
だって私は処刑人。
殺すのなんかわけないわ。
第22週
3/5(月) 晴
学校に行くとみんなが驚いてました。
あのまま引きこもると思ってたようです。
バカね。闘う為に戻ってきたのよ。
3/6(火) 晴
不思議なことにイジメは消えました。牧原さんの姿を探しても見あたりません。
私の殺気を察して逃げてるのでしょう。そうに違いありません。
あの人、ずる賢いから。
3/7(水) 晴
板倉さんも岡部先生も私を避けてるようです。みんな私の殺気に気付いたのね。
細江さんと田村さんは取り残されてノコノコと私の視線に入ってきます。
いい気なものです。
3/8(木) 晴
恨みリストがこんなに長いと迷ってしまいます。
牧原さん。板倉さん。細江さん。田村さん。岡部先生。
さてどいつから殺しましょうか。
3/9(金) 曇
牧原さん達の妨げが無いから思いっきりバソコンを使うことができました。
そこで私はふと面白い趣向を思いつきました。
ネットの人に誰を殺したいか聞いてみるのはどうだろう?
奴らの運命は、見知らぬ他人の気分次第。
素敵。
3/10(土) 晴
思いついたらすぐ実行です。
「お気に入り」にあった「あなたに合ったメル友探し!」のサイト。
そこのフリー掲示板が人が多そうだったのでそこに書き込みました。
********
彼らは弱き者を苦しめる罪人である。
よって死刑の判決が下された。
しかし彼らにも猶予を与えたい。
諸君らにお願いする。
処刑して欲しい者を選んでくれ。選ばれた者から処刑を始める。
彼らの運命は君らに託されるのだ。
誰を真っ先に殺すべきか?
メールを待つ。
失格教師 岡部和雄
鬼畜女王 牧原公子
能無下女 板倉聡美
淫売女狐 細江亜紀
寄生蛆虫 田村喜久子
********
もちろん投稿者は「処刑人」
携帯メールのアドレスも載せておいたから書き込みを見た人はこっちに送ってくれるでしょう。
楽しみです。
3/11(日) 晴
ネットって凄いです。メール着信音が鳴りっぱなしでした。
一気に大勢の味方ができたみたいでとても嬉しいです。
他人の反応が自分の存在を確認させてくれる。
「処刑人さん、本気でやってるんですか?」「処刑人、なかなか面白いぞ。」「処刑人」「処刑人」・・・
もっと私の名を呼んで!
第23週
3/12(月) 雪
見知らぬ他人でも励ましのメールは良いものですが
意味不明メール、中傷メールやお説教メールも来てしまいます。
「人殺しは良くない。」なんて余計なお世話です。
私の気持ちなんてわからないくせに。
3/13(火) 晴
これだけメールが届くと中には鋭い人も居ます。
私がイジメられっ子で処刑リストの人達はいじめっ子だろうって指摘されてドキリとしました。
処刑人の正体がバレるところでした。危ない危ない。
3/14(水) 晴
段々一日にメールが届く量が少なくなってるけど仕方ないことかもしれません。
家にパソコンが有ったら便利だろうと思うけど、うちのような貧乏家庭に望めるわけありません。
でも最近の携帯は凄いからたくさんメールもらっても全部記録が残ってます。
当分このままでいいかな。
3/15(木) 晴
もうメールは届きません。でも全部で二百通くらい来たから満足です。
学校のパソコンで書き込みを確認したらもう流れて消えてました。
掲示板での反応も見ておけば良かったと少し後悔。
3/16(金) 晴
メールの返事を書いたり、これまで届いたリクエストを紙に書き出して整理したりで
結構忙しい日が続きます。
一番人気は牧原さんでした。みなさん一番悪い奴が誰だか分かってるようです。
次に細江さん。「淫売」って書いたせいみたいです。
ネットではイメージが大切なのだと思いました。
3/17(土) 雨
みんなのメールを全部読むだけでも数時間かかるけど楽しいから苦じゃありません。
この小さな携帯の向こうにはたくさんの味方が居ます。
色んな人と繋がってる。私は一人じゃないんだと思えて幸せでした。
処刑人には仲間がいっぱい。
3/18(日) 晴
ターゲット決定。圧倒的人気の牧原さんを処刑することにしました。
リクエスト書いてくれた人にはお礼メールをしました。他の人に投票してくれた人は残念だけど次の機会に。
さて。処刑タイムのはじまりです。
第24週
3/19(月) 晴
終業式に牧原さんは出席しませんでした。
学校に姿を見せないのはいい作戦だと思ってるのでしょう。
明日から春休みだから。休みを挟めば私が諦めるとでも?
一番人気の貴女をそんな簡単に逃すわけないじゃない。
3/20(火) 曇
春休みに突入。牧原さんは安心してるでしょうけど、そんなの甘いです。
同じクラスってことは連絡簿があるってこと。
住所がわかるってこと。
3/21(水) 晴
住所だけで家を探すのは結構苦労します。
学校の近くだとわかってたのに数時間もウロウロしてしまいました。
やっと見つけたアパートはとてもみすぼらしいオンボロ。
牧原さんは貧乏人だと判明して楽しくなってしまいました。
私も貧乏だけど家は一軒家。勝った。
3/22(木) 晴
一日中張ってると怪しまれるのでちょくちょく見に行く程度にしておきました。
そのせいか牧原さんを見かけることができませんでした。
何人もアパートを通る人はいたのに。彼女はいない。
張り込みも難しいです。
3/23(金) 晴
昼間だけ張り込みしてても牧原さんを見つけることはできないかもしれません。
あの人はいつも遊び人っぽい格好してたから夜遊びするタイプかも。
家に帰って来ない可能性も考えないと。
3/24(土) 晴
腹が立ちます。牧原公子、いい加減姿を見せない!
生活パターンを把握してから処刑計画を立てようかと思ったけど
張り込みが効果無いので作戦を変えないといけません。
呼び出し。それしかない。
3/25(日) 雨
牧原さんの携帯の番号はわからないから家に直接電話するしかありません。
あの鬼畜女王が私の話に耳を傾けてくれるかわからないけどうまく言わなきゃ。
凶器はどうしよう。後から首を絞める?相手がスキを見せないとできない。
ならやっぱり、一撃必殺で。
台所の包丁を一つ拝借しました。
第25週
3/26(月) 晴
いざその時となると心臓がバクバク鳴ってしまいます。
呼び出す場所は夜の公園?夜の学校?人が少ない所じゃないと殺せない。
学校の側に小さな公園があったな。あそこにしよう。
私は電車でわざわざ行かなきゃいけない距離だけど、牧原さんの家からなら歩いて来れる。誘い出すには丁度いい。
この電話をしたらあとはもう進むだけ。
もう少し、心の準備を・・
3/27(火) 晴
励ましてくれた多くの人々のためにも、私は勇気を持って電話しました。
なのに誰も出ません。何度かけても、家に誰もいない。
困りました。この可能性を考えてなかった。
くそ。ちゃんと家にいなさいよ!
3/28(水) 曇
今日もひたすら電話したんですが誰も出てくれませんでした。
親も居ないの?そんなのおかしいじゃない。マトモな家庭なら親くらい居るはずよ。
居留守?それとも春休みを利用して旅行でも?
そしたらせっかくの計画がパアに。
3/29(木) 雨
これ以上待ってるわけにはいかない。
思い切って家に直接出向きました。お腹に仕込んだ包丁が冷たかった。
ドアをトントントントントントントントンしつこく叩いてたらようやく人が出てきました。
牧原さん。そう思って身構えたけど出てきたのは汚いおばさんでした。
「誰?」まさかこんな人が出てくるとは思わなかった。
とっさに「公子さんいますか?」と聞いたら「もういないわよっ!」と怒ったように吐き捨ててドアをピシャリと閉めてしまいました。
帰るしかありませんでした。
3/30(金) 雨
よくよく考えてみるとあのおばさんは牧原さんの母親だったのでしょう。
でも「もういない」ってどうゆう意味でしょうか。
まさか、私の計画に気付いて一人夜逃げを・・?
そんな!
3/31(土) 曇
せっかく練った計画をフイにするわけにはいきません。
牧原さんが本当に逃げやがったのか確認するためにもう一度家に電話しました。
今日は出ないからってすぐには切りませんでした。
5分以上ずっとコールを鳴らしてました。10分経って切りませんでした。
15分くらいしたらようやく電話に出ました。「うるさい!」
例のおばさんの声でした。余計な会話はさせてもらえなさそうなので
私は間髪入れずに「公子さんどこにいますか?」と聞きました。
すぐに返事がきました。「私が教えて欲しいくらいよ!」
電話を切られました。親にも居場所を知らせないなんて。
やっぱり逃げてしまったんだわ!
4/1(日)
リクエストくれた人達に申し訳ありません。
まさか私の先を行かれるとは思わなかった。
仕方ない。次のターゲットを探しましょう。
処刑人はまだ健在よ。
第26週
4/2(月) 晴
家にパソコンが無いと学校に入れない時どうしようもありません。
新しいターゲットの募集をしようとしたけどネットに繋げない。
どうしましょう。
4/3(火) 曇
お父さんにパソコンを買ってくれと頼むと「いきなり何いいやがる!」と怒られました。
家にはお母さんが稼ぐ細々とした生活費しかなかったのを思い出しました。
ただでさえ少ないお金もお父さんの競馬代と酒代で消えてるんだった。
パソコンなんて買う余裕なんて無いんだった。
4/4(水) 晴
ネットでリクエストに応える処刑人がパソコンを持ってないなんて滑稽です。
店に飾ってあるパソコンを使えないかと横浜駅に出向いて店めぐりをしたけど
どこもネットには繋げないようになってました。
一つくらいあったっていいのに。
4/5(木) 晴
学校が始まるのを待つのも手ですが、それだと今後も同じ事態が起きた時に困ります。
なんとか学校以外でネットに繋げる環境を見つけないといけません。
携帯では表示画面が小さくて思うように使えない。
他に何かないの?
4/6(金) 晴
横浜駅をウロウロしてると面白い看板を見つけました。
「インターネットも使いたい放題」
何だろうと思って近寄ってみるとそこは漫画喫茶でした。
凄い。今時の漫画喫茶はインターネットまで完備してるなんて。
入ろうとしたらお客さんが一杯で入れませんでした。
スーツ着てる人とかもたくさん居て漫画喫茶って結構人気なんだと思いました。
明日改めて行ってみます。
4/7(土) 晴
今日は朝早くから行ったので混んでませんでした。
漫画喫茶は初めてで入るのに緊張したけど「ネットがやりたいんですけど。」と言うと
店員さんが親切に教えてくれたので全然平気です。
ちゃんと隣と区切られてプライバシーが守られてる。お金を払うだけの価値はありました。
メル友探しのアドレスがわからなかったけど検索かけたら出てきました。
本当にどこからでもアクセスできるなんて、やっぱりインターネットって凄いです。
フリー掲示板に行って新たな書き込みをしました。
********
鬼畜女王逃亡により次のターゲットを募集する。
失格教師 岡部和雄
鬼畜女王 牧原公子(逃亡中:見つけ次第処刑予定)
能無下女 板倉聡美
淫売女狐 細江亜紀
寄生蛆虫 田村喜久子
********
メールが楽しみです。
4/8(日) 晴
またたくさんのメールを頂きました。
中にはどこかのホームページのリンクを貼ってくれた人がいたけど残念ながら携帯では見れませんでした。
牧原さんの逃亡を許したのをなじる人もいたけどそれは私が悪いので仕方ありません。
見つけたらすぐに処刑してやる。でも今は次の人。
メールは続々と届きます。人気者は誰かな。
第27週
4/9(月) 晴
学校が始まりました。新しいクラスでは誰と一緒になるか気になったけど
運の良いことに細江さんが一緒でした。田村さんは別のクラス。
牧原さんと板倉さんの名前が見当たらなかったけどまだ逃げてるだけでしょう。
いずれは戻ってくると思います。
4/10(火) 曇
オリエンテーションばかりで退屈です。早く授業が始まってパソコンが使いたいです。
新クラスになっても元々学校に友達は居なかったから前とあまり変わりません。
楽しみは携帯メールだけ。全国には友達がたくさん。
みんなが処刑人を応援してます。
4/11(水) 晴
またメールの返事を書くのとリクエストの集計が忙しくなってきました。
今回の人気どころは板倉さんと細江さんです。
女の子をターゲットにしたがる人が多くて岡部先生は人気が後退してしまいました。
田村さんは影が薄いから人気も無い。
こうやって標的を選ぶのがたまらなく楽しいです。
4/12(木) 晴
具体的にどうして欲しいか書いてくれる人がいて面白いです。
「ハムスターの赤ん坊を靴の中に入れてやれ。」と陰湿な人もいれば
「裸にして辱めろ。」なんていやらしい人もいます。
そうね。何もすぐに殺すのだけが処刑じゃないわね。
殺す前にたっぷりと私が受けた苦しみを返してやるのもいいかもしれない。
4/13(金) 晴
パソコン教室が始まりました。去年より高度なことをするとか説明してました。
私もそろそろパソコンメールを使おうかと思ったけど牧原さん達のおかげでメールの正しいやり方も覚えず仕舞いだったのでよく分かりませんでした。
ホームページを見たりするのはできるのに。メーラーってやつの使い方がわかりません。携帯メールでもう少し頑張ります。
4/14(土) 曇
届いたメールを読み直すと自分には味方がたくさんいることが確認できて幸せです。
意味不明メールや脅しメール、妙に馴れ馴れしいメールも全然煩わしく感じません。
むしろそれぞれの脅し文句に笑わせてもらったりしてます。
「こんな企画で人が喜ぶと思うなんて甘過ぎ。」とか「アンタ狙われてるよ。」とか。
なんだかんだでちゃんとメールを送ってくれる人達に感謝しました。
みんなありがとう。
4/15(日) 晴
今回の人気は細江さん。めでたく次のターゲットは細江さんに決定しました。
淫売女狐ってキャッチフレーズが人気のカギだったようです。
卑猥な言葉を浴びせる人も多くてそっち方面の処刑が多く望まれてます。
となればやるしかありません。どんな方法で辱めてやりましょう。
彼女に激しい屈辱を。
第28週
4/16(月) 晴
細江さんは自分の運命も知らずにノコノコと学校にやってきます。
私と目が合うとすぐにそらしたりするのは私のことを意識してるから?
牧原さんに逃げられたけど。貴女は逃がさない。
4/17(火) 晴
ずっと観察してて一つわかったことがあります。
細江さんには友達がいない。田村さんは別のクラスになっちゃったし
板倉さんと牧原さんは見かけないし。かわいそう。
ますます狙いやすいじゃない。
4/18(水) 晴
学校だと何ができるかな。女子校だから裸にしてもあまり効果は無いかも。
でも男の先生はいるか。仲良しな岡部先生にでも見せてやったらどうでしょう。
楽しそう。
4/19(木) 曇
制服をビリビリに引き裂いて燃やして灰を窓から捨てて鞄に貼ってあるプリクラを一枚ずつはがして細江さんの地肌にペタペタ貼り付けて鞄は細かく刻んでトイレに流して靴下を脱がせて口の中に突っ込んでそのままで家に帰れって言えたら素敵だなって思いました。やりたいです。
4/20(金) 曇
腕にキリで穴を開けて髪の毛を一本ずつ抜いては埋め込んでを繰り返してモジャモジャになったところを一気に燃やしたらすごく綺麗な炎が上がるかもしれないと思いました。
それともピアスをペンチで握りつぶして耳と同化させたところをそのままひと思いに引きちぎったら血がドクドク流れて赤い耳たぶみたいになって面白いかもしれません。
4/21(土) 雨
細江さんが一人で寂しく本を読んでたのでビリビリに引き裂いてやりたい衝動にかられました。
そろそろ実行に移そうと思います。じんわり処刑と行きましょう。
武器が必要ね。
4/22(日) 晴
家に使える道具が無いか一日かけて探してました。
お兄ちゃんの部屋のタンスをあさったら使い古したベルトを見つけました。
全部持って家出したのかと思ったら所々に結構残ってたりします。
分厚い英和辞典とか整髪スプレーとか。
使えるかもしれません。
第29週
4/23(月) 晴
放課後、細江さんを呼び出そうと思ってそそくさと帰り支度をしてる細江さんに
「ちょっと話があるんだけど。」と言ったらキっと睨まれて「私に話は無いわ。」と言われてしまいました。身も蓋も無いです。
仕方ないから鞄からお兄ちゃんのベルトを取り出して問答無用でブッ叩きました。
悲鳴を上げて逃げてく姿が笑えました。
4/24(火) 曇
細江さんは私を避けてたけど他に友達もいないからスキだらけでした。
トイレに行く時について行って後からベルトで背中をピシリとやりました。
驚いて「何すんのよ!」と叫んでたけど私は何も言わずにピシピシ繰り返しました。
最初は強気だったくせに段々涙目になって「やめてよ。」と訴えるようになりました。
休み時間が終わるまでやめませんでした。
4/25(水) 雨
トイレは人も来なくてピシピシやるには絶好のチャンスです。
でも今日は生意気にも抵抗されました。ベルト鞭にもめげずに胸ぐらをつかんできました。
「いい加減にしなさいよね!私が一人だからって何もできないと思ってるの!?」
こんなこともあろうかと左手に持ってた英和辞典が細江さんのこめかみに直撃しました。吹っ飛びました。それ以後抵抗しなくなりました。
4/26(木) 晴
トイレに行ったらピシピシやられるのを知った今、どうするのか見物でした。
そしたら彼女、一日中トイレに行きませんでした。我慢してやがります。
私は「トイレに行かないの?」と何度も聞いたけど「うるさいわね!」と突っぱねられました。まだ元気は残ってるようです。
4/27(金) 晴
整髪スプレーを顔にかけてあげました。「ねぇ。トイレに行きましょうよ。」
何か言おうとしてたけどスプレーが口に入ったから言葉は出てきませんでした。
顔に手を当ててもがきながらトイレに駆けて行きました。
私も後を追って彼女が水道の蛇口をひねる前にベルト鞭で手を弾いてやりました。
スプレーでシュッ。鞭でピシッ。シュッ。ピシッ。シュッ。ピシッ。シュッ。ピシッ。
泣いてました。
4/28(土) 曇
トイレに誘うと「覚えてなさい。タダじゃ済まないわよ。」と睨んできました。
仲間に見捨てられたくせに良く言います。
「じゃぁ牧原さん連れてきてよ。」って言ったら歯ぎしりしてやがりました。
うるさいので英和辞典の角を口にぶつけました。
血を流してました。
4/29(日) 雨
こんなに充実した一週間は久々な気がします。
反抗すればするほど屈した時の快感が大きい。人の優位に立てるってこんなに素晴らしいなんて。すぐに殺してしまうのは惜しい。
まだ新学期は始まったばかり。
いたぶりの刑、ずっと続けていきたいです。
第30週
4/30(月) 雨
休日なのがもったいない。早く細江さんに会いたいのに。
次はどんな風にいびってあげよう。何発鞭を入れてあげよう。
何て言ったら許してあげよう。ああ。
素敵な時間が待っている。
5/1(火) 晴
彼女、学校に来てない!何てことでしょう。
他の連中は気にもしてないけど私にとっては大問題です。
スプレーもわざわざ新しいのを買ってきたのに。ベルトもちゃんと鞄に入ってるのに。
冗談じゃありません。
5/2(水) 雨
今日も来てません。学校に来なければ何とかなると思ってるなんて許せない。
さすが牧原さんの手下なだけある。思考回路が似てるんだわ。
けど細江さん。貴女まで逃がすわけには行かないのよ。住所はこっちに筒抜けなのに。
逃げられると思ってるの?
5/3(木) 曇
ゴールデンウィークが始まりました。公式に逃げれる時間で安心してるのでしょう。
私がこうして襲撃の準備をしてるのも知らずに。
引きずり出してあげる。貴女達が私にやったことを、そのままお返ししてあげる。
待ってなさい。
5/4(金) 晴
細江さんの家に行きました。生意気にも一軒家に住んでました。
見つけるのにはさほど苦労しなかったです。電車賃が少しかかったくらい。
最初は親御さんが出ました。牧原さんのと違って真面目そうなお母さんです。
「亜紀ちゃーん。お友達よー。」と言って彼女を呼んでくれました。
その亜紀ちゃんが「お友達」が私と知った時の顔。歪みっぷりが最高。
「何しに来たの。」と小声で言ってきました。
私は鞄からスプレーを取り出して壁にシュッとやってライターで火をつけました。
壁が実に良く燃えました。泣きながら火を消す細江さんが健気でした。
「学校、来てね。」それだけ言い残して帰りました。
気持ちの良い一日でした。
5/5(土) 晴
学校が休みでも呼び出せばちゃんと来てくれます。
グランドでソフトボール部の人達が練習に励んでるのを後目に
私はがらんとした教室で細江さんへ鞭を打つのに励んでました。
「なんでこんなことするの?いい加減許してよ・・。」
私が一言「復讐。」と言うだけで彼女は黙り込みます。
許しを乞われる快感。打てば響く彼女の悲鳴。
「細江さん。私の下僕になりなさい。」
歯を食いしばって頷く細江さんに私は鞭を浴びせ続けました。
いずれは殺す。けど今は下僕として生かしておいてあげましょう。
5/6(日) 晴
牧原さんの後釜は私がもらった。最高の気分です。
死の運命を背負った下僕を従えて次のターゲットを狙います。
私は処刑の女王様。
第31週
5/7(月) 曇
学校に行くのが楽しくて仕方有りません。
今日も今日とて女王様。下僕の娘をいたぶります。
逆らったらお仕置きよ。
5/8(火) 雨
充実した日々とはこういうことを言うんでしょう。
牛乳と卵と味噌と青汁と雨を混ぜたのを魔法瓶に詰めて持っていきました。
細江さんに健康水だと言って飲ませました。
咳き込んでました。
5/9(水) 曇
細江さんに味方がいないのがまた素敵です。
今思えば彼女だけで無く牧原さんグループ自体が孤立してたのかもしれません。
私はそんな奴らに虐げられていたの?
無性に悔しくなって今日の分の健康水にはイカスミを気取って墨汁もブレンドしました。トイレに駆け込んでました。
5/10(木) 曇
腕に鉛筆で入れ墨をしてあげました。
「処刑済」と書いたら結構字数が多くて細江さんの泣き声が教室の外に漏れてしまいそうでした。
聞かれて困る人はいないから平気だけど。
私の下僕には味方なんていないんだから。
5/11(金) 曇
田村さんと一緒にいるのを見かけたので罰を下しました。
下僕は私を睨みましたが反抗はしてきません。素直でよろしい。
放課後恒例のいたぶりも段々マンネリ化してきたのでそろそろ次のターゲットを探そうと思います。
5/12(土) 晴
学校のパソコンでネットに接続。書き込みをしました。
********
淫売女狐下僕化完了。次のターゲットを募集する。
失格教師 岡部和雄
鬼畜女王 牧原公子(逃亡中:見つけ次第処刑予定)
能無下女 板倉聡美
淫売女狐 細江亜紀(下僕化)
寄生蛆虫 田村喜久子
********
書いてみて気付いたんですが、私はまだ「処刑」をしていません。
次の人はちゃんと消さないと「処刑人」の名が泣きます。
死ぬのは誰でしょう。
5/13(日) 晴
ネットのみんなはちゃんと協力してくれるから嬉しいです。
相変わらず「死ね」だとか嫌がらせのようなメールもありますが、たくさんいれば中には変な人がいても仕方有りません。そんな奴は無視するだけです。
無駄な労力は費やしません。
第32週
5/14(月) 晴
リクエスト板倉さんが多かったです。二番手は岡部先生。
かわいそうな田村さん。ネットの人達にまで見放されてしまって。
彼女はたまに学校の廊下で見かけますが、いつもパッとしてません。
つまらない人。
5/15(火) 曇
下僕が勝手に教室の外に出回ってしまうのでどうにかしないといけません。
次こそちゃんと処刑をしようというのに、下僕のしつけがなってないなんて恥ずかしいです。
首輪でもつけてやろうかと思いました。それとも牛のように鼻輪がいいでしょうか。
想像して笑ってしまいました。
5/16(水) 雨
リクエストは順調なんですが、今回はやたらしつこい人がいます。
「あなたは何者なんですか?」とか「お前は狂ってる。」だとか。
そんなこと書いてる暇があったらリクエストに投票すればいいのに。
田村さんにもそこそこ入ってるからこの人にしてあげようかな。
5/17(木) 晴
今回はかなりリクエストの調子がいいです。
みなさんにご好評頂いてるようで、数日経った今でもメールが届き続けます。
岡部先生と板倉さんが凄い伸びを見せて田村さんを突き放してました。
こんなに多いととてもじゃないけ返事は送れません。
嬉しい悲鳴ってヤツです。
5/18(金) 晴
いい人は何度もリクエストをくれます。
たまに「今度のターゲットは誰に決まったのですか?」ってことも。
この調子だと岡部先生か板倉さんのどちらかです。
ちょっと悩みました。狙いやすいのはどっちだろう?
5/19(土) 晴
今度のターゲットは人気に答えて板倉さんに決定しました。
例のいい人にはメールで教えてあげました。
しかも今回の処刑はちょっと趣向を凝らすつもりです。
掲示板で発表するのも考えたんですが、何かの拍子で見られたら
ターゲットに逃げられてしまう可能性があります。
そこら辺は抜け目ありません。
5/20(日) 晴
下僕に電話しました。
「板倉さんを殺しなさい。」
下僕は戸惑ってましたが、問答無用で「彼女を殺せなかったらあなたを処刑します。」と言ってあげました。
下僕を駆使して処刑。私の手は汚れない。
我ながら良いアイデアです。
第33週
5/21(月) 晴
下僕は一日中ウロウロしてました。
また田村さんと一緒にいる。人気最下位の奴なんかとつるむなんて許せません。
余計なことで時間潰してないでさっさと板倉嬢を殺しなさいと命令しておきました。
黙って頷いてました。
5/22(火) 雨
能無はまだ見つかりません。牧原さんのように逃げたのでしょうか?
二の舞は防がねばなりません。なんとしても探し出して処刑せねば。
下僕の元気が段々なくなってきてたので久々にムチで叩いて上げました。
馬のように跳ねて元気になりました。
5/23(水) 雨
捜索の進み具合を報告さると「板倉さんの目撃情報があったので真偽を確かめます。」とのことでした。
素晴らしいです。これもムチの効果でしょうか?
次の報告が待ち遠しいです。
5/24(木) 雨
「居場所は特定できました!本人がいるか見に行ってきます。」
と下僕も目を輝かせてました。あと少しです。
待ってなさい能無下女。あなたは牧原さんのように逃がしはしないわ。
私の下僕が、逃がさない。
5/25(金) 晴
下僕はとうとう能無しを見つけたようです。よくやりました。
「本人を確認してきました。でもどうやって殺したらいいんでしょうか。」
ナイフか包丁か、とにかく刃物がいいと助言しておきました。
拳銃は無いし首を絞めるのも抵抗されてしまいそう。
非力な下僕でも刃物なら確実に殺せます。
さぁ処刑してきなさい!
5/26(土) 晴
血の付いたナイフ。狂気に満ちた目。「板倉さんを殺してきました。」
下僕はとうとうやりました。
私は感動のあまり震えました。背筋に電気のような刺激が走り、身体が火照りました。
これ以上ない快感です。今日ばかりは下僕を褒め称えました。
最高の気分です。
5/27(日) 雨
昨日は興奮してあまり眠れませんでした。
今もまだ感動の余韻は残ってます。でもずっと浸ってるわけにはいかない。
この調子でどんどん処刑していきましょう。
これまでくすぶってた分を一気に取り返さないと。
みんな殺しまくりましょう。
第34週
5/28(月) 晴
忠実な下僕に岡部先生と田村さんのどちらを殺したいか聞きました。
下僕は「岡部先生がいいです。」と即答してました。
私はにっこり笑って「田村さんを殺しなさい。」と言いました。
下僕の顔が少し曇ったけど「わかりました。」と素直に従いました。
いい子です。
5/29(火) 晴
田村さんはそらら辺でしょっちゅうウロチョロしてるからすぐに殺せると思ったけど
下僕はなぜか渋ってました。早くやりなさいとせかしても
「人の目があるから難しいんです。」などと口答えしてきます。
捕まるのは下僕だけで私は無実だから全然平気なのに。
わかってないんでしょうか。
5/30(水) 雨
下僕が蛆虫とずっと一緒にいたので殺す機会をうかがってるんだと思ったら
今日は吉報は届きませんでした。呆れてしまいます。
また「チャンスが無かった。」と。いつまでくだらない言い訳を続けるんでしょうか。
放課後にムチ打ちの儀式をしてると廊下側の窓から蛆虫が覗いてるのが見えました。
私はこれ見よがしにムチを震いました。蛆虫。次はあなたの番よ。
蛆虫は青い顔して逃げていきました。下僕も蛆虫に気付いてたらしく
恨めしそうに蛆虫の背中を見つめてました。
あなたがさっさとやらないからいけないのよ。
5/31(木) 曇
なんだか下僕の態度が生意気です。
今日も処刑を怠ってたので腕に失格の烙印を鉛筆で刻んでると
歯を食いしばりながら「あなたが自分でやればいいじゃない。」などとほざきました。
そんなことしたら私が捕まってしまうじゃない。そんなこともわからないの?
鉛筆を突き立てると下僕は小さな悲鳴を上げました。
そして私は言いました。「今週中にやらなきゃあなたを処刑します。」
最後通告です。
6/1(金) 曇
能無を刺したナイフを磨きながら、下僕が思い詰めた顔をしてました。
「明日まで待って下さい。土曜の放課後なら人も少ないから絶対できますから。」
昨日の脅しが効いたようです。明日やらなかったら私は本当に許しません。
死体も捨てちゃえば捕まりっこないわ。下僕も能無を殺したのにまだ捕まってないし。
いすれにしろ明日が楽しみです。
6/2(土) 晴
信じられないことが起きました。
放課後になっても下僕はボケっと宙を見つめたまま座り込んでました。
私が「早く蛆虫を殺しに行きなさいよ。」と言うと下僕は視線を動かさずに呟きました。
「気が変わりました。」
言ってる意味がよくわからなかったので詰め寄ると、下僕は初めて私と目を合わせました。
「次のターゲットはあなたにしようと思うの。いいでしょ?処刑人さん。」
私は逃げました。
6/3(日) 晴
思わぬ下克上です。下僕が私に反抗するなんて・・!
ただ、あの子はわかってない。私こそが処刑人だということを。
こうなったらなったで、下僕計画を終えて普通にみんな処刑してまわるだけの話です。
下僕が主人に勝てるわけないじゃない。
返り討ちにしてあげる。
第35週
6/4(月) 曇
下僕はなかなか図太い神経をしてます。
ちゃんと学校に来てる。虚ろな目をしてこっちを見てる。
私を刺す機会を伺ってるんだわ。来るなら来なさい。
警戒してたおかげで今日は襲ってきませんでした。
いつでもいいのに。
6/5(火) 雨
蛆虫が下僕を連れていきました。私の方をチラチラ見ながら。
なるほど。二人共ぐるだったのね。だからあんな生意気なこと言ったのね。
二人がかりなら私に勝てると思ったのね。
甘すぎるわ。
6/6(水) 雨
二人同時に襲ってきてもいいように迎撃体制も整えました。
雑誌を服の中に仕込んだからお腹を刺されても大丈夫。
文房具屋で分厚いカッターも買ってきました。ヘタなナイフよりよく切れそう。
申し分ありません。
6/7(木) 雨
せっかく準備をしたのに奴らはなかなかやってきません。
せせこましく外でなにやら話をしてるだけです。
私が近づくとわざとらしく奥へ引っ込んでいきます。
段々腹が立ってきました。
6/8(金) 曇
もう我慢できない。来ないならこっちからやってあげる。
ヘタに趣向を凝らすのはもうやめます。処刑人自ら処刑を決行。
あるべきスタイルに戻るだけ。
二人まとめて処刑します。
6/9(土) 晴
チキチキとカッターの刃を押し出す。下僕がその音に気付く。
他には誰もいない放課後の教室。下僕はごそごそとポケットからナイフを取り出す。
目は虚ろだけど口元は笑ってる。あの子はやる気でした。
スタスタを近づいていく。下僕は席を立った。私は手元にあった誰かの鞄を掴み、投げつけた。
一瞬ひるんだ下僕。そのスキに首をめがけてカッターを突き出しました。
絶望的な表情をする下僕の顔が忘れられません。
カッターは、彼女の首筋の1センチほど手前で止まってました。
蛆虫が普通に教室に入ってきました。私たちの様子を見て愕然としてました。
「やめて!」そう叫んで大急ぎで下僕を連れ去っていきました。
下僕の顔は固まったまま。私の腕も止まったまま。
黙って二人が消えるのを見つめてました。
6/10(日) 曇
ずっと自分の手を眺めてました。
なぜ昨日、この手は止まったんでしょう。
どうして殺すことを躊躇したんでしょう。あれだけ殺意を込めてたのに。
もう少し押し出すだけで、刺せたのに。私は処刑人なのに。
自分が見えない。
第36週
6/11(月) 晴
細江さんは普通に学校に来てます。
休み時間にも田村さんが何度もやってきて細江さんが一人きりにならないようにしてました。
二人とも私を睨んでます。私を狙ってるんでしょうか。
まだ返り討ちの体制は整ったまま。
大丈夫。
6/12(火) 晴
もう細江さんを下僕として扱えなくなりました。
放課後はすぐに蛆虫田村さんに連れて行かれるからです。
みんながいる前でビシビシやっても構わないんだけど
あまりそんな気分にはなりませんでした。
6/13(水) 曇
細江さんの首に刺さる予定だったカッターの刃。
赤く染まったらさぞ綺麗に光ることでしょう。
だけどまだ血を吸ったことがない。ポケットの中でチキチキ音を立ててるだけ。
元下僕と蛆虫さんは私と目さえ合わせようとしなくなりました。
私は一人でカッターの刃を眺めてる。
6/14(木) 雨
あの二人は前以上に私を警戒して全く近づいてきません。
せっかくの迎撃準備も無駄になってしまいそうです。
こっちから攻めるべき。でもまた手が止まってしまったら・・?
6/15(金) 雨
どうも私は自信を失ってるような気がします。
細江さんを刺せなかった。それが妙に引っかかる。
処刑のできない処刑人・・・・・。
このままではいけません。
6/16(土) 曇
一日中自分に言い聞かせてました。
私は処刑人。私は処刑人。私は処刑人。
処刑とは殺すこと。殺してこその処刑人。私がその処刑人。
私は間違いなく処刑人。のはず。
6/17(日) 晴
私が処刑人であることあることを実証しなければなりません。
とにかく誰かを処刑する。姿の見える人。そして、確実に殺せる人。
岡部先生や牧原さんのように雲隠れしてなくて、下僕みたいに抵抗しない人。
田村さん。この人がいいわ。
第37週
6/18(月) 晴
今回のターゲットは自分で決めました。だからネットで報告はしません。
正直、ネットに書き込むのすら恥ずかしいです。
誰も処刑できてないから一人殺すことにします、とでも書けと?
全員殺さなければならないのに。
6/19(火) 曇
確実に殺さなければならない。
思った以上に自分が慎重になってるのがわかります。
ターゲットを見据えて気を静めてました。
そう。人を殺すには慎重になるべきなんです。
焦ってはいけない。
6/20(水) 雨
ターゲットの蛆虫さんは元下僕に付き添うために私の教室によく来ます。
あっちはまだ元下僕を狙ってると思ってるんでしょう。
狙いが自分に向いたことも知らずに。
哀れなものだわ。
6/23(木) 曇
ここ数日大人しくしてたせいか、二人は段々図々しくなってきてます。
なるべく私から距離をとるようにしてたくせに
今日なんかは堂々と目の前を通っていきました。
蛆虫さんのわざとらしい明るい声と元下僕の気の抜けた声。
耳障りだったのでで机の下でカッターをチキチキ鳴らして
そっちの音に集中しました。
6/22(金) 晴
大人しくしてるのは今日までです。
放課後はいつも蛆虫が元下僕をさっさと連れて帰ってるんですが
今日に限って真面目に教室の掃除をやってました。
蛆虫は他のクラスのくせに手伝ってモップ掛けなんかしてやがります。
しかも私の席の方まで来て黙って座ってる私の足にモップが触れて上履きが濡れたのに謝りもせずにそのまま掃除を続けてました。
舐めてます。殺すしかありません。
6/23(土) 曇
私の手は本当にどうしてしまったんでしょう。
カッターを首筋に当てることまではできる。でもそれから張り付いたように動かない。
蛆虫哀れな泣き顔。耳障りな高い声。
「私もあなたの言うとおりにするから。だから殺さないで!」
うるさい。だけど殺せない。
少し力を加えるだけで皮膚を破れるのに。浮き出た血管を刃の先端で突っつくだけで済むのに。
突き飛ばすだけで終わってしまいました。
6/24(日) 晴
蛆虫は今までで一番弱いターゲットでした。
殺すのなんて簡単です。別に人を殺すのに罪悪感を感じてるわけじゃありません。
ましてや警察に捕まるとか家族に迷惑かけるとかそんなこと欠片も思ってません。
捕まらないようにはするつもりですが、仮に捕まったとしてもどうでもいいんです。
なのに、殺せない。
第38週
6/25(月) 晴
田村さんは本当に蛆虫です。
「細江さんより役に立つようにするから。」と言って媚びてきます。
私が無視しても愛想笑いばかり浮かべて周りをうろちょろしてます。
ウザイです。
6/26(火) 晴
細江さんは田村さんが私の側をうろつくようになっても何も言いません。
ボケっとうつろな目でこっちの様子を見てるだけです。
たまにニヤけたりもします。
おかしいです。
6/27(水) 晴
蛆虫さんがうるさくて仕方ありません。
私の機嫌をとろうと余計なおしゃべりばかりしています。
私がちょっとでも動くとびくっとしてしばらく黙ってから
何もされないのがわかると安心してまたしゃべり始めます。
「ネットで面白いサイトを見つけたの。」とか「最近携帯にイタズラメール多いよね。」とか。
興味ありません。
6/28(木) 曇
蛆虫にまとわりつかれるのはもう嫌です。さっさと命令を下しました。
「岡部先生を殺してきなさい。」と。
蛆虫はちょっと言葉を失ってたけどすぐに「わかりました。」と頷いてました。
こんな役立たずに人を殺す度胸なんてあるんでしょうか。
細江さんが板倉さんを殺すのにだって一週間くらいかかったのに。
ただでさえ姿をくらましてるんだから蛆虫なんかにできるわけありません。
絶対無理。
6/29(金) 晴
おかしなことが起きました。
蛆虫が岡部先生を殺してきたと言うんです。
「ほら、岡部先生を殺してきたわ!」と言ってごそごそと鞄からビニール袋を取り出してその中には血の付いたナイフが入っててそれで岡部先生を刺したと言ってます。
私は信じられませんでした。蛆虫ごときが人を殺せるなんて。
あり得ない。そんなことできるわけない。
そう思ってナイフを手にとってよく見てみました。確かに赤い液体が付いてる。
舐めてみました。絵の具の味がしました。
死体をどこに捨てたか案内するように言うと、蛆虫は泣きながら土下座してました。
嘘付かれた。あまりのことに私は怒ることすら忘れてしまいました。
信じられない。
6/30(土) 雨
よくよく考えてみると、板倉さんの時も同じ様な感じでした。
ナイフだけ見せて死体は無い。細江さんも嘘をついていたんだわ。
殺してない。板倉さんも岡部先生も牧原さんと一緒にまだ逃げてるんだわ。
蛆虫田村は学校を休みました。下僕細江も休んでます。
あの二人、許せません。私を騙した。私は処刑人なのに。
騙しやがった。
7/1(日) 晴
殺す。殺す。みんな殺す。
殺さねばなりません。私は処刑人だから。処刑人はターゲットを処刑しなければならない。
処刑。つまり殺すこと。ああ、でもなぜこんなことを?
いやそんなことはどうでもいいわ。
とにかく殺さなければならないんです。
第39週
7/2(月) 晴
二人共学校に来ない。
構わない。家に押し掛けて殺してやる。
まずは細江さんを刺す。その足で田村さんの家へ。
住所も知ってる。カッターの準備もした。警察に捕まろうが構わない。
私を侮辱した者タチに罰を。処刑を。
しなければならないのに・・
7/3(火) 晴
気が狂いそうです。足が動かない。
細江さんの家に行けない。順番を変えて田村さんから殺そうと思っても同じ。
私の中の何かが、足を止めてる。人殺しにならないようにするために?
処刑人なのに?牧原さんも岡部先生も板倉さんも私が殺したのに?
そんな記憶あったっけ?殺した?私が?あの三人はまだ逃げてるんじゃ?
そもそもなんで私が処刑人なの?
人殺しの経験なんてあった・・・・?
頭が混乱して記憶がうまく繋がりません。自分が何をしたいのかもよくわからない。
辛うじてできたことと言えば、二人を学校に呼ぶことでした。
明日、学校に来るように。電話でそう伝えると細江さんは「はい。」と素直に返事してました。
田村さんは親が出たので「大事なプリントを渡さなきゃいけないので、明日来れないようなら私がそちらに伺います。」と言っておきました。
明日が勝負です。
7/4(水) 晴
二人とも学校に来ました。
細江さんは虚ろな目をしながら。田村さんは震えながら。
そして私は・・・今度は手が動かなくなりました。
放課後。私は二人を呼び出すだけ呼びだしておいて処刑できませんでした。
私は呆けたまま教室を出ていきました。
帰り際、振り返って二人に言いました。
「明日までに二人で殺し合いなさい。生き残った方だけ許してあげます。」
カッターを床に放り投げておきました。
もうどうなろうと知らない。
7/5(木) 晴
二人とも生きてました。
ただ、細江さんの腕には包帯が巻かれてました。
席に座って一人でブツブツ言ってます。
近づいて聞いてみると、意味のわからないことを言ってました。
「ねぇキクちゃん。あなたの言うネットからの援軍はいつになったら来てくれるの?」
「私はね。それを信じて耐えてたの。ずっと待ってたの。なんで断ったのよ。」
「やっぱり信用できないなんて。勝手に判断しないでよ。耐えてたのは私なのよ。」
ずっと空中に向かって呟いてました。
田村さんは、私が廊下を歩いてると向こうからやってきました。
「昨日はあれから人が来ちゃったから。今度止めを刺すから。もうちょっとだけ待って。」
愛想笑いをしながら必至に言い訳してました。
無視しました。
7/6(金) 晴
夕方の学校。そこは地獄絵図でした。
田村さんが「ごめんなさい!ごめんなさい!」と泣き叫びながら廊下を走ってます。
手にはカッターを持ってました。少し血が付いてます。
私は帰ろうと思ってたんですが、気になって教室に戻りました。
教室の周りにはみんながたかって中を覗き込んでました。
私もその群衆に加わって中を見ました。
そこでは、細江さんが発狂してました。
椅子を掴んでは投げてみたり。奇声を発したり。チョークを食べたり。
ほっぺたには切り傷があってだらりと血を垂らしてました。
ロッカーにガンガンと頭をぶつけてます。
何発目かで気を失い、それで騒ぎが終わりました。
私の中で何かが急激に醒めていきました。
私は、こんなことを望んでたの?
7/7(土) 曇
細江さんが入院したそうです。もちろん頭の病院です。
先生は現代人のストレスだとか何とか偉そうなことを言ってました。
それでこの件は終了。みんなも何事も無かったように普通にしてました。
田村さん以外は。隣の教室に様子を見に行くと、彼女は青い顔してガタガタ震えてました。
私と目が合うと頭を抱えて顔を伏せてしまいました。
別に何もしないのに。彼女は怯え続けます。
そう。私にはもう「処刑」しようなんて考えはありません。
そんな気は無くなってしまいました。
7/8(日) 晴
こんなに冷静になれたのはいつ以来でしょう?
牧原さんたちにイジメのターゲットにされてから、ずっと何かに追い詰められてきた気がします。
今は大丈夫。じっくりと自分の記憶を確かめることができます。
私には人を殺した記憶はありません。
牧原さんも、岡部先生も、板倉さんも、私が殺したわけじゃない。
でも私にはもう一つ人格があって・・それが「処刑人」で・・・?
それを信じてしまったから、何かがおかしくなったんです。
じゃぁ何で信じてしまったのか。
「お前が処刑人だ。」
もう携帯にあの時のメールは残ってない。
あのメール。あれが引き金となった。
けど待って。あれは、本当に私が自分で送ったの?
冷静になって。よく考えるのよ・・・!
第40週
7/9(月) 晴
携帯電話をいじくりまわしても何もわかりませんでした。
説明書も何度も何度も読み返しました。
やっぱり自分が自分に送らない限り、あんなメールは届かない。
でも私は認めないわ。何か別の方法が有るはずよ。
探して。
7/10(火) 晴
落ち着いて考えてみればおかしなことばかりです。
本当に私が人殺しならこんな悠長なことしてられるわけない。
記憶が飛んでたとしても、みんなは処刑人の人格になってる私の姿を見てるはず。
処刑人の幻想の中にいた私でなく、リアルな人殺しをした処刑人を。
それこそすぐに警察沙汰だわ。
一人きりの時にしか出てこない人格?そんな都合のいいことで人を殺せるの?
あり得ないわ。
7/11(水) 晴
どうしても方法がわからない。
他人が私のアドレスを勝手に名乗って使ってるかと思ったけど
携帯じゃそんな設定できません。メールを送ったら絶対自分のアドレスが出る。
携帯じゃ無理。携帯じゃ・・・
パソコンは?
7/12(木) 曇
放課後パソコンルームで自分にメールを送ってみようと思いました。
けど一つ問題が。私はパソコンでのメールのやり方を知らない。
授業で習った時、私のパソコンは牧原さんたちに占領されてたから・・!
結局知らないまま過ごしてた。メールは携帯でできたから必要も無かった。
パソコンでメール。そこだわ。そこしか考える余地はない。
そうよ。パソコンを使えば何でもできるはずだわ。
他人のフリしてメールを送ることだって。
できるはず・・でも・・どうやって・・・・
7/13(金) 晴
パソコンの本を立ち読みしてきました。
そして、あっけないほど簡単にタネが分かってしまいました。
メールの初期設定。そこで自分のアドレスを入力する欄がある。
疑って見てたから気付いた。もしそこに他人のアドレスを入力したら?
なんてことない。そこになりすましたい人のアドレスを入れていまえばいいんだわ。
例えそれが、携帯電話のアドレスであっても・・!
なぜこんな簡単なことに気付かなかったんでしょう。
いや、気付くわけなかったかも。
学校のパソコンでは一般的に使われてるメールソフトは使えない。
漫画喫茶だって使えない。家にパソコンが無かったから。
個人的に使えるパソコンが無かったから。
貧乏な家庭を恨みました。
7/14(土) 晴
パソコンが無いから実際に検証することはできないけど
何冊も本を読んで確信できました。
ネットの裏技とかそんな本に「お手軽騙り法」としてしっかり紹介されてた。
ちょっと手を加えれば今回のケースになる。
私のアドレスを名乗り、私にメールを送る。
そうすると私はそのメールに返信しても自分に戻ってきてしまう。
相手のアドレスは私のアドレスなんだから。
MLで処刑人の熱が高まった時、見事なタイミングでそのメールが来た。
だから私は混乱してしまった。既に死んだ人に対する復讐の幻想に取り憑かれた。
けどもう大丈夫。踊らされてたことに気付いたから。
そう。私は間違いなく処刑人じゃない。
私は岩本早紀。ハンドルネームはsakky。
それ以外何者でも無い。
7/15(日) 〜
私はずっと誰かに振り回されていました。
そしてその「誰か」は実際に存在する。「処刑人」のようにネットだけの噂じゃない。
私にトラップメールを送った誰かが。
その人が牧原さん、岡部先生、板倉さんを殺したの?それは誰?何のために?
MLもやめてから随分時間が経ってしまいました
関わった人はもういません。今更何も調べることができない。
けど、それでもいいんじゃないでしょうか。私は処刑人でない。それはハッキリしてる。ならそれでいいじゃない。「処刑」をする必要が無いのなら、何もしなきゃいいのよ。
牧原さんたちはもう私をイジメてこない。
そうよ。考えてみれば、私はもう何かに追われることは無いんだわ。
「誰か」が張った罠も、私が気付いてしまえばそれで終わり。
処刑人の幻想に振り回さなければ、元の生活に戻れる。イジメ抜きの状態で!
ああ。そう思うと随分気が楽になりました。精神的な重みが一気に外れた。
もしかしたら「誰か」は私が探すのを期待してるのかもしれない。
残念ながら、そんなことはしません。する理由がありません。動きたくないんです。
罠を張った誰かさん。知ってた?私は元々そうゆう人間なのよ?
あっちから何かしてこないんだったら、放っておくのが一番楽。
なんだか今までの疲れがどっと出てきました。私は休む。誰も私に手を出さないで。
一人にして。思い出したわ。私は孤独が好きだったのよ。
それを誰かに荒らされて。けどもう大丈夫よね。
もう何も知らない。
・・・知りたくもない。
→第3部<冤罪逃亡編>