第16週「天使」

12月11日 月ようび はれ・・
しゅじゅつはおわりました。いたみもありません。
でもこのからだのかるさはなんでしょう。ふわふわして、このままとんでいってしまいそうで・・・
ちからがはいらない

12月12日 火ようび くもり
村上さんは顔をあおくして「すぐにみんなよぶから。それまでがまんするのよ」といってました。
なんでそんなにあわててるんですか。ほかのみんなはわらってるのに。
わらってるのは、ぼくをふあんにさせないため・・?村上さんだけがほんとうのことをおしえてくれる。
ぼくはききました。「しゅじゅつはしっぱいしたの?」
「だいじょうぶよ。みんなよぶから。まめっちにもあいたいでしょ?あの人もよんであげるから。」
せいこうとはこたえてくれませんでした。

12月13日 水ようび はれ
まだだれもきません。からだはどんどんかるくなっていきます。
しぬ。
ぼくはさとりました。ぼくはしぬんだ。
このままみんなもまにあわず、ぼくはひとりでしんでいくんだ。
てんしがむかえにくるのかな。おそらのむこうにとべるかな。
ちゃんとてんごくいけるかな・・

12月14日 木ようび はれ
村上さんは言いました。「おわかれのときは、キスでおくりだしてあげる」
ぼくはかおがあかくなりました。村上さんのえがおがとてもきれいで・・
なんだろうこのきもち。むねがくるしくて、せつなくて。
ああ、そうか。そうだったんだ。
ぼくは村上さんのことが好きだったんだ。
きづいたときにはわらいそうになりました。
しぬちょくぜんにきづくなんて。
おそすぎるよ。

12月15日 金ようび かいせい
おむかえがきたようです
あたまのなかがまっしろになっていきます
これからぼくはたびだちます
村上さんと、おせわになったひとたちに
さいごのわかれをつげました
ありがとう・・・

12月16日 土ようび ひどい
まだいしきはありました。だけどあしたまではもたちません。しぶとくさいごのじかんをおしんでました。
あたまのなかはまっしろでしたが、なんとかまわりのはなしはききとれました。
だれかがぼくのなまえをよんでます。やさしい女の人のこえです。
・・・村上さん。村上さんが最後にはなしかけてくれてる。「なおや君。そのままでいいから。」村上さんがちかづいてきました。
「やくそくをまもりにきたから。めをつぶってて。」やくそく・・。おもいだしました。ぼくがなにかいおうとするまえに、村上さんが先にいいました。
「お別れのキスよ」ぼくはからだがかたくなりました。しにかけてたしんぞうがドキドキしはじめました。
村上さんのキス。しぬまえにさいこうのプレゼントです。ぼくはちからのかぎり目をぎゅっとつぶってまってました。
クスクスと「そんなにかたくならなくていいのよ」ときこえてきます。うん、とぼくは小さく答えました。
しばらくそのままのしせいでかたまってると、かおがちかづいてくるけはいをかんじてました。
いきがかおにかかります。村上さんお顔が目の前にあるんだ。いよいよしんぞうがドキドキいいはじめました。
あったかいきがかかりました。
つぎのしゅんかん、くちびるにやわらかいかんしょくが。やわらかい。からだはきんちょうのあまりうごきません。
ありったけのしんけいをくちびるにしゅうちゅうしました。とってもきもちいい・・
そう思ってると、くちのなかにちょっぴりヌルリとしたものがはいってきました。
まさか。じぶんのかおがまっかになるのがわかりました。村上さんの舌・・・
そんなだいたんな。ぼくがあせってるのもおかまいなしに、村上さんははげしくぼくのしたをすいました。
うわ。どうしよう。これがオトナのキスなんだ・・・!ぼくはしょうてんすんぜんでした。
なおも村上さんのしたがせめてきます。そんな。村上さん。そこまでされるとぼくは・・・ああ・・・
せめられるままにみをまかせ、ぼくはそのかいらくにひたりました。村上さんのいきづかいもあらくなってきます。
ふぅふぅと、あらいはないきがかおにかかってきます。ちょっぴりいきがくるしくなってきました。
村上さん。そこまでしてくれるのはうれしいけどこれ以上は・・・
したをすうのもじんじょうじゃなくなってきました。ほんきでいきがやばいです。いきができません。
村上さん、そろそろ・・・
くちはかんぜんいふさがれてます。なにも言えない。くるしいです。村上さん。もういいです。
じゅうぶんたんのうしました。だからそろそろくちびるはなしてください。
村上さん。村上さん・・・!
がまんしきれず目をあけました。

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