絶望世界 もうひとつの私日記

第15週


1/15(月) 曇
他の二人は少し引き気味でしたが、板倉さんは楽しげに私の手の平をシャーペンで何度も何度も刺しました。
「ほら処刑人さん。私を殺してみなさいよ。やれるもんならやってみなさいよ!」
激痛に涙をこぼしながら、私は祈りました。
死ね。


1/16(火) 晴
お父さんは私が手の傷の手当をしてても何も言いませんでした。
私が部屋に戻ろうとした時、初めて口を開きました。目も合わさずに。
「自首しねぇからやられるんだろ。」
父親の発言じゃありません。私はこれでハッキリと自覚しました。
こんな家、居たくない。


1/17(水) 晴
板倉さんが私の爪をはがそうとするのには、さすがに二人も止めました。
細江さんは「そこまでする必要は無いんじゃないの?」となだめてましたが
板倉さんは「こいつは危険なのよ。徹底的にやらなきゃダメなのよ!」と叫んでました。それで私は思いました。
この人、私を恐れてる。


1/18(木) 晴
板倉さんが「顔に硫酸かけましょう。」と騒いでも、田村さんと細江さんは顔を見合わせるばかりでした。
怖いのね。板倉さん。牧原さん、岡部先生に続いて自分もやられるのが怖いんでしょ。
でも無駄。もう遅い。それに私を攻めても意味無いのよ。何を勘違いしてるんだか。
処刑人は、私じゃないのよ。


1/19(金) 曇
私は処刑人を呼びました。放課後パソコンルームに行って、例のページにアクセス。
「あたなに合ったメル友探し!」
このMLコーナーで「地域限定メーリングリスト」を見つけた。
今覚えば彼女たちは私のパソコンを愛用してたんだから、私がここにアクセスしてしまったことは不思議じゃない。ああ、そういえば牧原さんに一度携帯も奪われた。それで気づいたんでしょうか。もうそんなことどうでもいいけど。
パソコンの画面に向かって祈りました。
処刑人。板倉さんを殺して。


1/20(土) 雪
板倉さんの死を聞いた時、私は細江さんと田村さんを見ました。
二人は私を怯えた目で見てきます。以前謝ってきた時よりも、はるかに青い顔をして。
学校からの帰り道、私は思いっきり声を出して笑いました。
いつまでも笑ってました。


1/21(日) 晴
処刑人からMLあてにメールです。
「メリルの処刑完了。とうとう残り一人だ。いつでもどうぞ!」
それを見てクスクスと笑いました。勝手に言ってなさい。あなたはもう用済みです。
私はこれからダグラスさんと一緒に誰も知らない所へ逃げます。
邪魔者は全て消えたから。家にも未練はありません。
新しい世界で生きていこうと思います。
後のことなど、知りません。


第16週