絶望世界 もうひとつの私日記

第37週


6/18(月) 晴
今回のターゲットは自分で決めました。だからネットで報告はしません。
正直、ネットに書き込むのすら恥ずかしいです。
誰も処刑できてないから一人殺すことにします、とでも書けと?
全員殺さなければならないのに。


6/19(火) 曇
確実に殺さなければならない。
思った以上に自分が慎重になってるのがわかります。
ターゲットを見据えて気を静めてました。
そう。人を殺すには慎重になるべきなんです。
焦ってはいけない。


6/20(水) 雨
ターゲットの蛆虫さんは元下僕に付き添うために私の教室によく来ます。
あっちはまだ元下僕を狙ってると思ってるんでしょう。
狙いが自分に向いたことも知らずに。
哀れなものだわ。


6/23(木) 曇
ここ数日大人しくしてたせいか、二人は段々図々しくなってきてます。
なるべく私から距離をとるようにしてたくせに
今日なんかは堂々と目の前を通っていきました。
蛆虫さんのわざとらしい明るい声と元下僕の気の抜けた声。
耳障りだったのでで机の下でカッターをチキチキ鳴らして
そっちの音に集中しました。


6/22(金) 晴
大人しくしてるのは今日までです。
放課後はいつも蛆虫が元下僕をさっさと連れて帰ってるんですが
今日に限って真面目に教室の掃除をやってました。
蛆虫は他のクラスのくせに手伝ってモップ掛けなんかしてやがります。
しかも私の席の方まで来て黙って座ってる私の足にモップが触れて上履きが濡れたのに謝りもせずにそのまま掃除を続けてました。
舐めてます。殺すしかありません。


6/23(土) 曇
私の手は本当にどうしてしまったんでしょう。
カッターを首筋に当てることまではできる。でもそれから張り付いたように動かない。
蛆虫哀れな泣き顔。耳障りな高い声。
「私もあなたの言うとおりにするから。だから殺さないで!」
うるさい。だけど殺せない。
少し力を加えるだけで皮膚を破れるのに。浮き出た血管を刃の先端で突っつくだけで済むのに。
突き飛ばすだけで終わってしまいました。


6/24(日) 晴
蛆虫は今までで一番弱いターゲットでした。
殺すのなんて簡単です。別に人を殺すのに罪悪感を感じてるわけじゃありません。
ましてや警察に捕まるとか家族に迷惑かけるとかそんなこと欠片も思ってません。
捕まらないようにはするつもりですが、仮に捕まったとしてもどうでもいいんです。
なのに、殺せない。


第38週