絶望世界 もうひとつの私日記

第22週


3/11(月) 晴
自転車で遊びに行ってたお兄ちゃんが、学校帰りに私を駅から乗せてくれました。
今度原付を買おうか迷ってるとか言ってます。私も「あったら便利だね」と答えました。普通の会話。
普通の兄妹。


3/12(火) 晴
携帯が鳴る。遠藤さんから何度も。非通知でも来た。
とれませんでした。勇気がないんでしょうか。電話だからでしょうか。
今でも決意は変わらない。流れに身を任せるつもり。
来たらきっと行くでしょう。面と向かって誘われたら断らない。
でも来ない。誰も直接来てくれない。


3/13(水) 曇
携帯が壊れました。
お兄ちゃんがイタズラで「着信履歴見せろよ。」と携帯を奪った時でした。
私は取り返そうとしました。遠藤さんからの着信を見られるのが嫌だったから。
「こいつ誰?」と聞かれるのが嫌だった。友達と答えれば済むことなのに。
それを言うのが嫌でした。
もみ合ってるうちに携帯が割れてしまいました。そんなに力を入れたつもりは無かったのに。
お兄ちゃんは青ざめて必死に謝ってました。
明日弁償してくれるそうです。


3/14(木) 雨
新品の携帯。お兄ちゃんの予算の関係で新規での購入です。機種変更だと高いから。
番号が変わることに抵抗はありました。今まで番号教えた人と連絡とれなくなるから。
でもお兄ちゃんの一言で考えが改まりました。
「友達に新しい番号教えてあげれば済むことだろ。」
友達・・・いないからいいや。
新しい番号。誰にも教えません。


3/15(金) 晴
こうなることくらい簡単に予想できたはずです。
携帯の番号が変わった。遠藤さんは知らない。
だから私と連絡取るには、直接会いに来るしかない。
遠藤さんが私の前に現れたのは当然でした。
私に声をかけてくる。遠藤さんがあの言葉を口走る。
「処刑人」
やっぱりそうなんですね。あなた達は、私に罰を与えに来た。
もう覚悟は決まってました。好きなようにして下さい。罰はちゃんと受けますから。
・・・そのつもりだったのに。
お兄ちゃんが隣にいました。お兄ちゃんは遠藤さんに向かって言いました。
「お前、頭おかしいんじゃねぇか!!」
そして遠藤さんを殴り倒しました。やっつけた後、変質者として警察に連れていきました。
怒ってるお兄ちゃんを見て私は思いました。
ああ・・普通に反応したらそうなるよね・・・。


3/16(土) 晴
普通の人がそばに居ると、これまでのことが夢だったようにも思えます。
私がしてきたことも、されてきたことも。
誰かを傷つけたなんて思えない。誰かが死んだなんて思えない。
でも昨日、遠藤さんは間違いなく言った。「処刑人」と。
この言葉は忘れられない。とても非現実的な言葉だけど。
確かに言ってた・・よね?


3/17(日) 晴
秋山君が家に来ました。声で気付きました。玄関から秋山君の声が。
お兄ちゃんが対応してます。口論してます。お兄ちゃんが追い返したんです。
秋山君駄目だよ。もっと頑張らなきゃ。ここまで来たんだから。後少しだよ!
声がやみました。窓から外を見ると慌てて帰る秋山君の背中が見えました。
秋山君が帰っていく。私のところまで来れずに。諦めて・・・
私は何を望んでるんでしょうか。


第23週