絶望世界 もうひとつの私日記

第25週


4/1(月) 晴
田村さんの家に行くのに気兼ねする必要はありません。
お料理教室をしてた時に散々行ったから。
けど考えてみれば田村さんの親と顔を合わせたことはありませんでした。
今日会いました。玄関で。
「喜久子は今出かけてる。」とのことでした。
ここでも弾かれた。


4/2(火) 曇
お兄ちゃんに会って「普通の人」の感覚を少し理解した気がしてました。
でも私には自分の行動がどっち側のものなのか相変わらずわからないでいます。
家の近くで田村さんの帰宅を待つのはどっちなんだろう。
「今日も出かけてる。」と言われたから待ってるだけ。それだけなんだけど。
夜になっても帰ってこなかった。でもそれは当然の話。
田村さんの部屋の電気はずっとついてたから。


4/3(水) 曇
遠藤さん達はもう二度と来ないでしょう。
家に居ても来てくれない。外に出て動き回っても会えない。
ふと思うこともあります。あっちが相手にしてくれないなら、もういいんじゃないかと。今のところ生活に支障はない。追ってくる人がいなければ逃げる必要もない。
けどそのたびに思い直します。それは違うと。
ここまで知った以上、何もなかったことになんてできないよ。
だから田村さん。返事をして。
部屋に明かりがついてるのが見えてるんだから。
私はこんなに大声で叫んでるのに。
あなたのお母さんが「また今度来てね。」と苦笑しながら出てきても叫び続けてるのに。
悲しいよ。


4/4(木) 晴
家に行くのも4日目。とうとう捕まえることができました。
今日は本当に出かけるようです。玄関から出ると田村さんは早足で駅へ向かっていきました。
私は必死に呼び止めました。「田村さん、待って!」
彼女は逃げました。走って。叫んで。「来ないで。」と。
一度だけ振り向いたけど、その顔は怯えきって青ざめていました。
その姿を見るとそれ以上追えなくなりました。
足が止まり、遠のく田村さんの背中を見つめることしか出来ませんでした。
私は思いました。
自分はとても悪いことをしてるんだと。


4/5(金) 曇
もう諦めた方がいいのかもしれない。
最悪の事態を改善しようと思ったけど無理でした。
どんな努力をしても改善できないから「最悪の事態。」と言うんだよね。
だからもう無駄な努力はやめた方がいい。
相手に嫌な思いをさせるだけだから。


4/6(土) 晴
留守電でもいいからせめて一言だけでも謝っておこう。
そう思って電話をかけました。そうしたら・・・・繋がりました。
予想もしなかったことだったので私は戸惑ってしまい、用意してたこととは別の質問をしてしまいました。
「ねぇ田村さん。強力な味方って、誰なの?」
田村さんはすぐに答えました。
「奥田さんよ。私はあの人に守ってもらってんだから。私を殺そうとするなら無駄よ。逆に奥田さんがあなたを殺すわ。」
「待って!誤解よ。私はあなたを殺そうなんて思ってない!」
「嘘ばっかり。」
「嘘じゃない!だって・・・友達だから!」
「嘘ばっかり。」
「お願い話を聞いてよ。私のこと、処刑人だと思ってるでしょ?私それでもいいから。聞いて。私もう処刑になんかしない。それに罪も償うから。私に罰を与えたいなら、していいから。」
「嘘ばっかり。」
「嘘じゃないのに・・・。」
「それこそ、嘘よ。」
もう駄目だと思いました。
かつての友人はその面影を無くし、ただ私を悲しませるだけの存在へと成り果てました。最後に一つだけ質問をしました。もはや状況を変えることはできないから、今一番知っておきたいことを聞きました。
「ねぇ。奥田さんって誰なの?」
「あなたに知る権利なんてないわ。」
そこで電話を切られました。
まだ新しい携帯電話から「ツー」と電子音が流れています。
途切れることなく、ずっと。


4/7(日)
友人がいたあの時期は単なる幻想だった。本当は誰も許してはくれてなった。
そしてこの先も許されることはない。
ずっと嫌われ、誤解されたまま生きていく。
友人と楽しい時間を過ごしたことのある私には、どうも我慢できそうにありません。
例え幻だったそても、あのひと時は体にしっかりと刻み込まれてしまってます。
だから余計に苦しい。取り戻せないとわかってるから。
罰を受けたいのに誰も裁いてくれない。だから永遠に許されない。
それでも許されたいなら・・・・どうしたらいいんだろう?
誰か教えて下さい。


第26週