絶望世界 もうひとつの私日記

第27週


4/15(月) 曇
狂気の中にいた時は賑わってたメールも今では全く届かなくなりました。
誰もが興味を失ってしまったんでしょう。所詮は一時のものでした。
それが今日、久々にメールが届きました。
たった一行「また泣いてるんだね。」と。
なぜわかるの。


4/16(火) 晴
「あなたは誰?」
返信したらちゃんと送れました。私のアドレスで送ってきたものではありません。
午後の授業中、返事が来ました。
こっそり見るとまた一行「前はよく話したじゃないか。」とありました。
「それだけじゃわからない。」
返信したけどもう返事は来ませんでした。


4/17(水) 曇
一日たっても返事が来ないのでまたメールを送りました。
「遠藤さんですか?でなきゃ秋山君?それともまた別のお仲間さん?」
今度はすぐに返事が来ました。
「あんな連中と一緒にしないでくれ。」
すぐさま返信メールを送りました。
「それなら誰?私を知ってるの?なぜ泣いてるとわかったの?」
その後すぐに追加で送りました。「すぐに返事を下さい。」
携帯は沈黙したままでした。


4/18(木) 曇
朝起きるとメール着信のランプがついてました。
「返事を焦らないで。ゆっくりやろうよ。」
無茶です。名乗りもしない相手に行動を見透かされてる。そんな状況でゆっくりだなんて。
私は何通も送りました。
「処刑ターゲットの募集に応募してた人?」
「あなたも処刑人を追ってる人?」
「私に罰を与えてくれるの?」
何も答えてくれませんでした。


4/19(金) 晴
授業など今の私には何の意味もありません。
頭の中ではメールの相手のことでいっぱいでした。
学校で机に座って鉛筆を握ってるこの姿でさえ、その人には見えてるのでしょうか。
学校から帰る時もキョロキョロと周りを見渡しながら歩きましたが、誰も私を見てはいませんでした。
メールはまだ来ない。


4/20(土) 晴
私はメールを送り続けました。
「現実の私を知ってるんですか?」
「実際に会ったことある人ですか?」
「なぜメールをくれたんですか?」
「お願いです。返事を下さい!」
飼い主を改札の前で待つ犬のように、私は携帯の前に座り込んで返事を待っていました。
待つことが私の義務なんだと思いました。


4/21(日) 雨
メール着信音が胸に心地よく響きました。
急がなくてもメールは逃げません。なのになぜか焦ってしまいメールボタンを押すのに手間取りまってしまいました。
メールを開く。小さな画面に現れるこのわずかな文字を、私は楽しみに待ってました。
「君は生き残った。狂気に飲み込まれてもそこから這い上がり、裏切られても絶望せず、全てに耐え抜いた。それを誉めたかったんだ。」
私は返事を書きました。
「耐えてない。全然耐え切れてない。」
一分も経たないうちにまたメールが届きました。
「わかってる。でも、凄い。とても凄いことなんだよ。」
凄くなんてない。
そう呟きながらも、私の口元には笑みが浮かんでました。


第28週