絶望世界 もうひとつの私日記

第29週


4/29(月) 晴
今日の真・処刑人は少し饒舌でした。
「怒ってないの?」
「ずっと恨んでた。でももう怒ってない。怒ったところでなんにもならないから。」
「大人になったね。」
「なってないよ。」
「なってるよ。君はもう恨みを人にぶつけたりはしない。」
「ぶつける相手がいないだけだよ。」
「なるほど。」
「処刑しない処刑人なんて変かな。」
彼はまた黙り込んでしまいました。


4/30(火) 曇
「あなた自身は誰か処刑したの?」
このメールには返事が返ってきました。
「したよ。女の子を二人。男を一人。」
私が「処刑」したのは細江さんと田村さんだから・・
数が合ってる。


5/1(水) 雨
学校に行ってもただ過ごすだけ。
冷静に世間と自分に境界線を引くことができるようになりました。
カザミと名乗る真・処刑人は、どこか別世界にいるような感じがします。
その彼とメール越しに交流する私もまた、世間とは離れたところにいます。


5/2(木) 曇
「君には全部話さなきゃいけないね。」
「うん。話して欲しい。」
「ここに来るまでに随分色んなことが起きた。それを全部説明するのは長くなるし、とても難しい。」
「それでも知りたい。」
「どうしても?」
「どうしても。」
もう私には怒りや憎しみなどの感情は無く、単純に「知りたい」という思いしかありません。
彼にもそれはわかってると思います。


5/3(金) 晴
ゴールデンウィークがなんて私には関係ありません。
今の私の生きがいは、携帯でメールをすることだけ。
「あなたは今、どこにいるの?」
「まだ言えない。でも決して遠いわけじゃない。」
「近くにいるの?」
「ある意味、ね。会おうと思えばいつでも会える。」
「じゃあ会いましょう。」
返事はまだ来ません。


5/4(土) 晴
私は再度送りました。
「会いたいです。」
この一言に私の気持ちが全て詰まってる。
復讐なんて考えてない。
本当に、会いたいだけだから。


5/5(日) 晴
「いいよ。今度会おう。」
私は飛び上がるほど喜びました。
「ありがとう。」
本来なら感謝する必要なんてないのかもしれない。
むしろ私は被害者で、「出て来い。」と言える立場なのかも。
そんなこと、もう関係ないけどね。


第30週