絶望の世界∀ −もうひとつの私日記−
第30週
5/6(月) 曇
相手がどんな人か想像してみました。
口調は男性だけど、今更それが本当に男だとは思えない。
遠藤さんみたいな見た目がソレ系の人なのか、秋山君みたいにまだそんなに年がいってない人なのか。
それとも田村さんのように普通の女子高生みたいな人か。
もっと年上かもしれない。普通に働いてるような人かも。ひきこもりみたいな人かも。
想像は広がるだけ広がってまとまりませんでした。
5/7(火) 晴
田村さんに何か話してあげようかと思ったけど、最近全く見なくなりました。
どうも彼女はもう学校には来てないようです。
私には他に学校で話せる人はいないから、それ以上探ることはできません。
5/8(水) 曇
「いつがいい?」
「いつでもいいよ。」
「学校が休みの日にあわせなきゃね。」
「そんなの今更どうでもいいよ。」
「学校は行っておいた方がいいよ。普通の生活を止めた時点で現実へは戻れなくなる。」
「処刑人になってた私がいい例?」
「そう、その通り。君は奇跡的に戻ってきたけど、致命的に戻れなくなった人だっているんだ。」
「私ってすごいんだね。」
「すごいよ。ところで今週の土曜日はどう?学校終わったら。」
「それでいいよ。」
土曜日に決まりました。
5/9(木) 曇
会う前に聞きたいことを先に聞いてみました。
「田村喜久子さんって知ってる?」
「知ってる。」
「遠藤って人とか秋山って人は?」
「知ってる。間接的にだけどね。たぶん君が関わった人間は全て知ってると思う。」
「すごい。全部裏で糸を引いてたんだね。ある意味尊敬。」
「そこまでしてないよ。まぁいずれわかるよ。」
「土曜日が楽しみ。」
「土曜日か。そうだった。」
「忘れてたの?昨日決めたばっかなのに。」
「いや、そうゆうわけじゃないけど・・・ちょっとね。」
「その日は予定が入って行けなくなったとか?」
「そうじゃないんだ。まぁ気にしないで。」
カザミにも自分の生活があるんだと何となく感じました。
どこに住み、どんな生活をしてるんだろう。
どうやって育ち、どうして真・処刑人になんてなったんだろう。
知りたいことが山積みです。
5/10(金) 雨
もう前日なのに待ち合わせ場所も決まってなかったので、催促のメールを送りました。
すると住所だけが送られて来ました。
「ここに来いってこと?」
「そう。」
その一言だけで後はいくら質問しても何も答えてくれませんでした。
5/11(土) 曇
昨日送られてきた住所を地図で調べました。
学校帰りに行くには少し遠いところですが行ってみました。
そこは墓地でした。
「着いたよ。」
その場でメールを送りました。すぐに返事が来ました。
「そこにいるよ。」
「ここ、墓地だよ。」
「うん。その中にいるんだ。」
「ふざけないで。」
「そこにいたんだよ。」
「じゃあ今は?」
しばらく間がありました。待つ間墓地の敷地内を歩き、墓石に刻まれてる名前を見て回りましたが、知った名前はありませんでした。
メールが届きました。
「探してごらん。ここまで辿り着くその過程で、全てがわかるから。」
私は目をつぶり、空を仰ぎました。
耳の奥で何かが流れる音が鈍く響いてました。
5/12(日) 晴
自分にはどうにもできないと思ってました。
私は大きな波に飲み込まれそれに流されてたと。
けどもう違うのかもしれない。波は過ぎ去り、解放された。
だから今なら探し出せると思います。
私も外に出るしかない。
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