絶望の世界∀ −もうひとつの私日記−
第32週
5/20(月) 晴
田村さんは外に出るのを異常なほど嫌がります。
何か怖い思いをしたのかもしれません。
「処刑人」という言葉にはピクンと反応するけど何を質問しても首を横に振るばかり。
何を考えてるのかもわかりません。
5/21(火) 曇
親御さんはもう私を疑ってませんでした。
行くたびに「頼むわね。」と言われるので、むしろ私が何とかしてくれると思ってるのかもしれません。
一度「いいんですか?私で。」と聞いてみたら
「岩本さんのことを聞いても『関係無い』って言ってたから。」という答えが返ってきました。
田村さんは私のことをまだ覚えてるようです。
5/22(水) 雨
毎日足を運んでも田村さんに改善の傾向は見られません。
私も学校に行ってない身なので学校の話はできないけど、料理の話とかをして何とか耳を傾けてもらうよう努力してみました。
反応はありません。
遠藤さんの話や牧原さんや板倉さんなど昔の人の話を聞こうとしたら顔を伏せてますます口を閉ざしてしまう。
なかなか手ごわいです。
5/23(木) 晴
私を怖がらなくなったのが唯一の救いです。
私が誰なのかはちゃんと認識してくれてる。
たまに「早紀もかわいそうな人ね。」と言ってクククと笑います。
その度に何か話してくれるのかと期待してもいつも無駄に終わります。
聞いても笑うだけで喋ってくれない。
5/24(金) 曇
親御さんに「病院に連れてった方がいいのかしら?」と相談されました。
私は反対しました。たぶん何の意味もなさないと思う。
ふと細江さんのことを思い出しました。あの人もこんな感じになったんだろうな、と。
そういえば細江さんもまだ生きてるんだっけ。
5/25(土) 雨
親友だった人間が虚ろな目で宙を眺める姿は痛々しいものがあります。
これ以上問い詰めても何も得られなさそうなこともあり、他に誰かいないか考えてみました。
板倉さん、牧原さん、岡部先生、細江さん。
手当たり次第当たってみようか。
5/26(日) 雨
カザミさんからは何の連絡も来ない。
ヒントをせがんでもどうせ何も教えてくれないでしょう。
彼はこれまでと同じように、私が悩み、這い回る姿をどこからか眺めて楽しんでるのかもしれません。
もう思い通りにはさせない・・。
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