絶望の世界A −もうひとつの僕日記−
第2部<外界編>
第9章
第33週
12月24日(月) クリスマスイヴ
今日、全てを終わらせるつもりだった。
その覚悟はできていた。
終わるはずだった。でも、終わらなかった。
何も起きなかった。
何も・・・。
12月25日(火) 雨
クリスマス気分は昨日で終了。
これから年末に向けて忙しくなる。
もうコンビニで働いてた時のようなバイト感覚ではいられないから。
最近は早朝から夜遅くまで仕事するのにもさほど苦を感じなくなった。
仕事の時は奴らのことは考えない。
考えてる暇が無い。
12月26日(水) 曇り
川口から電話がかかってきた。
いつものようにじっくり話をきいてやりたかったけど、今は時期が悪い。
仕事が忙しくてあまり相手にできなかった。
時間ができたらまた飲みにいこうと誘われた。
しばらくは無理かもしれない。
12月27日(木) 晴れ
大晦日に向けて着々と準備が進んでる。
既に予約はいっぱいだった。中の方は割となんとかなりそうだけど、問題は外の方。
実質ほとんど僕が走り回る形になるので今から覚悟してる。
僕もそこそこ仕事はできるようになったと自負してるけど、周りから見ればまだまだかもしれない。
気を使ってくれて「無茶なら断ってもいいから。」と言ってくれた。
なんとかこなせると思う。
12月28日(金) 晴れ
仕事をしてると時間が経つのが早い。
例のクリスマスイヴのことは随分前の出来事のように思える。
肩すかしをくらってしまったけど、過ぎてしまったことは仕方ない。
いずれまたチャンスが来るはず。
その日をじっと待てばいい。
12月29日(土) 晴れ
忙しさの中で改めて自分の技術を確かめてみる。
包丁の技術も随分身に付いた。フライパンの扱いもそこそこできる。
色々作れるようになったし、みんなに味付けも誉められるようになった。
人間なんて時間さえ注げば有る程度のコトは誰でもできる。
その代わり他のことはほとんど犠牲にしてしまった。
大晦日に、一人で仕事をしてるなんて。
一人で外にいるなんて。
12月30日(日) 晴れ
いよいよ明日が大晦日。ソバ屋が一年のうち最も忙しい日。
僕がこの仕事をすることになるとは思っても見なかった。
去年までの、夏までの僕はどこに行ったんだろう。
いつから遊びじゃなくなってしまったんだろう。
知らなくてもいいようなことを知ってしまった時からかな。
いや、もっと早く知ってればこんなことには・・・
この前で終わるはずだったのに。終わらすことができなかった。
だからまだ終わってない。
まだ続いてる。
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