絶望世界 もうひとつの僕日記

第38週


1月28日(月)
準備は今から整えておくべきかもしれない。
状況が変わってきてるから、前のプランでは厳しくなってきた。
川口は色々知り始めてるし、他の奴らも仲良しクラブじゃなくなってる。
バラバラになってる。みんなで一緒にお食事会なんて雰囲気はもう無い。
奴らも色々考えを持ち始めたり、勝手な行動をとってたりするけど
幸い、肝心な部分にたどり着いた奴はまだいない。
今ならいくらでも調整できる。


1月29日(火)
掲示板に新しい書き込みが加わってた。

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投稿者:アッキー
投稿日 2002年01月29日(火)01:19

この前はおつかれです。
みなさんはもう結論は出ましたでしょうか?
僕はまだです。というより、出せないです。
それは僕がみなさんより情報不足だからです。
正直、僕は前身のサイトも詳しく知りません。
処刑人にあまり興味がなかったからです。
僕はアングラでオフ会をするという趣旨が面白くてここに参加しました。
だから敢えて聞きたいんです。処刑人が何をしたんですか?
そしてなぜ、あの人を「処刑人」にしたがるんですか?
納得できる情報を提示してください。
納得できなかった場合は、当初の予定通りSさんに謝りに行きます。
注意:勝手な噂話は不可です。説得力のあるものだけ提示してください。
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ここまで逆ギレする奴も珍しい。


1月30日(水)
遠藤がご丁寧に答えてくれた。

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投稿者:まめっち
投稿日 2002年01月30日(水)14:08

前身のサイトって「WANTED処刑人」のこと?あれは別のサイトだよ。
Tさんこと「密告者」が管理する「処刑人を見守る会」ができてからすぐ消えた。
「虫」って人が管理してたけど地下に潜っちゃた。
派生したサイトの方が人気が出てきたから嫌になったか、面倒くさくなったかってトコだよね。
それはともかく、処刑人の話だ。
「WANTED処刑人」には使える情報が多々あったから
そこから肝心なものだけ紹介するよ。

*処刑人とは?*
→あるいじめられっ子が、いじめっ子に復讐するために「処刑人」と化した。

*ネットとの関係は?*
→処刑人はネットで次のターゲットを募集し、選ばれたターゲットを「処刑」する。
ターゲット募集をかけてたサイトは、いわゆる「出会い系」のサイト。
僕らは実際にそこで処刑人がターゲット募集をかけてるのを見たから、これは実話だよ。

*ターゲットって?*
「処刑人」はこんな感じで募集をかけてた。(Tさん、嫌なこと思い出させちゃってごめん!)
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彼らは弱き者を苦しめる罪人である。
よって死刑の判決が下された。
しかし彼らにも猶予を与えたい。
諸君らにお願いする。
処刑して欲しい者を選んでくれ。選ばれた者から処刑を始める。
彼らの運命は君らに託されるのだ。
誰を真っ先に殺すべきか?
メールを待つ。

失格教師 岡部和雄
鬼畜女王 牧原公子
能無下女 板倉聡美
淫売女狐 細江亜紀
寄生蛆虫 田村喜久子
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みんな実名で実在する人物です。
でも、実際には巻き込まれただけの人も多いんだよね。

*処刑されるとどうなるの?*
これは「処刑人」自身の告知と現実とは若干の食い違いがある。
ネットでの最終告知はこちら。
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失格教師 岡部和雄
鬼畜女王 牧原公子(逃亡中:見つけ次第処刑予定)
能無下女 板倉聡美
淫売女狐 細江亜紀(下僕化)
寄生蛆虫 田村喜久子
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これだけ見ると「全然処刑してねぇじゃんよ!」っていいたくなるよね。
けど、現実では・・・Tさんから頂いた貴重な情報はもう知ってるよね?
僕ら関係者しか知らないものだから決して他言しないように!
この掲示板も誰が見てるかわからないから
リアル話は書き込んじゃ駄目だよ?
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今更ながら、やっぱり見てる奴は見てたんだと感心した。
よく覚えてるな。


1月31日(木) 曇り
秋山も負けじと反論してる。

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投稿者:アッキー
投稿日 2002年01月31日(木)23:05

まめっちさん。僕の説明不足のようでしたね。
僕はそんな話を聞きたいんじゃないんです。
その「WANTED処刑人」とやらに集められた情報は
所詮噂話でしかないんでしょう?勝手な噂話は不可だと言いましたが?
みなさんが触れようとしないその「リアル話」とやらを聞きたいんです。
噂話があるのは構いません。ネットですから。
実名が出ることもあるでしょう。出された人には本当に同情します。
問題は、それがSさんと何の関係があるんだっていうことです。
Tさん。実名を出された屈辱はお察しします。
けど、結論を急ぎすぎてませんか?
Sさんはあなたにとってひどい人だったかもしれない。
でもそれだけで「処刑人」と断定していいのでしょうか?
酷な言い方かもしれませんが、僕は死んだ人たちが「殺された」と思ってません。
不幸な事故が重なったのを、心無い人が面白おかしく話をでっちあげたとは考えられませんか?
嫌いな人を「犯人」だと思い込んでしまってないか、もう一度よく考えてみて下さい。
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こいつはもう止まりそうにない。


2月1日(金) 晴れ
今日は珍しい人が書き込んでた。
管理人さまの登場。

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投稿者:T
投稿日 2002年02月02日(金)22:42

こんにちわ。黙って見てられなくなってきたので私も参戦させてもらいます。
アッキーにあの子がどう見えたのかわからないけど
私はあの子にとても痛い目に合わされてました。
今はあの子と親しいフリをしてるけど、それはこのサイトで味方を見つけることができたからよ。
一人で戦ってたあの頃は本当に辛かった。
たまたまネットで見かけた「処刑人」。
そこに私の名前。友人の名前。露骨に怪しい人間が一人。消されていく友人達。
次は私かもしれないってプレッシャーで、精神的に追い込まれる日々でした。
アッキーの言うように、そんな中だったからこそあの子を「処刑人」と思い込んでたのかもしれない。
でもね、証拠があるの。
あの子が殺人犯だっていう証拠じゃなけれど、あの子が「処刑人」だという証拠が。
しっかり名乗ってるの。形に残して。
一度見せてあげたいわ。
何なら見せてあげようか?
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随分な大胆発言だ。証拠があるって?
それがあるなら最初から出せばいいのに。
さすが田村ちゃん。情報を小出しにする嫌らしさは誰にも負けない。
証拠か。これは僕も見てみたい。
いや、見ておく必要がある。


2月2日(土) 曇り
田村ちゃんのあとは秋山も遠藤も「証拠見たいです。」という発言ばかり。
僕も気になる。奴は僕の知らないことをまだ隠してるのか。
何か手を打っておいた方がいい。
川口に電話すると、あいつもしっかり掲示板は見てたようだった。
さすがはROMマニア。掲示板に参加せずとも情報だけは把握してる。

「証拠だってな。お前どう思う?」
「あれはハッタリじゃないかもしれないね。本当だと思うよ。」
「何だろうな。まさかSの通信記録を握ってるとか・・・」
「それは無いよ。プロバイダじゃあるまいし。」
「メールの記録かもよ。ほら、処刑リクエストを募集してたときのメール。あれ確か携帯のアドレスだったよな。」
「携帯?そうだっけ。」
「おいおい。お前気づいてなかったのかよ。アドレスが携帯のものか何て見たらすぐわかるだろ。」
「ああごめんごめん。そうだったね。ずっと前のことだったから忘れてたよ。」
「俺はまだ奴のアドレス控えてあるんだけどさ。さすがにもう通じねぇんだよな。」
「そりゃそうだろうね。処刑人さんも忘れた頃にイタズラメールが送られてきたら嫌だろうし。」
「まあな。あー。あの頃はちゃんと返事くれてたのになぁ。」
「あ、川口も処刑人から返事もらったクチなんだ。」
「そうだよ。『リクエストありだとう』とか言って。そういや遠藤ももらってたとか言ってたよなぁ。」
「言ってた言ってた。それがきっかけでファンになったとか何とか。」
「そうそう。」
「ところで、さっきの話だけど。田村ちゃんの言う証拠ってのは見ておきたいよね。」
「もちろん。また渋るようなら殴ってでも見せてもらう。」
「はは。その調子じゃ警戒されちゃうよ。」
「それはあるな。あの女、最近やたら俺を避けてやがるし。」
「会ったら何されるかあの子もわかってるんだよ。」
「くそ。会うことさえ出来れば何とでもしてやるのに・・・。」

お料理会も開催される気配も無いし、「会議」にも外されてるから会うのは厳しいだろう。
自分の行動が仇となってるのに気づかないのは頭が猿だからだ。
まぁがんばってくれ。


2月3日(日) 雨
田村ちゃんに電話した。

「なんか掲示板大変なことになってるね。」
「もう大変なんてもんじゃないですよー。あーなんでみんな言うこと聞いてくれないんだろ。」
「ネットは管理人の思惑通りに動くとは限らないんだよ。」
「でもこれじゃもうぐちゃぐちゃですよ。どうしたらいいかワケわかんないです。」
「ズバっと証拠とやらを見せてあげたら?掲示板にも書いてたけど。あれ何なの?」
「あ、そうそう。ちゃんと証拠あるんですよ。見たらびっくりしますよ。絶対。」
「ホントに?僕も見たいなぁ。」
「見せますよぉ。特に師匠には一番に見せてあげる。あの、けどちょっと問題があって・・・。」
「問題?」
「ええ。その・・・すぐに見せれる状態じゃないんですよ。掲示板ではああ書いちゃったけど本当はそんな簡単じゃなくて・・。」
「はぁ。うーんよくわかんないな。」
「えっと。説明しづらいって言うか全部話すと長い話になっちゃうんですよ。」
「別に長くても構わないよ。いいじゃん。話してよ。」
「うーんどうしよ。色々あって私もちょっと言い難くて・・・・あ、そうだ!師匠、来週どっか空いてます?」
「え?うん。木曜日は定休日だから空いてるよ。」
「決まり。木曜日あけといて下さい。絶対ですよ。」
「何?なんかやるの?」
「特別に師匠に証拠を見せてあげます。というかみんなに見せる前に誰かに事情を説明しておきたいんですよ。」
「いや、僕は全然構わないけど。いいの?僕なんかで。」
「へへへ。みんなの中で師匠が一番信用できますから。」
「そうかなぁ。」
「そうですよ。みんなピーチクうるさいけど師匠はいつも冷静じゃないですか。
じゃ、木曜日一日あけといてくださいね。一緒に行って欲しいトコがあるんで。私も学校サボりますから。」
「わかった。近くなったらまた連絡するね。」

電話を切った後、思わず吹き出してしまった。
あの子は何を勘違いしてるんだろう。僕に何を期待してるんだろう。
一番信用できるだなんて。


第39週