絶望世界 もうひとつの僕日記

第2部<外界編>
第11章
第41週



2月18日(月) 晴れ
遠藤との会話
「ねぇねぇもう何かアクション起こした?まだだよね?抜け駆けしてないよね?」
「僕はまだ何もしてないですよ。というか何をしたらいいかまだわからなくて。」
「そうだよねそうだよね。ボクも初日から飛ばそうと思ったけど何て電話したらいいかわからなくて。」
「遠藤さんはもう顔見知りなんだから平気じゃないですか?」
「それが逆にネックなんだよ。知り合いだと余計に話題に気を使っちゃってさ。
だって聞きたいことって最初に会ったときにほとんど聞いちゃったし。」
「なんとなくわかりますよ。中途半端な知り合いだといきなり電話するのって何か気まずいですよね。」
「勘違いしないでよ中途半端じゃないよ立派な知り合いだよそれ以上だよ間違いないね本当に。」
「でもすぐに電話かける必要は無いんじゃないですか?」
「いやいやいやいやわかってないなぁ。聞きたいんだよ。あの子の声を。
草原にとどろく小鳥の歌声を聞いて癒されたいのと同じことサ。ユーアンダースタン?」
「はぁ。まぁそれなら非通知でかけるってのはどうでしょう。声だけ聞いて切っちゃえばいいわけだし。」
「ふおおおおおおおおおおおおおお!?いやそれはマズイよやれないよそんないやでも、え?あ、う・・」
「そんな焦んなくていいですよ。じっくり考えてからやればいいじゃないですか。」
「うん・・・・。」


2月19日(火) 晴れ
遠藤との会話
「聞いて聞いて聞いて聞いて!今日ね。電話しちゃった!」
「あ、本当にかけたんですね。非通知ですか?」
「うんうんうんうん。いやーナイスアイデアだったよ。『もしもし』とか言って。サッキーの声、やっぱかわいかったぁー。」
「何か言ったんですか?」
「いや。声を聞いたら切っちゃった。お話ししたかったんだけどやっぱり話のネタが思いつかなくて。」
「へぇ。」
「うーんやばい。癖になりそう。また明日もやろうっと!」
「遠藤さん。二回目はマズイですよ。」
「ええええ?なんでぇ?」
「不審な行為が重なると、イザ近づこうとした時に怪しまれますよ。それだと困りませんか?」
「う・・・非常に困る・・・。」
「ですよね。だから今は堪えた方がいいですよ。」
「ううー。一回だけだとわかってたらもっと声を聞いてたのにぃ・・。」
「仕方ないですよ。」
「ぶー。わかったよぅ。あ、ところでさぁ。他のみんなはどうしてるか知ってる?」
「いや、知らないですね。」
「気になる?」
「別に。」
「僕はすごい気になるんだよだってたむちゃんは一番近いとこにいるしぐっちーなんか何やらかすかわかんないし
それにアッキーが特に怖いんだよあいつ先走って迫っていかないか心配でねぇアッキーの電話番号知らない?」
「秋山君は携帯持ってないですよ。」
「アッキーのメールアドレス知ってる?」
「知ってますよ。」
「じゃあさじゃあさちょっとお願いがあるんだけど一生のお願いなんだけど心のそこからの頼みなんだけど。」
「何ですか?」
「アッキーは何しようとしてるのかちょっと聞いてくれないかなぁ。いやホントはボクが直接聞きたいんだけどさ
アッキーがさボクを妙にライバル視してるからさボクから聞くと本当のこと教えてくれなさそうだからさ仕方なく。」
「いいですよ。メール送りますよ。」
「本当!?アリガトー!!!もう是非お願いするよー。」


2月20日(水) 曇り
秋山との会話
「メール読みましたよ。」
「ああ、ごめんね。わざわざ電話してくれたんだ。それで、どう?うまくいってる?」
「それがちょっと壁にぶち当たってしまって。」
「あらま。どんな?」
「最初の切り出し方が思いつかないんですよ。」
「秋山君はもう顔見知りだから平気なんじゃないの?」
「それが逆にネックなんですよ。知り合いだと余計に話題に気を使っちゃうんですよね。」
「あーわかるよ。中途半端な知り合いだといきなり電話するのって何か気まずいよね。」
「中途半端じゃありません。いや、でもニュアンス的にはあってるかも・・まぁそんな感じでしょうかね。」
「いいんじゃない?田村さんに電話番号教えてもらいましたって言えば。」
「でもいきなり電話したら怪しいじゃないですか。下心あるんじゃないかとか思われちゃいますよ。」
「そっかなぁ。。そしたら前に行ってた『謝りにに行く』ってのは何て言うつもりだったの?」
「それを・・・言われると辛いんですよ。今でも謝りに行きたいって気持ちでいっぱいなんですが
ゲームに参加するにしても謝りに行くにしても、やっぱり何て切り出せばいいかわからなくて・・・。」
「ははは。そうだったんだ。」
「後で考えればいいやって思ってたんですけど・・・イザやるとなると難しいですね。」
「そんなもんだよ。まああまり焦っても駄目だろうし。じっくりやった方がいいね。」
「それがいいんですけど・・・できれば早めにやりたいんですよね。」
「なんで?」
「心配なんですよ。川口さんとか。なんか無茶して怖いことしそうな気がするんですよ。」
「確かに」
「あと遠藤さん。あの人絶対早紀さんに惚れてますよ。早紀さんの話する時目の色変わってますから。危険ですよね。」
「あーそれは有るかもね。けど別にいいんじゃない?誰を好きになるかはその人の勝手だよ。」
「そうかもしれないですけど。それでも遠藤さんはヤバイじゃないですかー。」
「そっかなー。」
「それに妙に僕のことをライバル視してますよね。あの人こそ抜け駆けしそうですよ。
今どうなんでしょう?遠藤さんはもうアプローチはしたんでしょうか?」
「うーん僕にはわからないなぁ。」
「そうですか・・・。あー僕も早く動かないと。」


2月21日(木) 曇り
遠藤との会話
「どうだった?どうたっだ?アッキーもう何かやってた?」
「いや、僕らと同じですよ。やっぱり出だして詰まってました。どうやって話を切り出せばいいかわからないって。」
「だよねだよねだよねだよねボクらが悩んでることにアッキーができるわけないもんね。」
「あとあっちも遠藤さんの動きを気にしてましたよ。」
「げぇぇぇぇ。やっぱりボクのことライバルだと思ってるんだ。やばいー。僕も早く動かないとー。」
「先越されちゃいますよね。他の人はどうしてるんだろ?」
「ね!気になるよね。たむちゃんは別にいいんだよ。だってゲームの主催者だから。
まさかたむちゃんまでゲームに参戦してくるなんてことないよねぇ。」
「さぁ。そう言えばそこハッキリしてませんでしたよねぇ。田村さんも参加するんじゃないですか?」
「ええええええええ。そんなぁそしたら圧倒的に有利じゃんいつも一緒にいるんだから。ずるいよずるいよー。」
「いや僕に言われても。でも田村さんも逆に厳しいかもしれませんよ。
昔の傷を引っかくのって友人の立場の方が辛いと思うんですよ。」
「ほほーう。興味深いこと言うね。というとボクにも充分勝ち目はあると?」
「もちろん。」
「いいねぇいいねぇ!で、で、ぐっちーはどうかなぁ。親しいんでしょ?何か情報入ってない?」
「いやみんなで集合した時以来まったく連絡取ってないです。
あいつ何かと一人で動くから。なかなか情報入ってこないんですよ。」
「そっか・・・。これからも連絡取る予定は?」
「ないです。」
「ううーどうしよう。ボクだけ取り残されるぅぅ。」
「大丈夫ですよ。じっくり考えてれば必ず突破口が見えるはずですから。」
「だよねだよね。一緒にじっくり考えようねぇぇぇ。」


2月22日(金) 晴れ
川口との会話
「どうした。何か進んだか?」
「いやぁ。ゲームがちょっと詰まっちゃってね。そっちはどうしてるかなと思って。」
「何だよ。何で詰まってるんだよ」
「せっかく電話番号教えてもらったんだけどさ。いざ電話かけようとしても何て話せばいいかわかんなくて。」
「確かにお前は話すことないよなぁ。まだ岩本嬢に会ってないんだし。」
「それが他の二人も苦労してるみたいだよ。遠藤さんも秋山君もまだ電話できてないって。」
「何だ何だ。あいつら意外と気が弱いな。気にせずガンガンかけちまえばいいのに。」
「お料理会の時は田村ちゃんも一緒にいたからねぇ。一対一じゃ会話できないんだよ。」
「まったくこれだからオタク野郎は。せっかくゲーム始めたのに動いてるの俺だけじゃねぇか。」
「あれ。もう何かやってるの?」
「まぁな。俺は電話なんかする気はないからさ。とりあえず家の調べはついたってとこだな。」
「もう現地に行ったのかよ。」
「そうだよ。住所さえ調べればネットで地図出せるだろ。後はその付近で岩本家を探すだけ。簡単だったよ。」
「どんな家だった?」
「普通の一戸建てだよ。さすがに処刑人だからって変な家に住んでるわけじゃねぇよ。」
「処刑人にはもう会えたの?」
「いやそれはまだ。今度家の前張るつもりだったけど。でもまだ早いな。他の奴らが足踏みしてるんじゃ面白くねぇよ。」
「田村ちゃんはどうなんだろ。というかあの子も参戦してんのかなぁ。」
「一応してるよ。しろって言ってあるから。まぁやる気は無いだろうけどね。」
「そっかぁ。僕はどうしようかなぁ。正直な話、最後にみんなが集まるときにその場にいれれば別にいいんだけど。」
「参加しろって。ネタバレ披露するのは岩本嬢の口から『処刑人』の言葉を出した奴の特権だぞ。」
「確かにネタバレ語る時が一番気持ちいいんだよなぁ。」
「だろ?それにゲーム参加者は多いほうが楽しいからさ。お前もゲーム盛り上げるのに協力してくれよ。
『最近周りの様子がおかしい』って疑心暗鬼になってる時の顔ってのも格別だから。」
「わかった。僕も別のアプローチ方法考えてみるよ。」
「頼んだぞ。」


2月23日(土) 晴れ
田村ちゃんとの会話
「師匠ー。聞いてくださいよー。」
「電話くれたと思ったらいきなりそれか。何?言ってみな。聞いてあげるから。」
「へへへー。ありがとー。」
「何かあったの?」
「そーなんですよー。今日ねー。面白いことがあったんですよー。」
「面白いこと?」
「そーなんですよー。私ねー。いきなりゲームに勝っちゃったんですよー。」
「ゲームに勝ったって・・・え!?まさかあいつに『処刑人』って言わせたの!?」
「そーなんですよー。しかもあっちから言って来たんですよー。私もびっくりしちゃってー。」
「どんな状況だったの?」
「それがですねー。最近ちょっと無視してたらー。今日私のトコにやってきてー。いきなりこんなこと言ったんですよー。
『私、処刑人でもいいよ。』だってー。もう超びっくりー。それにねー。他にも色々言うんですよー。
公子とか聡子とか亜紀とか岡部先生のこととかごめんなさいって。私にも謝ってたしー。」
「それってつまり・・・全部認めたってこと?」
「そーなんですよー。そんな感じでしたー。早紀ったら馬鹿ですねー。今更そんな言ったってねー。」
「そうか・・・。」
「でもねー。私このことみんなに言うつもりないんですよー。みんなはゲーム続けてくださいねー。」
「え?いいの?せっかく勝ったのに。」
「いいんです別にー。だってこのまま終わったんじゃ面白くないじゃないですかー。
私はあんな辛い目に会ったのにあの子だけこれでおしまいなんて納得できないですよー。
せっかくみんなに参戦してもらったのに私で終わっちゃ意味ないですよー。
早紀にはもっと痛い目にあってもらわないと採算合わないですよ。私はずっと耐えてたんだから。
早紀の暴力に耐えてたんだから。川口さんにだって耐えたんだから。復讐の為ならって。仕方なく。なんで私だけ・・・。」
「田村さん大丈夫?涙声になってるよ。」
「そんなこと・・・ないです・・・。」
「きっと疲れてるんだよ。もう休みな。」
「・・・はい・・・・。」


2月24日(日) 晴れ
川口との会話
「よう。何か思いついたか?」
「いや駄目だね。まだ全然。そっちは進んでる?」
「ああ。最近は学校付近うろついて岩本嬢らしき人物探してるよ。
田村ちゃんと一緒に帰ってるだろうから、一度顔を拝んでおこうと思ってね。」
「学校の近くって結構やばくない?前から何度かウロウロしてるんだろ?生徒に話し掛けたりとかも。」
「おいおい。そんな時代遅れなこと言うなよ。いまどき女子高の近くに男がうろつくのなんて当然なんだから。
俺なんか全然かわいい方だよ。話し聞くだけだろ。普通だったらお持ち帰られるところだぞ。」
「そっか。そうだよなぁ。でも考えてみると怖いな。普通にナンパ目的の男がうろついてると思いきや
中にはネットで狙いを定めて近寄ってきてる奴もいるなんて。見ただけじゃわかんないからなぁ。」
「そこが楽しいんじゃないか。ネット越しだから安心だと思ってるところに、ひょこっと姿を現すのがソーシャルの醍醐味なんだよ。
『まさか現実世界に来るとは思わなかった』って時の表情はたまんないね。」
「やったことあるのか?」
「何度かね。ほらよくあるじゃん。アングラサイトで個人情報暴露されるの。
俺そーゆうの見つけると真っ先に電話かけるんだよ。住所で出た奴なんか間違いなくソシャルするね。」
「悪趣味だなぁ。」
「へへ。お前も好きなくせに。だから処刑人を見守る会だなんてのにも参加したんだろ?」
「まあね。」
「だよな。なら楽しもうぜ。俺今回のにはかなり気合入ってるんだよ。何しろ相手はかの有名な処刑人だからな。
それにいつもは一人でやってたからさ。複数で罠にかければ絶望感も倍になるんだろうなぁ。あー楽しみだ。」
「楽しみだね。」


第42週