絶望の世界A −もうひとつの僕日記−
第42週
2月25日(月) 晴れ
秋山との会話
「どうしたの?わざわざ電話してくるなんて珍しいじゃん。」
「ヤバイですよ。問題が起きました。」
「何かあったの?」
「はい。今日早紀さんに電話したんですよ。一応名目としては『またお料理会しましょう』ってことで。
散々考えて結局こんな普通のことしか思い付かなかったんです。でもいい加減何かしないとと思って。」
「あ、電話かけたんだ。どうだった?」
「そ、それが失敗しちゃったんですよ。早紀さん、なんかやる気ないんですよ。最近忙しいとか何とかで。
食い下がったんだけど『またの機会にして』とか言われちゃって。前はあんなにやる気だったのにどうして・・・。」
「あらら。料理ネタで食いつかないと痛いなぁ。」
「そうっすよ。僕ら一応田村さんとは料理つながりってことにしてあるじゃないですか。
だからお料理会でもしないと会う機会ないですよ。料理関係の名目が無いと会えないですよ。」
「普通に映画でも誘ってみれば?お友達感覚で。」
「勘弁してくださいよ!だって相手は年上だし処刑人だし映画に誘うだなんてデートに誘ってるみたいだし
それに何かの拍子で僕が早紀さんに気があると思われたらいやこれは本当に好きなのかとかそんな問題じゃなくて。」
「まぁとにかくお料理会が使えないんじゃ別のアプローチを考えるしかないよねぇ。」
「そ、そ、そうなんですよ。だから相談しようと思って。」
「うーん僕も料理人キャラで売ってたから今更他のアプローチって言われても厳しいなぁ。」
「で、でも他に何かあるはずですよ考えてくださいよ。思い付いたら教えてくださいねねね。い、い、一緒に行かせで下さい。」
「わかったわかった。だから焦んないで。僕も良さそうなの考えてみるよ。そしたら一緒にやってみよう。」
「お、お願いします。」
2月26日(火) 晴れ
遠藤との会話
「遠藤さん聞いてくださいよ。秋山君失敗したらしいですよ。」
「え?え?何なの?アッキー何やらかしたの?」
「それがですね。昨日とうとう処刑人にアプローチしたらしいんですよ。お料理会に誘う名目で。」
「あーーーー!その手があったかーーー!くそうくそう深く考えすぎたそれなら簡単・・・」
「いや感心しない方がいいですよ。何しろこれで失敗したんですから。」
「えええええ?なんで失敗したのぉぉぉぉ???」
「どうも処刑人の方がお料理会への興味が失せてきてるらしいんですよ。
秋山君の話だと、なんかあまりやる気がないような感じだったって。」
「まじぇすか??いやまさかそれはおかしいよ。だって早紀ちゃん、お料理会すっごく楽しそうにしてたもん。
ボクの作った料理もおいしそうに食べてくれてたもん。キッチンに立ってる姿かわいかったもん。」
「そのまさかなんですよ。それで秋山君も戸惑っちゃったんでしょうね。」
「げぇぇぇぇぇぇぇ。そんなこと言われても困るよう。早紀ちゃんいつからそんな子になっちゃったんだよぅ。」
「でも、これって逆にチャンスなんじゃないですか?」
「は?チャンス?どして?」
「遠藤さん、これですごくアプローチしやすくなったじゃないですか。」
「??なぜぇ??」
「考えてみて下さいよ。遠藤さんが今思ってること、そのまま言えばいいじゃないですか。こんな感じで。
『秋山君から聞いたんだけどさぁ。お料理会にあんまやる気ないんだって?どうしたの。何があったのさ。』」
「『何か悩み事でもあるの?良かったらボクが相談にのるよ・・・』」
「そうそうそんな感じ。いいじゃないですか。バッチリですよ。しかも話の展開ではかなり深く親しくなれますよ。」
「・・・・・・・・・もらっていい?」
「え?」
「このトーク、頂いていいかしら?」
「ああ。どうぞどうぞ。ガンガン使っちゃって下さい。」
「よっしゃああああああああああああああああああ!!!これイイ!イイよ!!絶対ハマる!!明日早速使うさ!!!!」
「使って使って。じゃ、頑張って下さいね。」
「うん!!!!!!!!!!!!!」
2月27日(水) 曇り
遠藤との会話
「ややややばいよやばすぎるよどうするよ。」
「どうしたんですか?」
「早紀ちんホントにやる気ないよいくら誘っても全然その気になってくれないよ遊ぼうよって何度も誘ったのに
最近疲れてるから休みのときはあまり外出たくないんですとか言って話を聞いてくれなくて。」
「うわ。ホントだったんだ。お料理会に乗ってこないとキツイですよね。他にいい名目がないし。」
「だよねだよねどうしたらいいかなどうしたらいいかな。」
「うーん僕も考えますけど・・・遠藤さん。なるべく早く手を打たないともっとマズイことになりますよ。」
「え?え?これ以上マズイこと?」
「はい。実はね、秋山君はもう動き出そうとしてるんですよ。」
「なっにいいいいいいい!?アッキーがぁあああああああ??」
「秋山君、もう直接会いに行こうかってくらいの勢いでしたよ。」
「だめだだめだだめだアッキーなんかに先を越されちゃだめだ早紀ちんアッキーなんかに会っちゃだめだよ。」
「彼も結構強引ですからねぇ。先走ったら怖いですよ。事情全部説明して自分だけ味方になろうなんて考えてるかも。」
「そんなの卑怯だよ!チャンスはみんなに平等だよ!!」
「まだわかんないですけどね。秋山君は平日は動けないだろうから猶予はあるかも。
学校帰りに寄っても大して時間は取れないだろうし。いや、それでも敢えて顔出ししてアピールするって手も・・」
「ふざけてる!!早紀ちんはそんな姑息な真似に引っかからないよ!引っかかっちゃだめだよ!」
「ならその前になんとかするしかないですね。秋山君より先に遠藤さんが味方になればいいんですよ。」
「確かに!早紀ちんの味方はボクしかいないからね!他の奴らなんかに手を出させないからね!!」
「明日また電話した方がいいですよ。それがアピールにもなるし、何度も誘えば気も変わるかもしれない。」
「うん!!!!!!!!!」
2月28日(木) 晴れ
遠藤との会話
「うわああああああああああああんん!!!!」
「何ですかいきなり大声で。」
「早紀ちんがああああ!!早紀ちんがああああああああ!!」
「泣いてたってわかんないですよ。どうしたんですか?」
「早紀ちんがあああああ!!『もう電話しないで下さい』ってえええええええええええ!!!」
「あー・・・・非常にヤバイですね。」
「しかもその後電源切られちゃってえええええ!!連絡も取れないんだよおおおおおおう!!!」
「うわ。完全に嫌われてますよ。」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!そうなのかなああああああああ!!」
「間違いないですね。話し方に問題あったんだと思いますよ。」
「そんなまさか気を使って愛情たっぷり注いでたのに有りえない有りえない。」
「でも現実問題として無視されちゃってるワケですから。それは受け止めないと。」
「うぐぐぐぐ聞こえない聞こえない。」
「とりあえずマズイのは確かですよ。あいつもとうとう動き出したらしいんで。」
「あいつって・・・・?アッキー?それともまさか・・・・。」
「川口です。さっき連絡あって、今度襲撃するとか何とか言ってました。」
「しゅしゅしゅ襲撃いいいいい!!!???何だよぐっちーの奴ボクの早紀ちんに何する気だよ!!!!」
「さぁ。何するかはわかんないです。武器を用意したとかは言ってましたけど。」
「ふおおおおおおおおおおおおお!!!!!!なんじゃそりゃあああああああ!!」
「秋山君もそろそろ足を運びそうですからねぇ。僕らもうかうかしてられないですよ。負けちゃいますよ。」
「負けれない!!これは絶対負けれない!!」
「僕らも会いに行きますか?」
「もちろん!!早紀ちんはボクが守る!!共に戦おう!!!」
3月1日(金) 晴れ
秋山との会話
「ごめんね。自宅に電話しちゃって。」
「いやいや構わないですよ。でもよく番号わかりましたね。」
「この前電話もらったときに履歴が残ってたから。」
「なるほど。で、何か進展ありました?よい方法思い付きました?」
「うん、まあね。」
「ホントですか!?教えて下さいよ僕にも一緒にやろうって約束だったじゃないですか。」
「もう直接会いに行くしかないね。それが一番手っ取り早いよ。」
「え?いや、あ、それはその・・マズイんじゃ・・・ちょっと・・・。」
「恥ずかしいの?」
「いやいやいやいやそんなんじゃなくてその、あの、アレですよホラ。
いきなり会いに行っても相手にしてくれないんじゃないかなって。」
「電話でもあまり相手にされなかったんでしょ?なら同じだよ。むしろ面と向かって話したほうが話が伝わるって。
どんだけうまいこと言ったって電話だと切られたら終わりじゃん。それじゃ先に進めないよ。」
「う・・・でも・・・。」
「それに、あまりうかうかしてられないんだよね。遠藤さんも川口も直接会いに行くって勢いだよ。」
「ホントですか!!??や、やばいっすよ。あの二人どっちも危険ですよ!早紀さん絶対変な目に合わされいますよ!」
「それが嫌なら僕らが何とかしないとね。」
「そうですよ。そりゃそうなんですけど・・。」
「まぁ僕なんかはさ、一度も会ったことないからいきなり電話したって絶対相手にしてもらえないんだよ。
直接行くしか選択肢が無くてね。誰かと一緒ならまだ何とかなるかなって思って。」
「え?誰かって?」
「何言ってるんだよ。秋山君、キミだよ。一緒にやろうって言ったじゃないか。」
「え、あ、確かに・・・。」
「まさか良い方法だけ教えてもらって後は自分でやろうとか思ってた?」
「いやいやいやいやいやまさかそんなこと考えもしないですホントにホントです信じてくださいホントなんですから。」
「まぁむしろお願いしたいくらいなんだよ。僕は一人じゃ会いにいけないから。秋山君、一緒に行ってくれるよね?」
「は、はい。行きます。あ、でも田村さんとかはどうなんですか?僕よりあの人と一緒に行ったほうが信用としては・・・」
「田村さんはゲームに参戦してないから。」
「そうなんですか!?し、知らなかった・・・。」
「だから僕らでやろう。ね?」
「はい。い、行かせて頂きます。」
3月2日(土) 曇り
川口との会話
「どう?進展あった?」
「おう。とうとう岩本嬢の顔を拝んだよ。」
「すげぇ。どうやって見たの?」
「それがさぁ。てっきりいつも田村ちゃんと一緒に帰ってると思ってたんだけど、どうもそうじゃねぇみたいなんだよ。」
「ホント?何かあったのかな。」
「さぁ。学校張ってたら田村ちゃんが一人で歩いててよ。捕まえて聞いてみたら『早紀はもう一人で帰ってる』ってさ。
理由を聞いても『よくわかんない』の一点張りで話になんなくて。あの女ホント使えねぇなぁ。」
「じゃあどうやって処刑人を見たんだよ。紹介でもしてもらったの?」
「それだとソシャルになんねぇじゃん。俺的にはやっぱいきなり現れて『あなた誰?』ってな展開になって欲しいワケよ。
疑心暗鬼にさせるのは秋山と遠藤とお前の仕事。俺はトドメの役。まぁそんな予定だったもんでね。」
「おいしいトコ取りかよ。嫌らしいなぁー。」
「あくまで理想だよ。けど負けるの前提で動いたってゲームは面白くないだろ?勝った時のイメージを持って動かないと。」
「それで結局どうやって顔拝んだんだよ。」
「ああ、それは簡単。もう家の付近を張ってたよ。かなり怪しかったけどこればっかりは仕方ないね。
田村ちゃんと同じ制服着てる子が来ないかチェックしてたってワケ。そしたら来たよ。バッチリと。家に入るのまで確認した。」
「で、どうたった?どんな顔だった?」
「マトモだったよ。というかあれは結構かわいい部類に入るね。遠藤と秋山が熱を上げるのもわかる気がする。」
「へー意外だな。なんでそんな人が処刑人になっちゃったんだろうね。」
「人の心は見た目じゃわからないってことだよ。で、お前の方はどうだったんだよ。この一週間連絡もよこさず何やってた?」
「ずっと一人で悩みっぱなしだよ。どうやってもアプローチ方法が見つからない。」
「おいおいそんな面白くないこと・・。」
「だから襲撃しようと思うんだ。」
「・・・。」
「もうアプローチ無しでもいいかなって思って。ナイフでも突きつけて脅せば何とかなるんじゃないかなぁ。」
「一言だけいいか?」
「何?」
「やっぱお前が一番ワルだよ。」
「そうかなぁ。」
「そうだよ。なぁ、何時行くか決まったら教えてくれないか?」
「何?一緒に行く?」
「ああ。是非同行させてくれ。」
「わかった。連絡するよ。」
3月3日(日) 晴れ
田村ちゃんとの会話
「今度さ。みんなで処刑人さんに会いに行くことになったよ。」
「そうですか。頑張ってください。」
「田村さんも来る?」
「いや、私はいいです。」
「ゲームが終わる瞬間とか見たくないの?」
「見たいです。でもそれ以上に川口さんに会いたくありません。」
「なるほどね。でも他のみんなもいるよ?」
「他の人にも会いたくありません。みんな勝手にやればいいんです。」
「勝手にやったらヤバイんじゃないの?」
「もういいです。どうでもいいです。早紀が破滅してくれればそれでいいです。」
「破滅・・・ね。」
「破滅した瞬間は見れなくてもいいんです。破滅した姿さえ見れれば。」
「具体的にどうなるのか想像つく?」
「つかないです。でもとにかく破滅してしまえ。」
「そうなればいいね。」
「はい。」
「でもきっとならないよ。」
「そんなことないです。」
「そうかな。」
「そうです。」
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