世界 サキの日記

サキの日記 第六節「信用」


9/1 晴れ
今頃「外」では学校が始まってることでしょう。そういえば毎年この日には防災訓練なんてしてたっけ?
そんな事実があった事はなんとなく覚えてる。けど、具体的にそれを行ってるイメージは沸いてきませんでした。
ワタベさんが電話で「今度こっちから仕掛けるから。サキさんは私以外の人を信用しないでね。」と言ってました。
私はワタベさんをあまり信用してませんでした。だからそう言われた後私はどうしたらいいかわかりませんでした。
でもK.アザミが掲示板に「一人じゃ何もできないでしょ?」と書き込んでたので考え直しました。
確かに一人じゃ何もできないもんね。わかった。私、決めたよ。ワタベさんとアザミだけを信用する。
それでいいよね。


9/2 晴れ
ワタベさんが何をするつもりなのか私には想像がつきません。仕掛けるって言ってたけど・・・・。
「希望の世界」には今日は誰も書き込んでませんでした。sakkyさんも最初だけだったな。何やってるんだろう。
sakkyさん。どんな人なのかな。私はsakkyさんの姿を想像してみました。うまくいきませんでした。
何も浮かんでこない。こんなの初めてです。思い出せないとかイメージが沸かないとかじゃありません。
頭の中に何も現れてこないんです。影の中に埋もれたまま、光のある方へ出てこようとしないみたい。
不思議な感覚です。


9/3 曇り
今日も「希望の世界」には誰も来てません。みんなどうしちゃったんだろう?アザミまで来ないなんて。
妙にしん、としてる気がします。こんな時ふさわしい言葉があった気がするな。なんだっけ?
それはすぐに浮かんできました。「嵐の前の静けさ」この言葉が本当にふさわしいのかわかりません。
ただ思いついてしまっただけです。それ以外特に日記に書くことが思い当たらなかったから。
なんだか寂しい一日でした。


9/4 晴れ
今日も何も無し。「希望の世界」には誰もいません。ワタベさんからの連絡もありません。
夕方頃、くしゃみが出ました。別に風邪をひいてるわけでもないけど勝手に出ました。
誰かが私の噂でもしてたのかな?私の話をする人って誰だろう。お母さんかな。ワタベさんかな。
オクダだったらヤだな。暇だったのであんな奴の名前まで思い出してしまいました。
こんな事しか日記に書くことはありません。暇だよアザミ。「希望の世界」に来てよ。
今日も寂しい一日でした。


9/5 曇り
先生からお話がありました。「今度君に面会したいって人がいるんだけど、どうかな。」
その人がどんな人なのか説明してくれましたが、どんな人にもかかわらず私は会うつもりありませんでした。
ワタベさんとアザミしか信用しないって決めたから。この病院に通ってる中学生なんて私には関係有りません。
パソコンを趣味にしてるから話があうかもしれないって話は納得できるけど、その人信用できるかは別問題です。
私は断りました。先生は少し残念そうな顔をしたけどまぁ仕方ないなっ言ってました。
先生が行って部屋で一人になった時、とても嫌な気分になりました。断ってはいけなかったのかもしれないって。
だって仕方ないよ。信用できないんだから。決めたんだから。わかってるのに。なんで後悔してるんだろう。
「希望の世界」で「K.アザミ」が書き込んでくれました。昨日のお願いが効いたみたい。
「大丈夫。落ち着けば気分も良くなるよ。」・・・・そうだよね。考えたってどうしようもないもんね。ありがとうアザミ。
少し楽になったよ。


9/6 晴れ
ワタベさんから連絡がありました。「明日は絶対『希望の世界』につないでね。」と言ってました。
いよいよ何かを始めるつもりらしいです。今日はsakkyさんも書き込んでました。私も書き込みました。
誰かが私を呼んだ気がしました。この前私の話をしてた人かな?なんでそんな気がしたんだろう。
近頃理由もなく色々な感情が私の中に流れてきます。そして、「そんな気がする」って感じることが多い。
自分がよくわかりません。


9/7 雨
ワタベさんに言われた通り「希望の世界」に繋ぎました。そこにはゲリラオフ会のお知らせが書かれてました。
9月15日、午後1時、横浜駅東横線改札前に集合らしいです。私は病院から出られないので行けません。
でもその事を書いては駄目なんだそうです。誰が来るのか分からないようにしたいからって。
来れる人だけが勝手に来るオフ会って言えばいいのかな?行けない私はどうすればいいんでしょうか?
ワタベさん、私に何をして欲しいの?これから何が起ころうとしてるの?わからない。わからないよ。
私の頭の中はワケの分からない事だらけ。ワタベさんに対する信用するだけが私の心をつなぎ止めます。
私は


サキの日記7−「序曲」