世界 サキの日記

サキの日記 第十節「鉄壁」


10/9 曇り
お母さんが着替えの服を持ってきてくれました。
「他に何か欲しいモノある?」と聞かれたので「外に出たい。」と答えました。
黙って首を振ってました。やっぱりダメなんだね。でも、仕方ないんだよね。
お母さんが帰った後も私はあまり良い気分ではなれませんでした。逃げる準備をしなきゃ。
パソコンと携帯電話は持っていく事にしました。手ぶらじゃ病院の玄関から出る時怪しまれる。
それにパソコンのケースは鞄がわりにもなるから持ってた方がいいよね。明日にでも出ていこう。早い方がいい。
アザミ。いよいよだよ。


10/10 晴れ
逃げられませんでした。先生はずっと私を監視してました。
外へでようとすると「そっちへ行っちゃダメだよ。」と怒られました。
私の意図を見透かしたように出口に立ちはだかります。今日逃げるのは諦めました。
そんな簡単にいくとは思ってない。私はまだ諦めない。今日がダメでも、きっとうまくいく日はあるよ。
「希望の世界」へ行きました。今のところ、これだけが外の空気に触れる唯一の手段。
メールチェックすると、sakkyさんから一通来てました。オフ会前以来です。もう居なくなっちゃったかと思ったよ。
「早紀さんは今どうしてるんですか?」と一行書いてあるだけでしたがsakkyさんは久々だからとても嬉しいです。
「私は元気です。」と返しました。送った後で、私は少し疑問に思いました。なんで私の名前知ってたんだろう。
どうでもいい事かな。


10/11 晴れ
カイザー・ソゼさんが来てくれる!
「希望の世界」で発言してました。私に会いに行くって。でも、ここの場所がわかるかな。心配。
私はこの病院の名前を書いておきました。これなら間違いなく来てくれます。
外に出なくても大丈夫かもしれない。気持ちが高まってく。カイザー・ソゼさんが来る。来てくれる・・・。
早く。早く会いたい。ねぇアザミ。カイザー・ソゼさんが来てくれるんだって。
どきどき。


10/12 晴れ
カイザー・ソゼさんはまだ来ません。「希望の世界」でも何も返事してくれません。
どうしたんだろう。見てないのかな。それとも来るのに手間取ってるのかな。ここ、中に入るの面倒くさいから。
夜になっても待ってました。一日中待ってました。でも来ません。
私は不安になってまた書きました。「カイザー・ソゼさん。私の居場所分かってますか?」
一時間もしないうちにカイザー・ソゼさんは返事をしてくれました。「ちゃんと見てますよ。待ってて下さいね。」
良かった。


10/13 晴れ
カイザー・ソゼさん。今日も来なかった。本当にどうしちゃったんだろう。
「希望の世界」に繋いで来ない理由が分かりました。
「会いに行こうとしたけど先生に止められました。早紀さん。先生に僕が会ってもいいように頼んでくれませんか?」
なんだ。そんな事だったのか。私はようやく納得しました。確かにここは色々面倒くさいよね。
「わかりました。明日先生に頼んでおくね。」と書いておきました。明日先生に頼む。カイザー・ソゼさんが来る。
やっと会える。


10/14 雨
先生に頼みました。「カイザー・ソゼさんが来たら会わせて下さい。」って。
ああ、わかったよ。とそっけない返事。先生、ちゃんと聞いてるんですか?
先生は私を哀しそうな目で私を見ました。黙って首を横に振り、深いため息をつきました。
そして、何も言わずに行っちゃいました。何よ。私、変なこと言ってないでしょ。ただ頼んだだけなのに。
カイザー・ソゼさんに会いたいだけなのに・・・・!みんな邪魔する。なんで?邪魔しないでよ。
会わせてよ!


10/15 雨
お母さんに言ってやりました。あの先生ね、私のお願い聞いてくれないんだよ。嫌な奴だよね。
そうね、とそっけない返事。お母さん、ちゃんと聞いてるの?あの先生ヤな奴だよね。死んじゃえばいいのにね。
お母さんは私を哀しそうな目で見ました。黙って首を横に振り、深いため息をつきました。
そして、何も言わずに行ってしまいました。やめてよお母さん。同じじゃない。それじゃ先生と同じじゃない!
お母さんだけは私を信じてくれると思ってたのに。なんで?なんでみんなして私を変な目で見るの?
カイザー・ソゼさんにはまだ会えない。みんなが邪魔する。お母さんまで・・・・。
酷いよ・・・。


サキの日記11−「絶句」