希望世界 まめ日記

第十一週「対決」


2月28日(月) \はれ/
ボレロは忍者に転職した。
くさりレモンククラブかたびらを装備した。
防災頭巾に気合いを込めると忍者頭巾に変化した。
聖剣を天にかざした。蛍光灯から聖なる光が放たれた。
光を浴びたエクスカリバーは、妖刀マサムネに変身した。
腰の後ろに隠し盾を装備。何処から見ても完全な忍者になった。
ラカソ抹殺の任務遂行の為に・・・。ボレロ、いざ参る!
ニンニン


2月29日(火) うるうどし〜
ボレロは忍び足を使った!
カノンの情報によりラカソの居場所は割れている(カノン情報サンキュ!)
もちろん隠密行動は夜。真っ暗な闇の中、忍者ボレロは音も立てずに疾走した。
指令を復唱:ラカソこと川口豊の暗殺
今日は作戦の為の密偵。ヤツの家を確認する。
・・・住所通りの場所に川口家。結構いいマンションに住んでやがる。
本日の任務は終了!速やかに撤収。
次回はヤツの顔を確認せねばでゴザル。

守る会掲示板にも希望の世界掲示板にもラカソの書き込みは無かった。
代わりに奥田なんたらが「殺す」と一言だけ書いていた。
ウプ。弟をやっつけられて怒ってるのカナー?
ヤツの言葉にみんな怖がってる。よしよし。もう少し待ってくれな。ヤツは必ず俺が仕留める。
ターゲット、ロック・オン!


3月1日(水) はれっぽい
困った。川口家付近をいくら張ってても、奴の顔がわからない。
一日中張ってたけどラカソらしき人間は見つからなかった。見かけたのは若いカップルくらい。
どうしようー。これじゃ任務遂行できないじゃないか!
くそう。ヘタに家族と住んでると(しかもマンション!)ターゲットの特定がムズカシイ。
忍者の知恵を駆使して考えるんだ、ボレロ!
チ チ チ チーン
よしオッケー!いい方法思いついたゾ!
困った時のカノン頼み!メールで「ラカソの顔がわからない。調べて欲しい。」と送っといた。
フフフ。仲間を駆使するなんて、ボク頭イイな。
カノン。お前はボクの操り人形に過ぎない。しかし悪く思うなよ。
これもすべて、サキの為なんだ。ボクに任された重要な任務。よもや知らないとは言うまいな?
まかせとけって⌒☆


3月2日(木) くもりー
とりあえず隠密行動は続けてる。
けどラカソらしき人物はまだ見かけない。奴はちゃんと家に帰ってるのか?
夜も野球青年が素振りしてたくらいで特に何も無かった。
これじゃ任務遂行できないよ〜。いっそのこと火遁の術でも使おうかなぁ。
けど確かちょっと前にどっかで放火があったとかで騒いでたっけ。
犯人捕まったって聞かないな。
コワイコワイ(>_<)
警戒されてたらヤだしやめとこ。忍者の家業は暗殺だしね☆

カノンからはまだメールの返事が来ない。早くしろよ!
お前がちゃんとラカソの画像送ってくれないから任務が遅れてるんだぞぉ!
妖刀マサムネも血を吸いたがっててウズウズしてる。こいつを怒らせると怖いゼ?
なんかカキコも減ってるしー。カノンのせいだよカノンのせい。
ぷんぷん。


3月3日(金) ひなまつりっ
マンションの前で張ってると、夜また野球青年が素振りをし始めた。
爽やかだねー。と思って見てるとなんかモゾモゾしてる。
小石を拾ってたらしい。トスしてバットで打ってた。カン、って軽い音が響いてた。
おおー。良く飛ぶねぇ。感心してしばらく見てた。暇だったし。
何回か打った後、また小石を拾ってた。トスバッティングが再開した。
足の位置とかバットの角度とかを丹念に確かめてる。青春を謳歌する青年の姿に少し感動した。
カン、と軽い音。ガサっとボクの近くで音が聞こえた。ハハハ。見当違いの方向に飛んでら。
また打った。今度はボクの足をかすめてった。危ないゾォ。コントロール悪くなってきてるゾ?
カン。ガシ。ボクの腕に当たった。超イタイ!
てめ、ドコ打ってんだ!危ないじゃねぇか!心の中で叫んだ。
青年は目を細めてボクの方を見てる。小石をトス。バットを引いてぇ。カン!打った!ゴス。当たった!
ボクの手に!
指先に当たると強烈にイタイ。文句を言おうと思った矢先、また小石が飛んできた。
次々に飛んできてはボクに当たる。青年は無表情のままバッティングを続けてる。
っていうかボクを狙ってるジャン!明かにボクを見ながら打ってたぞ!
うわコイツ最低!てめぇ俺様を怒らせたらどうなるか思い知らせてやんよ!
怒りの電波を送ってすぐに帰った。コワイコワイ。変な人に目ぇつけられるのは嫌。
あー酷い目にあった。

家でメールチェック。ゼロ!
カノンちゃんどうしたよ。いつまで俺を待たせる気だよ。早くsakkyを救いたくねぇのか?
けど肝心のsakkyのカキコも今日は無かった。掲示板は昨日と同じ状態。
みんなラカソにビビってカキコしなくなっちゃったのカナ?
川口の画像早く送れっつの!どーせ腐ったデブなんだろ?
てゆーか絶対そうだよなぁ。あんな性格腐ったヤツは油ギッシュに違いない。
カノンー
はーやーくー


3月4日(土) ボレロ英雄記
本当は今日は行きたくなかった。
けど何度もメールチェックしてもカノンから画像は送られてきてない。
仕方ないから地道に隠密行動を続けることにした。
昼間はずっとメールチェックしてたから行くのは夜になった。
流星号にまたがり、ササッと迅速な移動。
一時間ばかりかけて到着!いい汗かいたゼ。
マンションの玄関前へ。ん?いつもの場所に誰かいるぞ?
近づいてみると、例の野球青年だった。けど素振りはしてない。
バットで肩をトーントーンと叩いてる。
闇の中に金属バットがチラチラ光るのがちょっと不気味だった。
変なヤツ。どうしようか。引き返そうかな?
そう考えてると、目が合った。

突然、ヤツは無表情のままこっちに走ってきた。
ん?ん?何でこっち来るの?考えてる間にもどんどん近づいてくる。
バットを振りかぶった。
ドン、という音と同時にお腹に衝撃が走った。
ナナメから振り下ろすカタチで、バットがお腹に当たってる。
僕がウッと声を漏らすと、ヤツは始めて表情を変えた。ニヤリと笑ってる・・・・。
「弟な、アバラ何本かイっちまったてよ。内臓にも影響出たらしい。」
始めて声を聞いた。僕が何か言おうとすると、バットが動くのが見えた。背中に強い衝撃。
膝がガクン、となって四つん這い状態になった。
「中学浪人決定だとさ。」
また背中に衝撃。ボク、バットで殴られてる。何回も何回も殴られた。
「この豚!」ヤツが叫んだ。
「何がsakkyを守る会だよ。ボレロ?笑わせんじゃねぇ!」
何回目かの衝撃で、ボクは思わず声を出してしまった。
カワグチユタカ・・・・・・
「ほう。どうやって調べたんか知らねぇがよく分かったな。俺の本名。」
なんでボクがボレロだって分かった・・・・
ラカソはバットでボクの頭をコツンと突っついた。そして「防災頭巾。」と一言だけ言い放った。
ボクは頭を抱えて縮こまった。体への衝撃が再び始まった。断続的に続いてる。
ああ、意識が遠のいていく。ヤツが何言ってるのか良く聞こえない。何か叫んでるけど・・・
風見はドコだだって?何でカイザー君がいきなり・・・・・ていうかボクヤバイじゃん・・・
ラカソ・・・不覚だった・・・・こんな顔だなんて聞いてないよ・・・・
なんだよこの強さは・・・ああ・・・ボクこのまま死んじゃうのカナ・・・意識が・・・
痛い・・・・・体が・・・・痛い・・・・・イタイ・・・・・・イタイ・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・イ・・・・・・・・・・・・・・タ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
イ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・???
あれ??全然痛くないぞ???????
確かに体に衝撃が走る。けど、それだけ。別に痛みは感じない。
ん?ん?これは?これは・・・・・・・・・これは・・・・・・・
これはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
防御力レベル特A・レモンクラブの鎧の効果ではないかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
むぅぅぅぅぅぅさすがさすがさすがぁぁぁぁ!!なんか力が沸いてきたゾォォォォォ!!
ボレロ・・・・・ふっかぁぁーーーーーーつ!!!!

シュバッ!
ボレロは立ち上がった!

その拍子にレモンクラブが二、三冊落ちた。そのくらいどうってこと無いサ!
ボク様の復活にラカソは驚いてた。ヤツは構わずバットを振りかぶった。
フッフッフ。甘ぁぁあぁぁい!お前の行動なんか予測済みさ!!

ラカンパネラの攻撃!
ボレロは腰からオナベのフタを取り出した!頭の前で盾を構える!
ガキィイイィイイィィイィィィィンッッッ!!!
ミス!ダメージを受けない!

腕に軽い衝撃がきたけど何てことない。うむ、むしろ心地よい衝撃だ。
ラカソの顔色が変わった。下に落ちたレモンクラブとオナベのフタを交互に眺める。
「お前、まさか本当にそこまで・・・・・。」
ウフーーーー!!オナベのフタをバカにしてたのは誰だっけーー???
クソ!と、やけになったラカソが今一度襲いかかってきた。

ラカンパネラの攻撃!ラカンパネラはバットを振り下ろした!
ミス!ボレロはひらり身をかわした!
ボレロの攻撃!ボレロは妖刀マサムネを取り出した
妖しい光がほとばしる!忍者の魂が覚醒した!!
秘技・妖刀乱舞!!!!!!!!
ズバズバズバッ!
ラカンパネラに70のダメージ!!!

だから言ったろ?こいつを怒らせると怖いって・・・。
妖刀マサムネは血を吸って御機嫌なようだ。ん?まだ吸い足りないって?
ラカソはうまくよけて腕を切っただけだった。パックリいっちゃってるけどネ☆
さぁぁて二回連続攻撃しちゃうぞーーー?
マサムネを構えると、腕を押さえたラカソと目が合った。
手から血が溢れ出てる。けどヤツは、傷の部分を見て痛々しくなるほど強く握っていた。
ガラガラ、とバットを引きずって、血の付いた手で再びバットを構えなおす。
腕の傷の部分を口に持っていった。何をするかと思ったら・・・・
ペロっと舐めた。目、笑ってる・・・・。
おやマサムネ君。もう血は十分だから帰ろうって?
仕方ない。キミがそう言うなら今日の所はこれで勘弁してやろう。
早速流星号を持ってきてまたがった。アディオス!敗者君。今度ヤルときゃもっとレベルアップしてから来いよ?
逃がさねぇ。背後で誰かなんかそう言ったような気がしたけど聞こえない聞こえない。
超特急で帰宅した。

フウ。今日の自分の闘いっぷりを思い返すとホレボレする。
家の近くで原チャが止まる音が聞こえて思わず外に出て確認したけどラカソはいなかった。
で、そうそう。ボクの今日の強さと言ったらホレボレする。
最強装備・・・・強すぎる・・・・・
ボク、無敵?敵なし?最強?
無敵無敵無敵無敵無敵ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!
今日はイイ夢見れそうだゼ。


3月5日(日) あぅ・・
ラカソ。結局止めは差せなかった。
追撃するべきか?フフ。手負いの鼠ほど何をするかわからない。
君子危うきに近寄らずってヤツだね。ボクはそんな無謀なコトはしない。
鎧にも改良を加えてもっと強くしておいた。20%増冊中。

マサムネ片手に近所を警備。ラカソはいないね?いないね?
昨日の「逃がさねぇ。」って声が蘇ってくる。コワイコワイコワイコワイコワイコワイ!!!
流星号の速さに付いてこれるとは思えないけど一応ね。
ボクは用心深い方だから。うん。ね。残心ってヤツよ残心。
近所ぐるっと一回りしたけどラカソはいなくてひと安心。
良かったー。ホントに追ってこられたらコワイコワイ。
フン。やっぱ追ってこられるワケねぇんだよ!流星号よか早い足を持ってるヤツはいないゼ?
真っ暗な道をテクテク歩いてると、向こうパッと何かが光った。ブルルンとエンジンのかかる音。
まさか・・・ラカソ!?光と音が凄い勢いで近づいてくる!
・・・・そのまま横を通り抜けて行った。
んだよビビらせんなよ!ラカソかと思っちまったじゃねぇかよ!!
「おい。」と後ろから声が聞こえた。振り向いてみた。
ラカソだった。
左腕にグルグルと包帯が巻き付いたままその手でグリップを握り、右手にはバットを持って、原チャにまたがって・・・・・
ヤツの後ろに乗ってるのは、誰??暗くて顔がよく見えない。
Uターンする格好でこっちを見てる。ブルン、と音がしたかと思ったら、もうバットが目の前に来てた。
一瞬のうちに装備のコトを考えた。大丈夫。強襲されてもこのパワーアップした鎧さえあれば・・・!!
コン、と軽い音がボクの頭に響いた。
その場に倒れ込んだ。
目の前がグルグル回って何がなんだかわからない。

なんか声が聞こえてきた。意外と簡単に見つかったな。そうね。で、どうする?まずはこの人が知ってる・・
一人はラカソ。もう一人は・・・・女の声だぁ。後ろに乗ってたの女の子だったんだ。
ボクは動ける分だけ動いた。二人の会話に割って入って土下座してた。
「ごめんなさい。ラカンパネラ様。ごめんなさい。ボクはまだ死にたくないです。ごめんなさい。」
このままでは殺されると思った。だから必死になった。
二人は顔を見合わせてた。なにやらごにょごにょ話してる。
ラカソが口を開いた。
「お前、俺があの『ラカンパネラ』ってやつだと思ってたのか?」
虚ろな目のままボクはラカソを見上げた。え?てゆーかラカソなんでしょ??
ラカソが笑ってた。「そう来たか。」なんて言ってる。
女の人は考え込んで「じゃあ他のメンバーなんてのも、いないかも・・・。」と呟いてる。
そんなコト、どうでもいいから、ボクを、解放シテクダサイ。お願いシマス。
ラカソがニヤニヤ笑ってる。「ヤダね。お前には弟の恨みもあるしな。」
女の人が「ちょっと川口君・・・。」と何やら止めようとしてる気配。
ガンバレ女の人。ボクは手足が痺れてて動けないんだ。
「聞きたいコトは山ほどあるんだがな。とりあえず弟の敵を討っとかねぇと気が済まねぇんだよ。」
コワイことを言う。ボクが何をしたと言うんだ。エアは悪いヤツだからやっつけただけだ。
もう二人とも原チャから降りてる。ラカソはバットでコンコン、と地面を叩いた。
「また今度でいいじゃない。」と女の人。そうだ。もっと頑張ってこいつを止めてよ。
「止めるなって渡部。今がイイんだよ今が。」
渡部・・・?あ・・・・この女の人・・・・・・・偽sakkyだ・・・・・・・・
「そう。じゃぁもう勝手にしたら?」・・・・やっぱ止めてくれなかった。
「そうさせてもらう。」とラカソがニヤニヤしながら言った。こいつなんでそんなにニヤニヤしてるんだ?
もしかして・・・・・・楽しんでる?
イチローみたく袖を触ったりスタンスを確かめたりしてバットを揺らしてる。
ザッザッと足場を固める音が。
「安心しろ。死なない程度にやるのは慣れてる。」
一呼吸置いた後、耳元でビュン、という音が鳴った。
次の瞬間にはスコーン、と心地よい音が脳に響いてきた。

ぴぎゃあ

ボクは叫んでた。
目の前が真っ暗になってた。遠くで「やべぇ。」とか言ってるのが聞こえたような聞こえなかったような。
そのまま意識は飛んでった。

目が覚めた時、真っ暗なまま周りに人はいなかった。
あいつら、ボクが叫んだから逃げちゃったのかな。けど誰も助けにこなかった。
ボク、ほったらかしにされてたっぽい・・・。
グラグラ揺れながら家に帰った。
守る会へ繋いだ。今日もカキコはなし。メールチェック。ゼロ。
ケータイちゃんを取り出した。カノン・・・こうなったら直接・・・・
あ、けどボクあいつの番号しらないや。
着信履歴を見てみた。非通知設定ばっか。
連絡取れない。
助けてよぅカノン。ラカソが襲ってくるよぅ。偽sakkyまであっちにいるよう。
ボクヒトリじゃ寂しいよぅ。サキも・・・・・・ドコ行っちゃったのさぁ・・・・・・
グスン。


第12週「集結」