序章

第1章 「後継者」
 カイザー日記
  1.ハッキング
  2.騙り
  3.チャット
  4.精神病院
 サキの日記
  1−転生 
  2−約束
  3−消失
  4−再臨

第2章 「再始動」

 カイザー日記
  5.希望の世界
  6.学校と病院
  7.オフ会
  8.夢
 サキの日記
  5−接触
  6−信用
  7−序曲
  8−無音

第3章 「鎮魂歌」
 カイザー日記
  9.僕の日記
  10.オクダ
  11.BATTLE
  12.中へ
 サキの日記
  9−決意
  10−鉄壁
  11−絶句
  12−祈誓

第4章 「終着地」
 カイザー日記
  13.さようなら
  14.ワタベさん
  15.終着地
  16.光の世界
 サキの日記
  13−慟哭
  14−脱出
  15−迷走
  16−奇跡

エピローグ
  >>影の世界






第一三節 「慟哭」


10/31 晴れ

今日も無駄に空は晴れてます。雨でも降っちゃえばいいのに。
なんとなく病院をウロウロしてみました。天気がいいから、屋上にでも行ってみようかな。
階段を上っていくと、看板が出てました。「この先立入禁止」だって。無視。
屋上に出る扉には鍵がかかってました。もう、屋上にすら出られなくなってる・・・。
私はオクダを給水塔に突き落とした時の事を思い出しました。
アザミをバラバラにされて怒ってそれで・・・でも、殺さなかった。殺しちゃダメだと思った。
だから、助けを求めるオクダの手をとって、引き上げた。そうだよ。私、殺さなかったんだから。
人を殺してしまうほど私は狂ってなんかない。ただ、記憶が無いだけ。それ以外は、マトモだよね?ね?
・・・・答えてくれる人がいません。


11/1 大雨

昨日のお願いが通じたのか、外は大雨になりました。もっと降っちゃえ。
ベッドのシーツがベトベトして気持ち悪いです。湿気ってる。、今日は来てくれません。
こんな時、いつもはお母さんがシーツを新しいを持ってきてくれるんだけど、たぶんもう来てくれない。
シーツはこのまま汚れっぱなし。パジャマもこのまま。下着も、このまま。
雨のわりには気温が高く、汗もかいてしまいました。ベトベト。着替えはナシ。
ちょこっとだけ、雨を憎んでしまいました。
自分から呼んだのにね。


11/2 曇り

久々にアザミのお母さんを見かけました。相変わらず先生の与えた人形を殴ってる。
あんな人でさえ構ってくれる相手がいるのに。私には、いない。誰もいない。
食事を持ってきてくれる人も、会話はしてくれない。話しかけてもにっこり笑って、それだけ。
私にはなんとなくその理由がわかるよ。私が、先生の子供だからでしょ?
大人ってそんな事ばっか気にする。くだらないよ。人間関係なんて。
ほら、私、人間関係なんて難しいコト考えてる。「中」にいるどの人よりもマトモなコト考えてると思わない?
ふふ。誰に向かって言ってるんだろ。


11/3 晴れ

先生が来ました。お母さんが来て欲しかったのに。
「一昨日な、この前の奴が通院やめるって言ってたぞ。」それだけ言って帰ろうとしました。
私は聞き返して少し引き留めました。この前の人って、誰?
先生は名前を・・・・ちょっと不思議な響きの名前・・・・を言いました。その名前に心当たりはないけど。
私は最初それが誰なのかわかりませんでした。でも、「この前の奴」って言ったら・・・・それって、もしかして。
カイザーソゼさん?私は思わず叫んでしまいました。先生は変な顔して言いました。
「カイザー・ソゼ?ああ、お前はそう呼んでたな。そいつだ。」
そして先生は部屋を出ました。私は少し、いや、かなり悲しくなりました。カイザー・ソゼさん・・・・・
やっぱり、もう来ないんだね。


11/4 曇り

ベッドの横の机にお腹をぶつけてしまいました。お腹の傷がまたうずきました。
痛いです。とっても痛かったです。しばらくじっとしてたら痛みはなんとか引きました。
そこで、私はふと疑問に思いました。この傷は、どうしてできたんだろうって。
昔の記憶が無いのでよくわかりません。K.アザミは何て言ってたっけ?
ああそうだ。私が自分で刺したって・・・・本当かなぁ。自分で自分のお腹を刺すなんて、ちょっと信じられない。
今度お母さんに聞いてみよ。


11/5 晴れ

また先生が来ました。お母さんは来ません。
仕方ないから昨日の疑問は先生に聞いてみることにしました。
先生は私の様子だけ見て帰ろうとしたけど引き留めました。「私のお腹の傷、なんでできたの?」と聞きました。
先生は私をなんだか哀れそうな目で見ました。「知らない方がいいぞ」だって。
何それ。余計気になる。私は「いいから教えて」と言いました。先生は深いため息をつきました。
そして、何を思ったか急にけけけと笑いました。いいだろう。教えてやるよ。そのかわり後悔するなよ。
後悔しないから教えて、と私。それから先生はまたけけけと笑って・・・・・・・言いました。
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あんな事日記に書きたくない。


11/6 曇り

昨日まで、お母さん来て欲しいなってずっと思ってたけど、もうそんな風に思わない。思えない。
一日中、お母さんが来ないように祈ってました。もうマトモにお母さんの顔見られない。
先生も酷いよ。私がショック受けるの知ってて言ったんだから。
今でもドアが何時開くのかビクビクしてます。お母さん来たらどうしよう。先生も嫌。
怖いよ。涙が出てくるよ。震えが止まらないよ。聞かなきゃ良かった。知らなきゃ良かった。
外に出たい。ここにいると逃げられない。外に出たい。外に出たい。外に出たい。外に出たい。
ここから、出して。




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