序章

第1章 「後継者」
 カイザー日記
  1.ハッキング
  2.騙り
  3.チャット
  4.精神病院
 サキの日記
  1−転生 
  2−約束
  3−消失
  4−再臨

第2章 「再始動」

 カイザー日記
  5.希望の世界
  6.学校と病院
  7.オフ会
  8.夢
 サキの日記
  5−接触
  6−信用
  7−序曲
  8−無音

第3章 「鎮魂歌」
 カイザー日記
  9.僕の日記
  10.オクダ
  11.BATTLE
  12.中へ
 サキの日記
  9−決意
  10−鉄壁
  11−絶句
  12−祈誓

第4章 「終着地」
 カイザー日記
  13.さようなら
  14.ワタベさん
  15.終着地
  16.光の世界
 サキの日記
  13−慟哭
  14−脱出
  15−迷走
  16−奇跡

エピローグ
  >>影の世界






第五節 「接触」


8/22 晴れ

「希望の世界」にアクセスすると管理人のsakkyさんが向かえてくれました。
sakkyさん。私と名前が似ててなんだか嬉しいです。最近リニューアルしたらしいことが書いてありました。
何故「希望の世界」に懐かしさを感じてしまうのか私にはわかりません。そして何故、悲しくなるのでしょうか。
掲示板に行くと名前の欄に「渚」と既に書いてありました。「希望の世界」では私は「渚」になるのでしょう。
挨拶をして今日の所はおしまいにしました。sakkyさん、何か返事をしてくれるかな。
なんだかドキドキします。


8/23 晴れ

「希望の世界」に「K.アザミ」が書き込んでました。「初めまして」だって。アザミ!来てくれたんだね!
身体はバラバラになってしまったけど、アザミの意志はまだ生きてる!嬉しい。アザミがいてくると心強いよ。
でも「K」って何なんでしょう?何かの英語の略かな?Keep?Kind?なんか違うな。K・・・・・K・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・「Killed」。殺されたアザミ。そっか。こっちのアザミはオクダに殺されちゃったんだよね。
だけどあっち側・・・・・・「希望の世界」の方では意志が生きてる。少し寂しいけど私は全然平気だから。
また一緒に遊ぼうよ。


8/24 曇り

sakkyさんが返事をしてくれました。三木という人も書き込んでました。色んな人がいて楽しいです。
三木さんは「やっと来てくれましたね」とだけ発言してます。誰に向かって言ってるんだろう?ひょっとして、私?
私が感じた懐かしさ、三木さんの発言、やっぱり私は「希望の世界」に来たことがあるのかな?思い出せない。
病院で目覚める前の記憶は相変わらずポッカリと抜け落ちたままです。このまま一生戻らないかもしれない。
・・・・・・戻らなくったって構わない。私は今新しい世界で生きてる。それで充分だよ。
辛い思いはもう、嫌。


8/25 晴れ

K.アザミが私に話しかけてくれました。「ここでは自分に正直になるべきですよね。渚さんもそう思いません?」
律儀に「さん」付けしてくれてます。アザミ、私もそう思うよ。「本音で話しあえるのっていいよね。」
私もちゃんとレスしておきました。本音で話し合う・・・・・・。書き込んだ後、私は少し不安になりました。
本当に?本当にみんな本音で話してくれてるのかな?私とアザミはちゃんと自分の姿をさらけ出してる。
sakkyさんは?三木さんは?信用しても大丈夫なんでしょうか。私の中の何かが訴えてきます。
シンヨウスルナって。


8/27 晴れ

今日はお母さんから電話がありました。今度ワタベさんという人が面会に行くので会って欲しいとの事です。
別に会うのは構わないけど・・・・なんでその名前を懐かしく感じてしまうんでしょうか?
「希望の世界」と同じ響きを持ってるように思えます。またあの感じ。私はワタベさんに会ったことあるのかな?
目を閉じて体中の神経を研ぎ澄ましてみました。身体に染み込んだ記憶の中にワタベさんは・・・・・・
居ない。少なくともこの身体はワタベさんという人との接触は体験していません。断言してもいいと思います。
私は、ワタベさんに会ったことがない。


8/29 晴れ

ワタベさんが面会に来ました。思った通り見た事のない顔でした。彼女も私の顔を知らなかったらしいです。
お互い「初めまして」と挨拶した後、ワタベさんは話し始めました。
「あなたがサキさんね。あなたが記憶を失う前の日記、見せてもらったよ。はっきり言って、凄くショックだった。」
「正確にはあなたと、あなたのお兄さんの日記・・・・ごめん、嫌なこと思い出させちゃったかな。」
「でもね、一番ショックを受けてるのは『渚』さん・・・あなたのお母さんだから。」
「今はあなたが『渚』さんだけど、それはクッキーのせいで・・・説明すると長くなる事なんだけどね。」
「私はあなたを『サキ』さん、あなたのお母さんを『渚』さんって呼ばせてもらってるの。」
「私が会いに来たのはね、今『希望の世界』を管理してる『sakky』が誰なのかを知りたいから。」
「自己紹介が遅れたね。私は『希望の世界』では『三木』って名前を使ってます。」
「でも最近『三木』って名前を他の誰かが勝手に使ったりしてるの。私はそれが誰なのかも知りたいのよ。」
「今のあなたにはわけがわからないかもしれないわね。今日はとりあえず私の存在を知って欲しかったの。」
「夏休みが終わるまでにもう1度来るね。いいでしょ?」
私はいいですよ、と答えました。私もこれだけでワタベさんとの関係を終わらせるのは嫌でした。
今日のワタベさんの話は私にはほとんど理解できないものでした。けど、とても重要な事であると感じました。
他にも私にはわからない話を一方的に話した後、ワタベさんは帰っていきました。
私はベットの下からアザミを取り出し、そっと語りかけました。私の周りで色んなことが動き始めてる。
なんだか怖いよ。


8/31 晴れ

またワタベさんが来ました。今日も私にはわからない事を話して帰っていきました。
今のsakkyが誰なのか。最近現れたもう一人の三木。K.アザミ。ワタベさんはアザミを知らないみたいです。
ワタベさんの話によると、ワタベさんは私のお母さんの代わりに色々動いてるそうです。
「渚さんはそっとしといてあげたくて。」と言ってました。私は何故そんな事をするのか聞いてみました。
日記のせいだと答えてました。「あの日記を読むとね、ほっとけないのよ。あたなと、あなたの『希望の世界』を。」
私はその言葉の意味を理解することはできませんでした。けど、私は確実に何かに巻き込まれてる。
それだけはわかります。




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