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序章

第1章 「後継者」
 カイザー日記
  1.ハッキング
  2.騙り
  3.チャット
  4.精神病院
 サキの日記
  1-転生 
  2-約束
  3-消失
  4-再臨

第2章 「再始動」

 カイザー日記
  5.希望の世界
  6.学校と病院
  7.オフ会
  8.夢
 サキの日記
  5-接触
  6-信用
  7-序曲
  8-無音

第3章 「鎮魂歌」
 カイザー日記
  9.僕の日記
  10.オクダ
  11.BATTLE
  12.中へ
 サキの日記
  9-決意
  10-鉄壁
  11-絶句
  12-祈誓

第4章 「終着地」
 カイザー日記
  13.さようなら
  14.ワタベさん
  15.終着地
  16.光の世界
 サキの日記
  13-慟哭
  14-脱出
  15-迷走
  16-奇跡

エピローグ
  >>影の世界






第三節 「消失」

7/29 晴れ

私もとうとう「作業」に加わる事になりました。園芸をする事にしました。お花を育ててます。
アザミは暑いのが嫌らしく、部屋に籠もりっぱなしです。外は暑いけど、「作業」中はオクダも居なくて気楽です。
アザミの親は屋内で「作業」をしてるらしく、夜の自由時間まで会いませんでした。さっき会ったら殴られました。
この前、手で頭を覆った状態で殴られたので指を痛めてしまい、4日ほど日記が書けませんでした。
指の痛みはとれましたが、殴られる痛みには慣れる事ができません。オクダは相変わらずふらふらしてます。
あれ以来オクダはまた大人しくなりましたが、私達を見る目は何処かおかしいと思いました。何かするつもり?
安心できません。


7/31 晴れ

暑い日が続きます。外での作業は暑くて結構疲れるけど、園芸は楽しいのでそんな苦にはなりません。
問題は室内の戻ったらアザミの親に殴られる事です。オクダの笑う顔にも嫌気が差してきました。
私はとうとう我慢できなくなり先生に言いに行きました。これ以上殴られるのは嫌。痛いのはもう嫌。
先生はきちんと話を聞いてくれました。「なんとかする」と言ってくれたので大丈夫だと思います。
アザミは何を心配してたんでしょうか?聞いてみたら、それは今だから平気なの、としか答えてくれません。
アザミの親は先生がなんとかしてくれるけど、オクダは相変わらずニヤニヤして私達を見てます。
少しその視線が気になりました。私の方は見てない気がします。視線の先は、アザミ?アザミを見てるの?
不気味です。


8/2 晴れ

先生はアザミの親に人形を与えました。アザミの親はその人形を殴るようになりました。
殴る対象は何でも良かったんでしょう。驚くほどあっけなく私達は解放されました。でもまだ落ち着けません。
解放された事を喜ぶのは私とアザミだけのはずです。なんでオクダまで喜ぶんでしょうか。
アザミの親が私達を殴らずに人形を殴ってる所を遠巻きに見て、今までとは違う笑い声をあげてました。
私達はすぐに部屋に引っ込みました。殴られる事からは解放されたのに、私達はあまり喜びませんでした。
お腹の傷がまた痛み始めました。


8/5 晴れ

アザミが消えました。私が「作業」を終えて部屋に戻ると、既にその姿はありませんでした。
オクダも居なくなりました。アザミとオクダが同時に消えました。オクダがアザミを連れていってしまったんです。
私は二人を捜しました。私の行ける場所は限られてます。それを超えて逃げられたら、私には何も出来ません。
オクダにとって、アザミの親はアザミを奪うのに邪魔な存在だったのでしょう。それが今はいなくなったから。
私は自分の愚かさを呪いました。オクダがアザミを狙ってる事は知ってたのに。私がもっと注意してれば・・・・・!
アザミ、何処に居るの?


8/7 晴れ

今日はお母さんが面会に来てくれました。アザミを紹介したかったのにまだ見つからないので出来ませんでした。
近況報告はしたけど結局アザミの事は言えませんでした。お母さんも近況報告をしてくれました。
私の事を訪ねに来てくれた人がいたようです。ワタベという女の人らしいのですが私はその人を知りません。
お母さんも知らないらしいです。ワタベさんは私が家にいないこと知ったら帰ってしまったそうです。
お母さんが帰った後、私はまたアザミを捜しました。その時も何故かワタベという名前が頭から離れませんでした。
何者なんでしょうか。


8/8 晴れ

ワタベという人も気になりますが、私は今それ以上にアザミの行方が気にかかります。
オクダが私が行けない場所から出てきました。一人でした。私は「作業」を中断してオクダに詰め寄りました。
アザミを何処へやったの?と聞いてもオクダはいつもと同じ嫌な笑い声をあげて答えてくれません。
何度も問い詰めるとオクダは笑いながら「捨てちゃった」と答えました。私はこの時既に泣いてました。
泣きながらオクダにアザミの行方を聞きましたが、もう一度だけ「捨てちゃった」と答えて後はずっと笑ってました。
私はアザミの無事の願いながら捜しました。行ける所全てを捜しました。必死になって捜しました。
一緒に居ようって約束してから、数えるほどしか日はたってません。約束したのに。ずっと一緒って言ったのに。
・・・・アザミは見つかりませんでした。


8/9 晴れ

中庭に座り込んでここ数日の事を考えました。アザミ。アザミの親。オクダ。ワタベさん。
何であいつをオクダって名付けちゃったんだろう?ワタベさんって誰?そして、アザミは何処へ行っちゃったの?
そんな事が頭の中をぐるぐる回りました。何て事なく中庭に居る人達を身ながら考えてました。
ふと、地面を掘ってるおじさんが目に留まりました。妙な違和感を感じました。なんだろう、と思って近づきました。
寄ってみて気がつきました。おじさん、いつもと掘ってる場所が違う。気になって理由を聞いてみました。
いつも掘ってる場所を取られちゃったって。その場所は確かに不自然に掘り返した跡がありました。
私は憑かれたように掘りました。手が泥だらけになりながら掘りました。そこで見つけたんです。アザミを。
泥まみれになったアザミが、バラバラになったアザミが、そこに居ました。
何処かへ消えてしまった心はもう戻らないかもしれない。アザミはもう話しかけても何も答えてくれません。
私はアザミの頭を持ち帰り、抱きしめました。こんな姿になっちゃって。ごめんね。何もしてあげられなくて。
ごめんね。約束は守るから。アザミ、私がいつも一緒にいてあげる。約束だもんね。ずっと一緒だよ。
アザミが笑ってくれた気がしました。




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