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序章

<追撃編>


第1章 「傷」
 第1週 再会
 第2週 依頼
 第3週 怨恨
 第4週 悪魔

第2章 「鎖」
 第5週 新参
 第6週 裏道
 第7週 到達
 第8週 連結

第3章 「塊」
 第9週 下僕
 第10週 道化
 第11週 対決
 第12週 集結

第4章 「駒」
 第13週 焼跡
 第14週 疾走
 第15週 帰巣
 第16週 追撃

<迎撃編>

プロローグ
 第0週 覚醒

第5章 「溝」
 第17週 来訪
 第18週 濁流
 第19週 虎視
 第20週 奈落

第6章 「膜」
 第21週 裏側
 第22週 下降
 第23週 沈没
 第24週 藻屑

第7章 「戦」
 第25週 本陣
 第26週 奔走
 第27週 失策
 第28週 瞬殺

第8章 「蟲」
 第29週 継承
 第30週 歯車
 第31週 撃破
 第32週 終焉







第二十二週 「下降」

5月29日(月) はれ

西原さんが優しい人だったことを忘れてた。
「横山君、最近休んでるんだね。」
横山と僕が話してるときにクラスに来てくれることもあった。
そんなときは僕は横山をおざなりにして西原さんとのお喋りを優先してた。
だから二人が話す機会なんて全然なかったのに。
それでも彼女は横山のことを覚えてた。そしてこうして気にかけてくれている。
僕は例によって「知らない」と答えた。
・・・・このままでいいのだろうか。
横山の親も心配し始めたし、西原さんまで気にかけてる。
唯一事情を知ってる僕。ブックマークを消そうと思いながらも消せずにいた「絶望クロニクル」。
久々に行って見た。管理人の「シャーリーン」は湖畔を見ても相変わらず書き込みはない。
こいつは何者なんだ?どうゆうつもりでこんなサイトを立ち上げた?
サイトの更新は1年くらいしてない。掲示板があるのに管理人はいない。
「王蟲」と「ロロ・ロマシ」の二人が消えても湖畔は動き続けてる。
今更どうすることもできないさ。


5月30日(火) はれ

どうも本格的に横山が行方不明なったことが問題になってきた。
先生が「誰か心当たりあるヤツいないか?」と聞いていた。
誰かが「秋山はあいつと親しかったよな?」と言った。
僕はまた「知らない」と答えた。
声が裏返った。心臓はドキドキしまくってた。
「お前耳赤いぞ」と言われた。それでも「知らない」と答えた。
変な視線が集まった。みんなが僕を見てる。
耳はますます赤くなって汗が出てきた。
誰も何も言わなかった。黙って疑惑の目を向けてくる。
僕は下を向いたまま時が過ぎるのを待った。
とても長く感じた。


5月31日(水) あめ

みんな僕のことを避けてるような気がする。
目が合ってもすぐにそらすし、話し掛けてもくれない。
僕が教室に入った途端に話をやめたグループもある。
陰口たたいてやがる。
横山が行方不明になったのと僕が関係してるんだと思ってるんだ。
勝手に思うがいいさ。僕は犯罪行為をした覚えなど無い。
最近思うようになってきた。僕が逃げ帰ったのは正解なんじゃないかって。
怖いと感じるのは危険察知に他ならない。
横山はその能力に欠けていた。遊び半分に足をつっこんだ罰だ。
第一、何かあったら逃げることくらいできたはずだ。
あの男が「ダチュラ」という保証も無いのにホイホイついていった横山が悪い。
この行方不明騒動は横山自身の責任と言える。
西原さんだけはいつも通り接してくれてる。
「顔色悪いよ」って言われたけどそんなことは無い。
僕は至って平気だ。


6月1日(木) はれ

僕の机に大きく「うそつき」と彫られていた。おかげでノートが書き辛かった。
どうも僕はイジメの対象になったようだ。
でも返って気楽な気がする。横山のことを面と向かって追求されないからだ。
もともと僕はターゲットにされやすい人間だし。これくらい耐えられるさ。
それに、こんな僕にも西原さんは構ってくれる。机のことには触れないでいてくれた。
話題は例によって「絶望クロニクル」のことだった。
西原さんはやたら怖がってた。どうも風見君のことを思い出して以来、ネットに対する恐怖が高まったようだ。
そこで横山が行方不明。恐怖心はますます煽られる。
おかげで西原さんはこんな突拍子も無いことを言い始めた。
「あのページと関係あるのかな?横山君、私達と親しかったから。」
西原さんは声が大きい。またみんなに変な目で見られた。
関係無いでしょ、と軽く言っておいた。余裕の態度でいれば怪しまれることもない。
「涙目になってるけど平気?」と言われた。
平気だと言うのに。
とりあえず家に帰ったら久々に王蟲アカウントのメールチェックをしておいた。
ダチュラや紅天女のメールがチラっと見えたけど量が多かったので今日は受信だけにしておいた。
それにしてもキーボードが打ち辛い。
手が震えてるせいだろうか。


6月2日(金) はれ

「うそつき」が一つ増えていた。消しゴムのカスが中に溜まってしまって汚い。
廊下ではなぜか渡部先輩に話しかけられた。しかもとんでもない話だった。
「西原が言ってたぞ。なんか例のページのせいでお前のクラスのヤツが行方不明になったんだって?」
どうしたらそうなるのか、西原さんは「絶望クロニクルと関係アリ」と確定してしまったようだ。
「大丈夫なのかよ。俺もあんな勘違いされた身だからな。どうも他人事には思えなくて。」
大丈夫ですよと言ってあげたかったけど、何故か声は出なかった。
西原さんを探さないと。頭の中ではその事しか考えてなかった。
「何がどうなってるのか説明してくれよ。」
渡部先輩の真っ直ぐな目が僕に突き刺さった。
僕にもわからないんです。自然とこの言葉が出てきた。
嘘は言ってない。ホントに僕には横山失踪の全貌はわからないんだから。
原因は知ってるけど。
渡部先輩は「そうか」と納得してくれた。「とにかく俺に迷惑かかるような真似はやめてくれよな」
ごもっとも。そのまま帰っていった。西原さんが何処にいるのか聞きたかったけど遅かった。
他人のクラスには行けないから西原さんが来るのを待つしかなかった。
やっと来たかと思ったら、僕の机が汚くて弁当が置けなかった。
色々聞こうと思ったけど、机の説明をした方がいいかとか他のことを考えてしまった。
そうしてるうちに西原さんが机に書いてある文字を読んだ。
「うそつき・・・」
クラスの誰も目を合わせてこなかった。
西原さんは「出直した方がいいかな?」と言って戻ってしまった。そんな必要無いのに。
仕方ないから僕は一人で弁当を食べた。
だいぶ残した。


6月3日(土) はれ

放課後、西原さんが駆け込んで来た。
幸い僕は机の掃除をしてたのでクラスに残ってた。
溝にハマった消しゴムのカスは意外と取り辛いことを体感してる最中だった。
何かの本を持ってきてた。カスが散らばってるのも気にせずパサっとと机に広げてた。
ウチの中学の名簿だった。
「これ見てこれ!」と西原さんが指差した。
僕らのクラスじゃない。指差したのは他のクラスで僕の知らない名前ばかりだった。
伊藤、尾形、風見、川口、北村・・・・・
風見・・・・

風見祐一

西原さんの声が遠かった。
あのユウイチは風見君の名前だとか何とかうろたえてた。
姉の名前が渡部なんだからそんなはずないのにと思ったんだけど
ネットでの自称してるだけなんだしそれを信じるほうが間違ってるような気もするけど
渡部ユウイチさんという全く関係ない人がいるのかもしれないと考えても
やっぱり風見君とネットの「ユウイチ」には何かしらの関係があるように感じてしまうのは
西原さんが「絶対関係有るよコレ」とわめいてるせいでぼくもそんな気になってきたのもあるし
何より僕自身がこりゃ偶然じゃないだろって直感してはいるが
それはつまり僕はとても嫌なことに巻き込まれてるってことになるから
どうしても信じたくないんだけど関係無い関係無いと思えば思うほど
関係有るように思えてしまうのは何故だろう。
確かに偶然にしては怖すぎる偶然だ。
西原さんはもう完全に「関係アリ」と信じてしまったので僕は何も言えなかったし
僕が何か言っても既にあのページと横山の行方不明を繋げてる時点で説得不可能というか
そっちは本当に関係有るから何とも言えないんだけれど
風見君とユウイチが関係有るとすればなぜに渡部って名前がどっから出てきたかをどう考えてるのか
それはわからないだろうし僕にもわからないし本人に聞いてみればいいって話になって
ということは僕はやっぱり「絶望クロニクル」と縁を切ることができなくて
王蟲の名前を捨てることができなくてロロ・トマシこと横山との関係もバレる可能性も高まって
知らないの一点張りで頑張ってる僕はますます立場がまずくなって
でも風見君とユウイチについては考えすぎってことも有るからそんなに心配する必要も
ないようなきもするけど西原さんは関係アリって信じちゃってるからこのままほっとくと
ドンドン絶望クロニクルが広まって何かの拍子で僕が王蟲で横山がロロ・トマシであったことがバレて
しまいにはオフ会の事までバレて僕が逃げ帰ったことも非難されなくもないけど
そこまで最悪の状況も考えて行動するべきなのかと考えてみると
いずれにしろ僕はまた絶望クロニクルに戻ってユウイチと風見君の関係をハッキリさせなくては
いけないかもしれないけどそこまでしなくても今の状況くらいは知っておかないと
今度の対策が練りようが無いというか西原さんが怖がるから絶望クロニクルが広まるのであって
彼女の不安を取り除くためにはやはりユウイチと風見君のことをハッキリする必要があって
要は僕はもう絶望クロニクルから逃げられないのではないだろうかと考えてしまうのは
考え過ぎではないといってもいいと誰かに言って欲しいけど
肝心の西原さんがそう言ってくれるわけないからなんというかさっきから同じ様なことが
頭の中をグルグル回ってるのは誰もせいでもなく他ならぬ僕の思考であって
こんなまとまりのないことを全部日記に書いてもキーボードの打ちすぎで指が疲れるだけだから
もう考えるはよそう。
こうゆう冷静な判断ができるウチは大丈夫だ。
動揺してない証拠だ。


6月4日(日) はれ

風見君のことがきっかけってワケではないけど、僕は「王蟲」に戻ってみることにした。
溜まってたメールを読んでみると、何気に酷いことになってた。
「オフ会どうだった?ドタキャンして悪かったな。」
「最近カキコしてないけど何かあったのか?」
「ロロ・トマシに何をしたんですか?」
「無事なら返事くれ」
「私は知ってるんですよ、王蟲さん。アナタの正体を。」
「ロロ・トマシは行方不明になったんですよ?何も知らないじゃ済まされないでしょう」
「いい加減返事をして下さい」
「いつまで無視するつもりなのですか?」
「暴露してもいいんですよ」
「おーい返事してくれよー」
「早く返事をしなさい」
等々・・・・

ダチュラからはオフ会の様子を聞かれただけだったが
もっと大量にメールをよこしてるヤツが居た。ほぼ毎日。
紅天女だった。
「王蟲さんの正体知ってるんですよ」って・・・・
掲示板はジャンクも湖畔も普通に流れている。ユウイチも当たり障りのない事を書いてる。
湖畔ではもう王蟲とロロ・トマシが居ないことには触れられてない。
なのに紅天女はしつこく僕を攻めたてていた。
僕を知ってるって。

嘘だろ。





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