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序章

<追撃編>


第1章 「傷」
 第1週 再会
 第2週 依頼
 第3週 怨恨
 第4週 悪魔

第2章 「鎖」
 第5週 新参
 第6週 裏道
 第7週 到達
 第8週 連結

第3章 「塊」
 第9週 下僕
 第10週 道化
 第11週 対決
 第12週 集結

第4章 「駒」
 第13週 焼跡
 第14週 疾走
 第15週 帰巣
 第16週 追撃

<迎撃編>

プロローグ
 第0週 覚醒

第5章 「溝」
 第17週 来訪
 第18週 濁流
 第19週 虎視
 第20週 奈落

第6章 「膜」
 第21週 裏側
 第22週 下降
 第23週 沈没
 第24週 藻屑

第7章 「戦」
 第25週 本陣
 第26週 奔走
 第27週 失策
 第28週 瞬殺

第8章 「蟲」
 第29週 継承
 第30週 歯車
 第31週 撃破
 第32週 終焉







第七週 「到達」

1月31日(月) 晴

荒木のコトを想った。風見がsakkyなら、荒木を燃やしたのは誰なんだ。
やはり風見の言う「もう一人のsakky」か。それが、わからない。
あの黒装束は風見じゃない。・・・なかったと思う。それすらあやふやになってきた。
風見くらいの背格好なら、それもあり得る。結局顔は見えず仕舞いだったからよくわからねぇが。
あの日に荒木の家は燃やされた。
燃える荒木の姿を想像する。黒装束が家に火を放つ。
あの荒木が燃える・・・・どんな顔をして苦しんだんだろうか。どんな悲鳴をあげたんだろうか。
胸が痛む。せつなくきゅっと引き締まる。奥田の声が聞こえた気がした。「ソレが気持ちイイんだろ?」
その通りだよ。たまらねぇんだよ。
風見の痛々しい傷跡もまた・・・・俺の胸を熱くする。
早くメールをくれ。一緒にsakky探そうぜ。
「希望の世界」は飽きずに「a」で埋められている。
素敵だ。


2月1日(火) 晴

弟との会話がどうも後ろめたいものになる。
「風見のヤツさぁ。言われてみればなんか狂ってたかもしれないんだよなぁ。
 つっても防災訓練の時一人だけ駆けだしたコトがあった、とか下らないことなんだけど。」
俺は風見に会ってるんだ。だが約束があるので言えない。
いっそのこと風見には黙って言ってしまおうかとも思う。
だかそれをやると、sakkyへの道が遠のくような気がした。
「なぁ。お前風見と親しかったのか?」
親友のようなら、無事にやってる・・・とは言えない状態だが、とりあえず生きてはいるコトを教えてもいいな。
「いや、そんなすっげぇ親しいってワケではなかったけどサ。一応同じグループの仲間だった。」
まぁ普通の友人か。教えるか迷っていると、「それにさ」と話を続けた。
「やっぱ知り合いが行方不明とかになっちゃうとさぁ・・・・・・心配じゃん。」
最後のセリフにはわざとらしい照れがあった。
嘘つけ、と頭を軽く叩いてやった。大きな音を立ててフっ飛んだ。
へへへと笑いながら血を拭っていた。口の中を切ったらしい。
「ホントだよぉ。心配なんだって。」
それからフラフラと立ち上がった。血をペロペロ舐めている。味わってる様だった。
イカレた弟だよな。心の中で言ってやった。
ヤツは喜んでるように見えた。


2月2日(水) 晴

「さて、そろそろsakkyのあぶり出しを始めたいと思います。」
風見からのメールだった。具体的な戦略については長々と書いてあった。
単純だがうまくいきそうな気がする。俺も乗ることにした。
日曜日にまたオフ会か。本当にsakkyが来ればいいんだけどな。
まぁいい。風見の言うとおりにやってみるか。
sakkyを騙ると言う風見。じゃ今までのsakkyは風見じゃなかったのか。
と言うより、風見がsakkyだったのがいつからいつまでだったのかがよくわからない。
あいつは重要なコトは何も教えてくれない。寂しいじゃねぇか。
三木殺人計画の時のsakkyは風見だったかな。つーかややこし過ぎる。
余計なコトを考えるのはよそう。パニクる。
あいつの言った通り、「a」はおさまっていた。その後にsakkyのカキコ。
「なんで日曜来てくれなかったんですか」
その上に俺が書き込めばいいんだな。ROMマニア登場。
「ワリぃな。急に用事入っちまってよ。今週の日曜にまた相手してやるゼ。」
風見と一緒にな。


2月3日(木) 曇

「今度こそ、しっかり対面して下さいね。日曜日。受けてたちます。」
sakkyのカキコが加わった。これで日曜日オフ会が行われる事がROMってるヤツにもわかる。
「よしじゃぁ6日も午後1時に東横線改札前な。ベル持ってこいよ。」
俺もそう書き込んで置いた。
そう言えば俺がゲリラオフ会に行ったときもこんな感じだったな。
何喰わぬ顔して改札前に立ってたんだった。
ありゃ誰が来るのかハッキリしてなかったから失敗したのかもしれない。
今度はROMマニアと騙りsakkyが会う手はずになっている。
ホンモノsakkyにとっちゃ見逃せないシチュエーションだよな。
風見はsakkyが誰なのか見当がついてるから遠巻きに眺められてもわかっちまうワケだ。
風見にメールを送った。
「俺達の待ち合わせは何時にする?」
オフ会表向きの待ち合わせは1時だが、その前に二人で打ち合わせをする。
万全の状態でsakkyを罠にかける。


2月4日(金) 晴

「ベルはちゃんと持ってて下さいね。先週私は1時きっかりにベルもって改札前にいたんですから。」
sakkyの発言に少し笑った。確かにベル持ってたよな。風見。俺は後から見せただけだが。
カキコでもちゃんと返事書いておいた方がいいな。
「俺も、ちゃんとベル持って改札前に立ってるよ。」
ROMってるホンモノsakky、見てるか?俺はベル持って立ってる。騙りsakkyも。
見に来い。風見がお前を見つけだす。
昨日のメールの返事では「12時半ごろ待ち合わせましょう」と書いてあった。
さすがに改札前でなく、ちょっと離れた高島屋前の広場で待ち合わせとなった。
メールには他にもsakkyの事について書いてあった。
「ホンモノsakkyは絶対に現れますよ。誰なのかももうわかりました。
 川口さん。アナタも見たこと有る人ですよ。間違い有りません。」
sakkyが分かった?俺も見たこと有るって?誰だ・・・・。
急に荒木の顔が思い浮かんだ。
アイツはまだ生きてるのかもしれない。生きてて俺に復讐しようとしてるのかもしれない。
そうであって欲しい。風見。遠回しな言い方しないで教えてクレヨ。
俺も見たことある。この言葉に俺は股間を熱くした。
荒木じゃないとしたら。他には・・・。
クラス中の女の顔を思い浮かべる。この中の誰でも良くなってきた。
クラスだけでなく知ってる女全部思い浮かべた。スゲェ。こん中にsakkyが居る。
sakkyはROMマニアの事を不気味がってる。俺を、不気味がってる。
だから、正体を知るために、日曜日にやってくる。本当に来るのか・・・・風見を信用しよう。
正体が俺だと知ったら、どんな顔するか。驚きの次は、恐怖か、嫌悪か、あるいは憎しみか・・・・。
スゲェ。スゲェスゲェスゲェ。


2月5日(土) 晴

いよいよ明日オフ会となった。
風見とホンモノsakkyと会うのか。荒木とも会いたいな。
弟が風見の情報をいちいち報告してくるが、どれも無意味なモノばかりだった。
俺はもうホンモノと会ってるんだ。明日も会うんだ。
なんとなく風見は困ったらどんな顔するのか見たくなった。
「なぁ、風見に会いたいか?」
弟に話を持ちかけた。
「そりゃ会いたいさ。え?何?もしかして兄貴あいつの行方知ってるの?」
「まぁな。」と答えた。
「嘘!?マジ?何処にいんの?どうすりゃ会えるの?」
俺はベルを弟の顔に投げつけた。歯に当たってチリンと音が響いた。
喉の方まで入ったらしく。ウエっと口を押さえてベルを吐き出した。
「え?え?何コレ。ベルじゃん。これがどうかしたの?」
「明日それ持って、1時に東横線改札前で立ってろ。風見に会えるぞ。」
「ホント?え、でもさ。なんでベル持つ必要があんの?」
とりあえず腹を殴って「いいからソレ持って立ってりゃいいんだよ」と言っておいた。
弟は悶絶しながら「わかったよぅ。」と繰り返し、涙を流して喜んでいた。
ああ、これで風見と弟が鉢合わせになっちまう。バレると困った事になるんじゃないのか。
ヤバイぞ風見。ホンモノsakkyにかつての友人。修羅場だぞ。
明日はガンバレよ。


2月6日(日) 曇

弟には誰かに話しかけられたらロムマニアと名乗れ、と言っておいた。
俺より早くsakkyが現れたら弟に対処させるつもりだった。
俺等が横浜に着いたのは12時25分。丁度イイ時間。
弟を東横線改札前に残し、俺は高島屋の前の広場まで出向いた。

風見は既に待っていた。よくもまぁ人の多い中に居れるよなぁ。
目が合うと「待ってましたよ」と話しかけてきた。
心地よい風見の声が俺に染み入ってくる。さて、こいつはどんな顔するか。
「じゃ、今日の打ち合わせをしましょうか」
適当に話をしてるとあっという間に1時になった。
「そろそろ行った方がいいんじゃねぇか?」
いよいよホンモノsakkyの登場。弟との鉢合わせ。楽しくなってきた。
「・・・・その必要は無いですよ」
変なことを言う。なんでだ?もう時間だろ?急かそうとしたが風見はふぅとため息をつくだけだった。
「sakkyはアナタの見たことある人です。」
それはもう聞いたよ。だから早く知りたいんじゃねぇか。
「ROMは・・・存在を知られてはいけません。最後までROMってるべきでした。」
突拍子もない事を言い始めた。何が言いたいんだ。
「1度でも書き込んだら、ROMの意味は無くなります。存在を教えてしまいますからね。」
何故そんな話を今しなくちゃいけねぇんだ。風見は言葉を続ける。
「NSCってページ、知ってますか?」
いきなり話を振ってきた。NSC。かつて希望の世界が引っ越す原因となったページだ。
知ってる、と答えた。
「あれは規模が大きすぎました。メンバー全ての書き込みを制限する事はできません。」
だからそれがどうしたと言うんだ。
「その意味じゃ今回は成功です。少人数だから目が行き届く。見事に存在を知らせなかった。」
・・・・・。
「川口さんも、こっち側だったら良かったのに・・・・・。」
俺は怒鳴った。てめぇナメてんのかよ。わけわかんねぇ事ばっか言ってんじゃねぇ。
周りのカップルやらがチラチラこっちを見る。風見は気にせず言い放った。
「まだ分からないのですか」
何がだよ。ちゃんと説明しろよ。
「ROMってたのは、アナタだけでは無かったんですよ。」
それだけでは何もわからなかった。そうなのか。けどそれが今日のオフ会と何の関係があるんだ。
意味不明の問答はもうウンザリだった。今日の目的は何だ?sakkyに会う事だろ?
「もういい。俺はsakkyに会いに行く。」
また怒鳴った。1時過ぎ。東横線改札に居るはずだ。
歩き出そうとした瞬間、背後から、風見が囁いた。
「もう会ってるじゃないですか。」
俺は動きを止めた。その言葉が頭の中でグルグル回ってた。それは・・・そういう事だ?
振り返ると風見が笑っていた。
「アナタの見たことある人。つまり・・・・」
人差し指を汚ネェ顔に向けた。

「僕です。」

その意味を理解するのに数秒かかった。
俺が何も言えないでいると、風見はメモを渡してきた。
「とりあえすこのページをROMって下さい。それで、全てが分かると思います。」
それだけ言い残し、風見は去っていった。
残された俺は、メモを片手にただ突っ立ってるだけだった。
風見の困った顔、見れなかったな。そんな事を考えていた。

家に帰り、早速メモのページに行ってみたが、何もなかった。
ページが見つかりません。
検索中のページは、削除されたか、名前が変更されたか、または現在、利用できない可能性があります。
何だこれは。ここで何が分かるって言うんだ。
思わずパソコンを殴った。畜生。風見、これはどうゆう事だ。
「希望の世界」に書き込みは増えてない。何だよ。何なんだよ。
確かにsakkyの正体までは辿り着いた。だが、結局何もわかっちゃいない。
sakkyが風見って何だよ。荒木はどうなったんだよ。教えろ風見。教えろよ!
こんな中途半端なままで終わりなのか?バカな!楽しくなるのはこれからなんだろ!
怒りにまかせて壁を蹴る。誰かを殴りたかったが弟はまだ帰ってなかった。
イライラは溜まるばかりで発散すらできない。歯ぎしりの音が頭に響く。
これで終いなんて認めねぇ。俺は、認めねぇ。認めねぇぞ。

弟は、そのまま帰ってこなかった。





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