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序章

<追撃編>


第1章 「傷」
 第1週 再会
 第2週 依頼
 第3週 怨恨
 第4週 悪魔

第2章 「鎖」
 第5週 新参
 第6週 裏道
 第7週 到達
 第8週 連結

第3章 「塊」
 第9週 下僕
 第10週 道化
 第11週 対決
 第12週 集結

第4章 「駒」
 第13週 焼跡
 第14週 疾走
 第15週 帰巣
 第16週 追撃

<迎撃編>

プロローグ
 第0週 覚醒

第5章 「溝」
 第17週 来訪
 第18週 濁流
 第19週 虎視
 第20週 奈落

第6章 「膜」
 第21週 裏側
 第22週 下降
 第23週 沈没
 第24週 藻屑

第7章 「戦」
 第25週 本陣
 第26週 奔走
 第27週 失策
 第28週 瞬殺

第8章 「蟲」
 第29週 継承
 第30週 歯車
 第31週 撃破
 第32週 終焉







第二十六週 「奔走」

6月26日(月) 曇

兄貴の言ってたブツが届いた。送り主はご丁寧に「風見祐一」になってる。
偽名を使うのが分かるが・・・よりによって風見かよ。兄貴も洒落たマネをする。
遠藤からパクったモバイルセット。兄貴達もパソコン持って逃げるのは煩わしいんだろうな。
ミキさんのパソコンでヒロフミさんが「ダチュラ」&「SEXマシーン」。
兄貴のパソコンで俺が「ユウイチ」。遠藤のモバイルで兄貴が「D.G」。
これが俺達の役割分担だった。
横山の「ロロ・トマシ」。西原の「紅天女」。そして秋山の「王蟲」。
ヒロフミさん情報によるとこうだったな。
ここにROMの岩本先生達が加わることになる。
「シス卿」と「ミギワ」が岩本先生側の誰かだったら話は早いが
そんなウマイ具合に行くわけない。第一そんなことして何の意味があるんだ。
「絶望クロニクル」は遠藤のパソコンのブックマークで見つけた。
俺達は最初これを作ったのは遠藤、奴こそがシャーリーンかと思ったが
どう探しても肝心のファイルが見つからなかった。
掲示板でのクッキーから遠藤が「ダチュラ」の名で書き込んでたのはわかった。
でもそれだけだった。結局のところ遠藤は早紀さんの罠で捕まって以来
あのページのことは忘れてしまったらしい。
いや、アクセスはしてたかもしれないが早紀さんが居ないから特別は興味は無かっただろうな。
あれを見た限りじゃどう見ても早紀さんが関わってるようには見えない。
派生ページより本家の「希望の世界」をつけ回す方が遠藤にとって大事だったと考えていいだろう。
さて、俺に味方はいない。
サツの目・・・というより秋山の目をかいくぐり、いかにしてROMの岩本先生を引きずり出すか?
畜生。一人でどうすりゃいいんだよ。兄貴も酷な注文しやがる。
一日中考えたがロクなアイデアは出なかった。
俺にだって時間はない。サツがいつ来てもおかしくな状況だ。
焦るな。クソ。落ち着いて策を練るんだ。
考えろ。


6月27日(火) 曇

とにかく外の情報が入ってこない。
ヒロフミさんはもう解放されたのか?もし解放されてたとしてもすぐに連絡はよこさないだろう。
電話にしろメールにしろ通信記録は必ず残る。川口家との接触が確認されればますます面倒なコトに。
秋山の証言だけでドコまで調べられるのかわからない。その証言すらどんなコトを言ったのかわからない。
ウチにまだ何も来ない所を見ると、そんなに深くは探られていないのだろうか。
チクショウ。何もわからない。まわりの動きが見えない。
連絡手段を断たれるだけで、こんなに孤独を感じるなんて。
さりとて打開策はナシ。どうしようもねぇ。
大人しく兄貴の命令に従うしかないのか。それ以外やることが無いんだから。
だがそれもどうしていいのかわからない。アタマが痛くなってくる。
悩みすぎて、一瞬何もかも止めてしまおうかと思った。
これは兄貴達の問題だ。俺には関係ないじゃないか!
兄貴が勝手にやればいいだろう。俺を巻き込むな!!
フン。思ってみただけだ。
そんな簡単に切り捨てることができれば、俺は今頃もっと自由に生きている。
ヒロフミさんとの会話を思い出した。「俺達はなんで協力してるんだ?」
表向きは風見の敵討ちだ。モチロンそれも理由の一つではある。
だが、それよりもっと単純で明快な理由がある。
それと風見の敵討ちとの二つが、俺が兄貴に協力する理由だが・・・
恥ずかしくてヒロフミさんには言えなかった。
というかヒロフミさんにはわかりっこない。
「失敗したら殺す」
これだよ。この兄貴の言葉。
・・・・・・殺されたくない。
ああそうさ。俺は兄貴が怖いんだよ!
どんなに殴られても、殴り返すことができない。
殴られても「笑え」と言われりゃ笑うしかない。
兄貴は強すぎる。逆らおうモノなら半殺しだ。
俺は、絶対兄貴には勝てない。
逆らえない。怖いから、反抗できない。
今は遠くにいるのだとわかっていても、染みついた恐怖は拭うことができない。
だから命令通りやるしかない。腹をくくるしかないんだ。他に道は、ナイ。
考えねぇと。次に兄貴から連絡があるまでに舞台を整えておかないと。
早くしないと殺される。兄貴なら本気でやりかねない。
いや、確実に殺られる。
早く。何か戦略を。
いい方法はないか。
死にたくねぇ・・・


6月28日(水) 雨

パソコン画面を眺めたままずっと策を練ってた。
やっぱり書き込みをしないと始まらないか。
絶望クロニクルを見直してみた。
「希望の世界」に対するストーキングから言って、早紀さんの日記に書いてあったことを
シャーリーンは完全に外側から見ていたと考えていいな。
こいつが何者で、何で今は居ないのかはわからない。何の目的でこんなのを作ったのかも。
それに「湖畔専用BBS」と「ジャンク情報BBS」。この二つの存在意義はなんなんだろう。
ジャンク情報には今でも多くの人が集まってるが、それ以外はからっきし。
ジャンクにいる奴等は「絶望クロニクル」という元ページがあること自体知らないじゃないだろうか。
ホームページで一部のコンテンツだけが有名になることは多々あるらしい。
それは納得できる。ジャンク情報の方は確かに使えるトコだし、それ以外は別段面白くもない。
ネットストーキングったって肝心の「希望の世界」へのリンクが切れてんだから。
湖畔掲示板。ココでの奴等は何故かNSCに関係した名前ばかり名乗る。
西原がそれについて何か言ってたな。ヒロフミさん経由で聞いた。
「シャーリーンの決めたルール」なんだと。
俺達はそんなルール知らないもんだから好き勝手名乗った。
となると「シス卿」と「ミギワ」も後から来たってコトになるな。
本当になんてことなくジャンクの方から迷い込んできただけなのかもしれない。
最近俺達も書き込まなくなってるから湖畔はめっきり寂れてる。
秋山ももう何も書いてこない。
・・・ここを利用しよう。
寂れた分だけ発言は一際目立つ。
ジャンクの方はちょっと書いたくらいじゃすぐ流される。
なにしろいかがわしい情報たくさんあるからな。
些細な情報流した流したところで誰も反応してくれやしない。
・・・・いや、待てよ。こっちも利用できるかも。
兄貴が「D.G」の名でやったように、さりげなくこっちの情報を流して俺達の存在を匂わす。
見知らぬ人には溢れかえる情報の中のひとつでも、岩本先生には無視できない、そんな情報を。
よし。方針が固まってきたぞ。あとは何て書き込むかだ。
パソコンも二つあるし、自作自演だってできる。
サツにデータを見られても大丈夫な、完ペキな自作自演だ。
少しだけ、希望が見えてきた。


6月29日(木) 曇

俺だってメシを喰わなきゃ生きていけない。
買い物をしに行くのもドキドキモノだった。ヒロフミさんが捕まって以来初めての外出。
ついでに渡部家にも行きたかったが、サツにでも見られたらますます立場が危うくなる。
秋山のトコにも行きたかった。何がどうなってるのか締め上げて聞き出してやりてぇ。
だがそれもできない。火に油を注ぐようなモンだ。
奴にはまだ辛うじて俺の存在は知られてない。あの野郎知ったら即チクるだろうな。
今考えると、奴を蹴り倒した時「ユウイチ」と名乗らなくて正解だった。
おかげで俺だけギリギリの立場に居れてる。
チクショウ。何の事情もわかってねぇあんなクソデブに引っかき回されるとはな。
結局今日はサッサと食料買い込んで帰ってきた。
どこで誰に見られてるかなんてわかりゃしないんだから、できるだけ家にいた方がいい。
・・・・ほとんど引きこもり状態じゃねぇかよ。クソ。
ネットの方も書き込みを始めた。
宣戦布告がわりにジャンクの方にイカした情報を。

 1 名前: カイザー・ソゼ 投稿日: 2000/06/29(木) 23:56
    僕を殺したあの人は、今小田原にいます。

そして湖畔の方では「ユウイチ」で梅雨はウザイなどと適当な話題を振っておく。
作戦はまだ始まったばかり。上手く罠に引っ掛かってくれるといいが。
岩本先生、ちゃんと見といてくれよ。
罠はまだまだこれからだ。


6月30日(金) 晴

誰も反応してくれなかったから自分でレスつけておいた。

1:2 お知らせ ■ ▲ ▼

 1 名前: カイザー・ソゼ 投稿日: 2000/06/29(木) 23:56
    僕を殺したあの人は、今小田原にいます。

 2 名前: カイザー・ソゼ 投稿日: 2000/06/30(金) 23:41
    僕を殺したあの精神科医の先生は、今小田原にいます。

湖畔での発言の方が気を使う。
秋山も「ユウイチ」の名の由来が風見だってこと気付いてるらしいからな。
まだ適当な話題で誤魔化しておいた。皆昨日の話題に乗ってくれてる。
「シス卿」も「雨はホントウザイよな!レインマンばりに外に出たくなくなるゼ」と返してくれた。
こいつも映画好きらしい。ダスティン・ホフマンの名演技に俺も共感しておいた。
「ミギワ」は今日は晴れたからドレイブ日和などと普通のこと言ってやがった。つまらん。
直に役立ってもらうから今はこれでいいか。
・・・俺もホントに暇人だな。ネットの奴等のことまで日記につけるようになっちまった。
このまま親しくなっちまったらどうするよ。
これまで「実は知った奴」ってのばっかだったから、アカの他人が新鮮に見える。
わずかにだけど、他人と話すネットの楽しさがわかったような気がした。
最初の「希望の世界」もこんな感じだったんだろうな。
だがそれもハマり過ぎると・・・・俺達みたくなってしまうワケだ。
ネットの向こう側に居る人にだって家族や友人はいるだろう。
トラブルがあればそっちにだって迷惑がかかる。
ヒロフミさんや、俺のように。
巻き込まれる。
イヤでも。


7月1日(土) 晴

しらじらしく名無しまで騙って自作自演。

1:5 お知らせ ■ ▲ ▼

 1 名前: カイザー・ソゼ 投稿日: 2000/06/29(木) 23:56
    僕を殺したあの人は、今小田原にいます。

 2 名前: カイザー・ソゼ 投稿日: 2000/06/30(金) 23:41
    僕を殺したあの精神科医の先生は、今小田原にいます。

 3 名前: 名無し 投稿日: 2000/07/01(土) 14:07
    氏ね

 4 名前: カイザー・ソゼ 投稿日: 2000/07/01(土) 23:12
    僕を殺したあの精神科医の先生は、今小田原にいます。
    ご自分の車はどうされたんでしょうか。

 5 名前: 名無し 投稿日: 2000/07/02(日) 01:09
    誰のことだよ

早く反応しないと都合の悪い情報どんどんながしちまうぞ。
あまりやりすぎると秋山チェックに引っ掛かって通報されそうだな。実名はなるべく控えよう。
ネットの奴等は有益だったり面白かったりする情報にはすぐ飛びつくクセに
そうでないモノに対してはトコトン冷たい。カイザー・ソゼの意味不明な発言もまた冷たい反応。
仕方ないから自作自演で「みんなが注目してるぞ」と思わせる。
虚しいこと極まりないが。
湖畔の方でも惰性的な会話が続く。
あちらさんが完全ROMを決め込んでるなら根気勝負になりそうだ。
ジャンクの「カイザー・ソゼ」と湖畔の「ユウイチ」に繋がりがあることを悟ってもらわないと。
名前で既に気付いてるかもしれないが、それだけじゃ足りない。
俺達の存在を匂わせる。そうしていけば自然と奴もやってくる。
舞台を整えたあとは、いよいよ兄貴と岩本先生の対決か。
確実に命のやりとりになるだろう。
そう思うと、少し背筋がゾっとした。
兄貴が死んだら・・・・俺はどうなるんだ?
俺もまた殺されるのか。いや、確実に殺される。
兄貴が殺されてしまったら、俺は全てを明かすだろう。一連の事件の真相を。
今でもそれはできる。だが兄貴の命令で禁止されてる。その兄貴がいなくなれば・・・
岩本先生もそれはわかってるはずだ。となれば、犯人を知ってる俺は口封じに殺される。
かと言ってこの事件から手を引こうなんて思うと、兄貴の処刑が待っている。
どっちにしろ、死。

・・・・・・・・・・頼むよ兄貴。勝ってくれよ。
でないと俺が、生き残れない。ちゃんと舞台は整えるから。お願いだから勝ってくれ。
チクショウ。自力でなんとかならねぇのかよ!
なんで俺ばっかりこんな・・・


7月2日(日) 晴

ついに反応が来た。

 6 名前: 処刑人 投稿日: 2000/07/02(日) 17:45
    車は知人のを借りてるんでね。
    そっちの方に行く時は自分のは使わないようにしてる。
    カイザー・ソゼ。お前は一体何者だ?

いいねぇ。パッケージ通りのそのセリフ。
犯罪王と当て字をしてくれればもっと良かったのに。
早速こっちも答えを返しておく。

 7 名前: カイザー・ソゼ 投稿日: 2000/07/02(日) 21:58
    自分で殺しておいて名前も忘れてしまったのですか?

これで間違いなく「ユウイチ」の方に目を向けてくる。
IQ180の心理戦・・・にはほど遠いが、それなりに考えてるだろ?
サツも全然来ないし、どうやら運は俺に向いてきたようだ。
外との連絡を禁止されてるのは辛いが、自分の仕事は順調に進んでる。
電話くらいいいじゃねぇか、と思うこともある。でもそれで足がついた日にゃ兄貴に殺される。
大人しくネットに居着いておくか。
そうやって開き直ったせいか、どうも最近湖畔での会話が楽しみになりつつある。
これしか他人との会話手段がナイからな。
始めは「ミギワ」のどうでもいいような話はウザかったが、こうも妙な状況になると
その普通さがありがたく感じてくる。「シス卿」とも映画話ができるしな。
こいつら実は岩本先生側の人間じゃないかとふと気になる時がある。
だがよくよく考えてみると、そんなことをしたって何の意味もない。
罠を仕掛ける発言は無いし、油断させて何かを・・ってワリには何もしなさ過ぎる。
本当に会話だけだ。純粋にネットでの会話が楽んでるってのなら話は別だけどな。
そんな爽やかな話があるわけねぇ。
などと言いつつ俺は会話を楽しんでる。
・・・・ヤバいな。このままじゃホンモノのヒッキーになっちまう。
アタマを元に戻そう。湖畔は罠のために利用してるだけだ。
「処刑人」も登場して、舞台は着々と整ってきてる。
全てが終われば俺だって解放されるはず。それまでの辛抱だ。
俺は破壊神の下僕。命令通りに忠実に。
耐えろ。





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