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 序章

<腐食編>

第1章 「深淵の蟲」
 第1週 跫音
 第2週 浸食
 第3週 激化
 第4週 天誅

第2章 「孤城の華」
 第5週 遺産
 第6週 歪曲
 第7週 崩壊
 第8週 散花

第3章 「背徳の咎」

 第9週 浮遊
 第10週 煮沸
 第11週 逆転
 第12週 断罪

第4章 「絶望の時」
 第13週 白紙
 第14週 泥濘
 第15週 絶望
 第16週 引導

<虚像編>

第5章 「電脳の渦」
 第17週 輪廻
 第18週 接近
 第19週 衝撃
 第20週 凶行

第6章 「悠久の闇」
 第21週 波紋
 第22週 追跡
 第23週 煽動
 第24週 漆黒

第7章 「虚空の塔」
 第25週 降臨
 第26週 劫火
 第27週 混沌
 第28週 淘汰

第8章 「希望の光」
 第29週 決戦
 第30週 呪縛
 第31週 絶叫
 第32週 昇天














第20週 「凶行」

3月22日(月) 曇

ネットを繋げるのが怖い。繋げたらICQでメッセージ来る。奴から。
これ以上僕を悩ませないでくれ。ただでさえ僕は正常であることを保つのに必死なのに。
sakkyは僕の生き甲斐だ。なのにネットを繋げることが出来ないなんて・・・・・・・・・・・・・・・・。
奴が居る限り僕はsakkyになれない。ならば・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・消すか?
先生、頼むから死んでくれ。


3月23日(火) 晴れ

今日はネットを繋げました。ICQはオンになる前に素早く切っておきました。
アンダーグラウンドと称される様々なページをお気に入りに追加しておきました。全て掲示板です。
これには結構時間が掛かりました。本当にたくさんのページがありました。
「希望の世界」に置いてある掲示板からレンタル元のページへ行きました。「TCUP」という掲示板です。
今日はもう遅いのでこれくらいにしておきます。具体的なページのネーミングはこれから考えます。

・・・・・・僕は何やってんだ?


3月24日(水) 晴れ

新しく掲示板を作りました。題名は「殺人依頼掲示板」です。
まだ僕の発言しかありません。ハンドルネームは「依頼人」。杉崎先生の住所とか個人情報を公開してます。
「誰かこいつ殺してくれ。」と簡単なコメントも添えておきました。
ここからがまた忙しかったです。昨日お気に入りに追加した掲示板の全てにリンクを張りました。
「こんな掲示板見つけた。」と他人のフリして書き込みました。後は待つだけです。

・・・・・・・・・・・・待つだけ?何を?こんなので人を殺せるわけないだろ?
いや、いいんだこれで。僕だってそんな簡単に人を殺したくない。個人情報にはメールアドレスも含まれてる。
メール爆弾とかくらってネットに懲りてくれればいい。飽くまでネット上で死んでくれるだけでいいんだ。
・・・・・・でも、本当に殺されたら?そもそも僕の勝手な理由で殺人なんか依頼していいのか?
杉崎先生は死に値することをしたか?・・・・・・・・・・・・・・あああ、もういい。やってしまったんだから仕方ない。
僕の中の誰かが「やめて」と叫んでる。うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!
今更書き込み削除なんかしたくない!もう戻れないんだよ!誰だよお前!消えろ!ああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
「声」は聞こえなくなりました。


3月25日(木) 雨

杉崎先生から、電話が、ありました。でも僕は出ませんでした。
暗くなってきた頃、電話が鳴りました。僕はなんとなく親が対応してるのを聞いてました。
親の口から「杉崎先生」という単語が出た時、僕は心臓が止まりそうになりました。
「あなたによ」と受話器を向けられた途端、僕は叫んでました。自分でも何て叫んでたのかわかりません。
たぶん意味不明の奇声を発してんでしょう。そのまま部屋に駆け込みました。
親が、ノックしてます。「なんか急いでるみたいだけど」とか言ってます。僕は拒み続けました。叫んでました。
親が僕の名の呼んだとき、無性に物を壊したくなって部屋の鏡を割りました。
自分の姿が映るモノはすべて壊しました。何故か壊さなきゃいけない義務感を感じました。
声も枯れて、我に返ってみると、もうノックの音はしませんでした。電話をかけてる様子もありません。
とても気分が悪いです。


3月26日(金) 雨が止まない

親の悲しげな視線が痛いです。達観した表情を見ると、もう僕のことは諦めてる様に思えます。
僕も悲しい気分になってきました。まだ狂うわけにはいかない。そんなことを考えるようになりました。
その決心を早くも試されることになるとは思いませんでした。
例の依頼をしてから、僕は新聞の社会欄を隅々まで見るようにしてました。
その記事を待っているんだけど、そんなことにはなって欲しくないと願っていました。とても複雑な気分でした。
でも、とうとうその時が来ました。今日の新聞の隅っこに、ちいさな記事が載ってました。
「都内に通り魔」と題された簡単な記事でした。被害者は・・・・・・教員杉崎武志さん(25)、か・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・落ち着け落ち着け落ち着け。
大丈夫。気を確かに持て。これは僕が望んだ結果じゃないか。僕に疑いがかかるような事はないはず。
・・・・・・ああ!これで僕の周りで死んだ人間が3人に!今度こそ、駄目かもしれない!どうしようどうしよう。
待て、だから落ち着け、僕!もう戻れないんだから!これはじっくり考えるべき事なんだから!狂うな!
叫んだりしちゃいけない。これ以上親に迷惑かけるわけにはいけない。ゆっくりと、いつも通り振る舞うんだ。
・・・・・・・・あんなちっちゃな記事、誰も気づかないサ。それにあれが僕の依頼だってわかる奴なんかいない。
それにしても、本当に殺す奴がいるなんて。信じられない。ネットにはそんな馬鹿までいるのか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・居るのか!?あそこに!
僕はネットを繋げました。そしてすぐに「殺人依頼掲示板」に行きました。・・・・・・・・・・・居た・・・・お前か。

  死刑執行 投稿者:処刑人 投稿日:03月26日(金)
    杉崎武志。確かに処刑してやったぜ。
    もっと依頼クレヨ。俺はもっと殺りてーんだよ。kekeke!

背筋が凍りそうだ。こんなに怖いと思ったのは初めてかもしれない。こんな奴に!こんな奴に杉崎先生は!
ごめんなさい。今頃になって罪悪感が・・・・。先生、やっぱり死ぬべき人じゃないよ。殺すべき人じゃない!
僕は、何て事を。


3月27日(土) 狂ったように降る雨

正気でいるのが精一杯です。杉崎先生には本当に酷いことをしてしまいました。
でも今更悔やんでもしょうがない事です。それに、その事を考えるだけで狂いそうになる。
杉崎先生は僕のくだらない我が儘で命を失ってしまったんです。死んでも死にきれないと思います。
僕が、変な掲示板なんか作らなければ、ヘンな奴に殺される事なんてなかったのに・・・・・・・・・!
やめよう。これ以上考えるのは。頭が痛い。今はもう結果だけを見ることにしよう。
酷いことをしてまで守った「希望の世界」。いつも通り、この世界を堪能しよう・・・・・・・・・・・・・。
ネットに繋いで「希望の世界」へ。落ち着く。ここにいれば、現実を見ないで済みます。
・・・・・・なんかチャットする気分じゃないな。掲示板でも見よう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・見るな見るな見るな見るな見るな
その発言を見ちゃいけない!狂う!今度こそ、狂ってしまう!あああああああああでも目に焼き付いてる!
「密告者」、お前、何故!?なんで「希望の世界」の住人が「殺人依頼掲示板」を知ってるんだ!?
なんで、杉崎武志が「タケシ」さんだって知ってるんだ!?何が、どうなってるんだよっ!
頭から離れない。投稿者の欄に書かれた「密告者」という文字。「殺人依頼掲示板」へのリンク。
そして、その上にあるたった1行のコメント「↓こいつ、希望の世界に良く来るタケシ。殺されてやんの」
すぐに「殺人依頼掲示板」を削除しました。念のためにソースをコピーしておきました。よし、僕はまだ正常だ。
「密告者」の発言も削除しました。これで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、もう、遅い。
奴の発言の後、次々とレスが付けられてる。みんな、知ってしまった。もう、隠せない。終、わ、り、だ・・・・・・・。
・・・・・・・・・・待てっ!まだ終わったわけじゃない。「依頼人」がsakkyだって知られたわけでもない!
でも、でも、・・・・・このまま狂ってしまえればどんなに楽か。駄目だ!狂っちゃいけない!
僕は、この先をきっちり見届けなきゃいけないんだっ!だから、今はこらえろ!・・・・・・・・・分かってる。でも!
叫びたい。何も考えず叫んでしまいたい。我慢しなきゃいけないけど、駄目、できない。我慢できない!
僕は思いきり声を張り上げました。意味不明の悲鳴をあげました。でも、とっさに口を手で覆いました。
手からうめき声が漏れてます。涙が流れてきました。声が外に漏れるのを抑えた分、代わりに涙が流れてる。
ボロボロと大きな滴が床に落ちていきます。声が止まりません。涙も止まりません。パソコンの画面が歪んでる。
部屋中に僕の低いうめき声が響いてます。


3月28日(日) 曇り

「希望の世界」が混乱してます。「タケシ君、冗談でしょ?返事してよ!」との書き込みがあります。
いくら待っても無駄だよ。もう「タケシ」さんはいないんだから。もう、消えてしまったんだから。
無駄なのに、みんな書き込みます。「見てないで書き込めよ!」とか「お願いだから、何か言って!」とか。
返事は返って来ませんでした。


- 第5章 電脳の渦 -  完
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